鋼鉄の心:亡霊との戦い   作:アイゼンパワー

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本当に読んでいただきありがとうございます!!


閑話 共和国工廠の苦難その二

星暦2142年、共和国工廠。

主任砲を作ったのとはまた別の部門。

 

「ジャガーノート改修計画ぅ?」

 

とある技師が書面を睨みながらそう言った。

 

 

ジャガーノート。

共和国が作り上げた最高の無人機。自分で考え、決断を下し、戦う。分厚い装甲と大口径の砲、凄まじい機動力でレギオンを翻弄し、共和国を守るために戦う誇りある戦闘機械である。

 

 

……というのが建前で、実際は皆さんご存知の通り、無人と称しておきながら有色種を“プロセッサー”として搭載し、“厚い”と言われている装甲も10mm程度のアルミ板である。アルミホイルと比べて…ということであれば、確かに分厚いだろう。

大口径と謳う砲も57mmであり、旧時代に使われていた戦車砲の方がまだ遥かに大口径だ。

機動力もレギオンを翻弄するなどと喧伝されているが、実際はレギオンに翻弄されてばかりである。

 

そこで!現状に失望した元帥が工廠に提出したのが彼が今その手に握っている“ジャガーノート改修及び新型機開発に関する計画書“だ。

 

「馬鹿馬鹿しい、あの豚どもにそんな価値があるわけないだろう。文字通り豚に真珠を送るようなものだ。全く……元帥閣下もなにを考えているのやら……ま、適当に済ませてしまおう」

 

「ですが、その……主任、こちらを」

 

そう言って彼の部下がページをめくり、”要求“と書かれた欄の1番下に小さく、こう書かれていた。

 

『試験は設計者とその家族を新型機もしくは改修機に詰め込んで行うので、そのつもりで開発に励むように』

 

「………は?」

 

主任と呼ばれた彼は絶句していた。

まさかこんな無茶苦茶を実行するわけがない、まさかこの私を、リベルテ・エト・エガリテ工業大学を首席で卒業した私をそのように扱うはずがない!彼はそう思う。その一方で脳裏にはある思いがよぎる。

 

 

あの元帥なら、やりかねない。

 

 

星暦2142年、それはまだ粛清の嵐が吹き荒れてからたったの一年後である。元帥が起こした恐怖の突風、いつ、なにが悪かったのかも知らされずに前線送りになった者やその場で処刑された者を彼はその目で数多く見てきた。その上で彼は思う。

 

 

元帥なら、やる。

 

「…………ジャガーノートの設計図とデータ持ってこい、あとは設計士を全員呼んでこい。集合場所は二階の会議室。命が惜しければすぐに呼んでこい!!」

 

 

数分後

 

「それでは、この計画書に載っている要求についてだが……」

「……実現できないわけではない」

「技術的には可能です、しかし実際にやるとなると……」

 

工廠のフェルドレス設計・製造部門に勤めるすべての設計士が頭を突き合わせてウンウンと唸っていた。

元帥による要求は以下のとおりである。

 

・ジャガーノート改修計画

 ・レギオンを正面から貫徹できる火力

 ・一般的なフェルドレスより高い機動性

 ・装甲材の変更及び装甲厚の増加

 ・居住性の向上

 ・構造体の強度向上

 ・値段は据え置きもしくは変動を多少程度に抑えるのが好ましい

 

・新型機開発計画

 ・重砲を搭載すること(*1)

 ・戦車型の砲撃に複数回耐えられる装甲

 ・機動性は改修後のジャガーノートに追従できる程度でよし

 ・居住性は改修後のジャガーノートと同程度でよし

 ・構造体の強度は高ければ高いほど良い

 ・値段は問わない

 

そしてこの文書とともに戦車型の砲塔と正面装甲が数枚送り付けられた。

 

「元帥閣下も中々無茶を言いおる……」

 

老齢の設計士が腕をまくりながらそう零す。

実際にジャガーノートをこの要求通りに改修するとしたら、値段は二倍どころでは済まなくなるだろう。しかしそればかりを気にして他の要求を蔑ろにしてはならない。

 

新型開発についての要求も中々に無茶である。戦車型の砲撃を何回も耐えるなんて並の装甲材では達成できない。そして達成できたとしても足回りがその重さに耐えられるか……

 

「しかし、これを成し遂げてこそ職人というものだ。諸君、頑張ろうじゃないか」

そして設計士たちは立ち上がり、自分の意見をぶつけ始めた。

 

「はい!装甲部門としては新素材である超合金を用いた複合装甲を提案します」「いや、レギオンの装甲を再利用するのはどうだろう?あれなら腐るほどあるぞ!」「それ採用!」「搭載する砲は……任せておけ、腕によりをかけて作り上げてやる」「足回り……足回り…うーん…」「接地圧が気になるなら設置面を広げればいいじゃない」「いい案だ!」「あと気になるところは………」「居住性はまぁ、一旦置いておこう」「構造強度の計算してくれる人募集」「やだあれめんどくさいやりたくない」「そう言わずにさぁ、一緒にやろうよ!」「ヤダヤダヤダヤダヤダヤダァァァァ!!」

 

そうして夜はふけ、朝日が昇り、また沈み、また昇る。

彼らは久々に討論する楽しさ、数字をいじくりまわし、線を引く楽しさを思い出した。自分たちが設計士になったのはあんな欠陥機を高性能無人機として喧伝するためではない、このような真の高性能機を作るためだ。

爛々と輝く目からはそんな思いが見て取れる。彼らはどこまで行こうと、たとえレギオンに取り込まれようと、この楽しさを忘れることは2度とないだろう。

そして彼らはこの楽しさを思い出させてくれた元帥に心から感謝した。彼のために、最高の機体を作ろう。胸を張って、笑顔で、世界中に“私たちが設計した”と自信満々に言い放てるような機体を!

 

 

そして最高の機体はついに完成した。

 

太陽光を反射し、レギオンと同じ銀色に輝くジャガーノート、その名をジャガーノート改。そのまんまである。赤い一つのカメラアイ、二丁の重機関銃、一対の高周波ブレード。本体を見る限り、一般的なジャガーノートとの違いは見出せないが、武装がその背に乗った途端に誰もが目を見開くだろう。

 

90mmライフル砲。試験では戦車型の正面装甲をかなり遠くから一撃で貫通した傑作ライフル砲。あの貧弱な57mm砲に変わってジャガーノート改ではこちらが標準武装となる。

装甲もただ銀色にピカピカ光るようになっただけじゃない。これはレギオンの装甲材を徹底的に解析し、それを複製した新型素材であり、これまでのあらゆる装甲を上回る強度を持つ。

足回りは補強され、接地圧を小さくするために接地面を増やした足は非常に頼り甲斐のあるものになっていた。機動性もエンジンをより優れたものに交換したおかげで向上し、ただこれよりも素早く動くことができるだけでなく、ジャンプまでできるようになっていた。

居住性はというと………少なくとも椅子は板切れのみだったものからクッションがついた。

 

そして新型機、名付けて“ドレッドノート”。

同じく銀色に光る装甲板、避弾経始を意識した装甲形状。しかし測距のために増設されたカメラアイ、近接装備は高周波ブレードではなくドーザーブレードに変更されたなど複数の変更点が存在する。そしてジャガーノート改と同じく何よりも目を引くのは主砲、210mm重砲である。

試験においてその砲撃は一撃で戦車型の装甲にヒビを入れ、叩き割った。これには同席していた元帥もびっくりし、「素晴らしい!」と叫んだという。

装甲はジャガーノート改と同じく銀色にピカピカ光っている。しかしこちらの方は装甲厚がジャガーノートの数倍あり、戦車型の砲撃に幾度も耐え、なお塗装が剥がれるだけで済んでいた。

脚はフェルドレスにしては異常に太く、がっしりとしており、これは近接猟兵型の対戦車ミサイルの直撃に数十回も耐えた。

しかし前述の堅牢さと大火力と引き換えに機動力は失われ、なんとかジャガーノートに追従するのが精一杯になってしまった。

 

「素晴らしい!やればできるじゃないか」

 

そう設計士に声をかけたのは元帥閣下である。試験の結果を見て大層満足しているようだ。顔に笑みを浮かべ、両機から降りてきた設計者を迎える。

 

「はっ、もったいない言葉でございます」

「いや、本当に素晴らしい。このような機体がもっと早くあれば、レギオン相手に主導権を取れたのかもしれないのにな」

 

そう言ったあと、空を仰ぎ、また設計士に向き直った。

 

「直ちに量産を開始するんだ。従来型のジャガーノートは一刻も早く前線から姿を消さねばならない」

「はっ、了解しました、元帥閣下」

*1
ここでいう重砲とは口径が150mm以上のものとする

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