結月ゆかりの誕生日が刻一刻と近づく中、サプライズパーティーを計画するVOICEROIDたち(学生設定)。しかし誰もが忘れていた。その日は紲星あかりも誕生日だということに……!

※本人含めた皆があかりちゃんの誕生日に気づかない上、本編中最後まで触れられることがありません。これは決して作者が直前まで忘れていたとかそういうことではありません。本当です。信じてください!

ごめんなさい、忘れてました!

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ここでしか活用されない簡単なボイロキャラ設定!

結月ゆかり
ですます口調で話す優しい人

弦巻マキ
言動不良中身乙女突っ込み担当

東北ずん子
なんか三下っぽい喋り方するめんどくさがりや

琴葉茜
コミュ障な関西人。友達との距離の測り方練習中

琴葉葵
賢そうな喋り方をするアホ

紲星あかり
食べるの大好き。作者含め皆から誕生日を忘れられているかわいそうな子。でも本人も忘れているからセーフ?*1

*1
アウト




第1話

「……よし、全員来たな?」

 

ある日の放課後、ボクたちはとある目的のためいつもの空き教室に集まった。

そのメンバーはなんちゃって不良の純情少女弦巻マキ君、ものぐさずんだ少女東北ずん子(じゅん子)君、食欲大魔神紲星あかり君、コミュ障激カワ超カワ美少女琴葉茜姉さん、そしてIQ二千億万の超天才少女*1のボクこと琴葉葵だ。

まあこの空き教室に集まるいつメンだね。

……ああいや、いつメンというなら一人足りないか。

その一人は優しさの擬人化結月ゆかり君。彼女が今来ていないのは実は偶然ではない。

なぜなら―――――

 

「よし、じゃあゆかりの誕生日のサプライズパーティーの計画を進めようぜ!」

 

そう言ってマキ君が取り出したのは一枚の紙。その紙には、「誕生日の結月ゆかりのためのサプライズパーティー」というタイトルが上部に記してあり、そしていたるところに可愛らしいイラストとともにそのパーティーの前準備で必要なことが簡潔に書かれていた。さすがはマキ君。その言動からは想像できない乙女スキルは健在だね。

 

「……いつ見ても思うけど計画書にここまでこだわる必要無くないっすかね?」

 

「何言ってんだ。何事にも始めが肝心なんだよ」

 

「はー、すごいこだわりっすねー。そのこだわりが最後まで続くといいっすねー」

 

「あ? なんだと?」

 

おっと。このままだとマキ君とずん子君のいつもの小競り合いが始まるね。

 

「止めたまえ君たち。今はそんなことをしている場合ではないだろう」

 

「っと、そうだ。今はこいつのくだらない言葉に付き合っている暇は無いんだったな」

 

「そうそう。私の言葉なんてなーんの価値もないっすから 馬・鹿・の 一つ覚えみたいにいちいち突っかかっているときりがないっすよー」

 

「…………(ギリッ)」

 

あ、あの短気なマキ君が耐えてる。これは明日は大雪だ。

いや、それよりもさっさと話を本題に戻さないといけないね。

 

「……もー、くだらない事してないで早く始めようよー」

 

「……今日はプレゼントについて、やね」

 

と思ったらあかり君と姉さんがばっさりと決めてくれた。ボクも便乗するか。

 

「それで、ゆかり君の誕生日プレゼント、何にするか決めたかい?」

 

「当然っす」

 

「まあ、一応だけどな」

 

「……ばっちり」

 

「うん!」

 

ボクが問いかけると、三者三様……いや、四者四様の反応が返ってきた。

でもゆかり君の誕生日プレゼントに関しては前回の会議の宿題としてそれぞれ決めてくる話だったし、さすがに決めてきてない人はいないね。

 

「さて、じゃあ一人ずつ発表していこうか」

 

「だな。ならまずは一番早かったずん子からで」

 

トップバッターはずん子君か。正直に言って体育祭のお弁当にずんだ餅しか持ってこなかった彼女だから少し不安だけど、でも「ずんだ餅」「はい次」さすがにない……と思ったんだけれどもね。

でもずん子君が作るずんだ餅は驚くほどおいしいし、それにずんだ餅関係では絶対に手を抜かないからそれもありではあるね。

 

「お前、それは自分の好きなものだろ」

 

「えー、自分が好きなものを渡すのも立派なプレゼントっすよー。そういうマキさんはどうなんすかー」

 

「あーいや、俺はだな……」

 

マキ君の歯切れが悪くなる。おや、これは……

 

「あれれー、もしかしてマキさんともあろうものが決めてないんすかー?」

 

「うっせぇ、決めてるよ! ただ……」

 

ずん子君の煽りに怒気を強めて反論するも、続く言葉は覇気がない。

いや、しかし決めてるのか、そうか……。

 

「……ただ、どうしたんや?」

 

「いや、あいつの好きな物思いつかなくてな。だから無難なものしか思いつかなかったんだよ」

 

なんだ、それだけか。

 

「別にいいじゃないか。無難なものでもそこに想いがこもればそれは立派なプレゼントだ。

それで、何にしたんだい?」

 

「まだちゃんとは決まってはないが、コスメにしようと思っている」

 

……コスメ? 何だそれは?

 

「本当に無難っすね」

 

「だから言っただろ!」

 

「……ウチは良いと思うで」

 

「コスメって何?」

 

「ありがとう茜。だが……ちょっと待て今疑問に思ったの誰だ? 葵か?」

 

なぜそこでボクの名前が真っ先にあがるんだい。

ボ、ボクにだってそれぐらいわかるさ! きっと何かの略だろう? ということは……コスモ眼鏡か! とても神秘的な名前だね!

 

「あかりだよ。コスメってなにー?」

 

「化粧品のことだが……いやマジで知らなかったのかよ!」

 

「へー、そうなんだ」

 

あー、そうそう。化粧品化粧品。いやー、咄嗟に出てこなかったなー。もう年かな?*2

おや袖を引っ張られる感覚が。

 

「……葵も分かっとったよな?」

 

そう問いかけ、にっこりと笑う姉さんがそこにいた。

や、やめてくれ姉さん。ボクをそんな目で見ないでくれ! いや分かっていたんだがね!

 

「つ、次は姉さんの番だよ! あの魅力的なプレゼントを皆に見せつけたまえ!」

 

「……えっ!?」

 

突然の使命に姉さんが驚きの声をあげる。

 

「おっ、そんないいプレゼントを用意したのか」

 

「しかももう準備してあるとは、気合入ってるっすねー」

 

「見せて見せてー!」

 

そしてボクの言葉に三人が反応する。これでボクへの追及はなくなったね、よし!

……本当にすまない、姉さん。

 

「……えっと、えっと……!」

 

突然の注目に姉さんが慌てはじめる。顔を真っ赤にし、手をワタワタとさせ、足が小鹿のように震えている。いや、本当にごめん!

そして突然スマホを取り出し、いじり始める。何回かスライドさせるような仕草をとり、そして目当ての画面が出てきたのか、皆がみえるように画面を見せつけきた。

 

「……トロフィー?」

 

その画面には、何か大きい大会で貰うような金色のトロフィーが飾られていた。そしてその土台には『12/22 結月ゆかりの誕生に全ての感謝をささげる』といった内容が記されていた。

 

「……この、トロフィーを、献上する、予定やで」

 

「「「トロフィーを!?」」」

 

姉さんの言葉に、三人が驚きの声をあげる。ふふっ、姉さんは本当に凄いよ。

 

「いやいや待て待て! トロフィー!? トロフィープレゼントすんの!?」

 

「わ、わー、すごーい……」

 

「て、てかすげー金かかってそうっすね。いくらかかったんすか?」

 

ずん子君の疑問に、姉さんが得意げに指を2本立てる。

 

「……2万円?」

 

「……20万円ぐらい」

 

「にじゅうまんっ!?」

 

高校生にしてはあまりの莫大な費用にマキ君が驚きの声をあげる。

ふっ、こんな立派なプレゼントを用意できるのは姉さんぐらいだよ。

 

「いや重い重い! 20万のプレゼントは重すぎんだろ!」

 

「……そう? 少ないと思うんやけど?」

 

「多いわ! てかそんだけの金どっから出したんだ!」

 

「……今までのお小遣いとお年玉全部や」

 

「……何してんすか? いやマジで何してんすか!?」

 

「……?」

 

「え? 今の質問疑問に思うところあったっすか? 私がおかしいんすか?」

 

んー? 何か皆の驚きが予想と少し違うような……?

 

「……大丈夫」

 

「どこが? 何が?」

 

「……1/4は葵が出してくれた」

 

「それでも15万だけど!?」

 

「てか止めろよお前!」

 

「姉さんが真剣に考えたプレゼントを却下できるわけないだろう、馬鹿が!」

 

「馬鹿はお前だ!」

 

ぐぬぬ、これだから姉さんの可愛さを理解できない人は……!

 

「とにかく、姉さんのプレゼントはいいプレゼントなんだ! そうだろう姉さん、そうだろう!」

 

姉さんから同意を得ようと振り返る。

 

「……ウチ、また間違えたんか?」

 

……そこには顔を俯かせ、今にも泣きだしそうな姉さんがいた。

 

「……ウチ、いつもそうや。ちょっと仲がよくなったらすぐ馴れ馴れしくして……、それで皆から引かれるんや」

 

姉さんがポツポツと騙り出す。

 

「……そんなウチでも仲良くしてくれたゆかりさんのためにウチなりにプレゼントしようと思ったんやけど、これも迷惑なんやな」

 

「…………」

 

姉さんの言葉に、反論する人は誰もいなかった。

 

「……ごめんな。ウチ、プレゼント考え直すわ。もうお金はないけど、それでもゆかりさんにとって最高のプレゼントを―――」

 

 

「―――私は、そのプレゼントでも良いですよ」

 

突如、声が響いた。

振りかえると、ゆかり君が教室に入ってくるところだった。

 

「……ゆかりさん」

 

「いいじゃないですかトロフィー。私、トロフィーなんて貰ったことがないからとても嬉しいですよ」

 

ゆかり君が姉さんに歩み寄る。

 

「……でも、20万のトロフィーやで。重いやろ?」

 

「そんなにお金をかけて作ってくれるなんて、嬉しいですよ」

 

それに、と付け加える。

 

「茜ちゃんが私のために考えてくれた。それだけで最高のプレゼントですよ」

 

―――もちろん、皆さんのプレゼントもですよ。

そう付け加えて微笑むゆかり君。その姿はまるで女神のようだった。

 

「……ゆかりさぁーんっ!」

 

両目に涙を浮かべた姉さんがゆかり君に抱き着く。

 

「……ありがとう、本当にありがとうな!」

 

「お礼を言うのはこちらの方ですよ。こんな素敵な誕生日会を考えてくれるなんて」

 

「……次は、次こそは皆が納得するプレゼントを用意するからなぁ……」

 

「ふふっ、楽しみに待ってますよ」

 

しばらくの間嬉しそうな泣き声が、空き教室に響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「本当にごめんね、姉さん。ボクが止めるべきだった」

 

「……ええんやで。その代わり、次のプレゼントは一緒に考えような」

 

「もちろんだとも!」

 

ボクに任せたまえと葵ちゃんが胸を張る。あの様子なら大丈夫そうですね。

 

「なあゆかり?」

 

仲良し姉妹のやり取りを微笑ましく見守っていると、マキちゃんから声をかけられた。

 

「何ですか?」

 

「……誕生日会のこと、いつ知ったんだ」

 

あー、そういえばサプライズって言ってましたね。

 

「今日ですね」

 

「マジか」

 

「最近皆が余所余所しかったので、悪いとは思ったんですが帰るふりをしたあとこっそりと皆を尾行したんですよ」

 

「あー……」

 

心当たりがあるのか、納得した様子を見せるマキちゃん。

本当は今日の朝、葵ちゃんから『今度の誕生日、プレゼント貰うとしたら何が良いかい?』*3と聞かれたからっていうのは黙っておきましょう。尾行したのは本当ですし。

 

「それよりもその計画、私も混ざっていいですか?」

 

「え?」

 

「ほら、なんたって私の誕生日ですからね。私が混ざれば完璧な誕生日会に一歩近づきますよ」

 

「いや、さすがにそれはなー」

 

流石に祝う本人を混ぜるのは抵抗があるのか、マキちゃんの返事は鈍そう。

……しょうがないですね……。

 

「…それに、ですね」

 

「ん?」

 

「……仲間外れは寂しいですよ」

 

多分、この言葉を言っている私の顔は少し赤くなっているはずです。それぐらい恥ずかしいんですから。

 

「……」

 

私のその言葉を聞いたマキちゃんは少し呆けたあと、ニヤリと笑った。

 

「そうだな、主役に寂しい思いをさせるのは駄目だよなあ、なあ皆!」

 

え? 皆?

 

「たしかにそうっすね。主役が一番っすからね」

 

「……寂しいのって嫌だもんね」

 

「主役が混じるのもまた乙なものだね」

 

「一緒にやろーよゆかり先輩!」

 

あれ? もしかして皆に聞かれてました? うわあ恥ずかしい……!

 

「じゃあ新メンバーも入ったことだし、最高の誕生日会にするぞー!」

 

『おーっ!!』

 

「おっ、おーっ!」

 

でも、まあ、今年は最高の誕生日を迎えそうですね……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ところで、あかりちゃんは何をプレゼントする予定だったんですか?」

 

「ゆかり先輩、この前動物なら兎が好きだって話してたよね?」

 

「そうですね」

 

「だから兎肉を使った料理を「やめてください」……え?」

 

「やめてください」

 

「……はい」

*1
本当の天才は単位で億に万を付けない

*2
10代

*3
本人的にはばれないように聞いているつもりです




※あかりちゃんの誕生日は当日皆思い出して皆でちゃんと祝いました。
本当にごめんね!


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