波動実験艦武蔵 ―魔法使いの惑星―   作:朱鳥洵

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Chapter5 星を守るもの

宇宙に広がる10個の光の円が爆炎を弾き、その中を突き抜けて現れた艦が青い砲撃を敵に浴びせていく。

 武蔵が放つ衝撃砲の火線が的確に敵艦を墜とすが、数が減っているようには見えない。

「艦前方、10時から1時の方角よりミサイル、数およそ50!」

「左舷から波動防護弾発射、艦首右弦へ回頭し回避行動!」

「防壁に隠れつつ艦載機を出す。ハッチ開放!」

 武蔵は四方にミサイルを放つとほぼ同時に急制動をかけ、艦底部のハッチから無数の機体を放つ。

 前方では防壁に阻まれた敵のミサイルの爆炎が瞬き、それが煙に包まれた頃に武蔵が再び加速をかける。

 黒煙を突き抜け反撃を始めた武蔵の背後から駆け出した艦載機たちは、艦への攻撃に躍起になる敵のエンジンを撃ち抜いていった。

 武蔵を狙った敵の砲撃は防壁に弾かれたが、わずかに左舷艦尾の防壁が強く揺らぐ。

「なに、この揺らぎ……波動コイル……?」

 柑奈が原因を確かめようとした直後、レーダーが新たな反応を捉えた。

「敵艦隊後方から高エネルギー反応! 発砲と仮定した時の予測目標……あれっ、武蔵じゃない……?」

 その射角から予想された到達地点は、武蔵から大きく外れていた。

「美佳、どこに当たる?」

「……目標地点は……地上の城です!」

 刹那、レーダーがアラートを響かせる。

「敵艦隊、城に向けて発砲!」

「くっ……泰平! 柑奈!」

「また無理言いやがって! 最大戦速!」

 それでも泰平は舵を一杯まで倒し、柑奈が左舷に集中展開した防壁ごと艦体をビームの先に滑り込ませた。

 柑奈が見るモニターでは、左舷の波動コイルが一斉に過負荷のアラートを発していた。

 防壁がビームを弾く光が艦橋を過ぎた頃、モニターに大きくアラートの文字が現れる。

「義弥さん、これ以上は――!」

 言葉の最中、武蔵を一際大きな振動が襲う。

 モニターのダメージ表示には、左舷第一格納庫とその周辺一体に見たことのないような反応が出ていた。

「なにこれ……左舷艦尾に深刻なダメージ! 周辺隔壁全閉鎖、左舷魚雷発射管への電力供給ケーブル断絶、第一格納庫は壊滅……!」

「波動エンジンの出力が急激に低下、それに引っ張られて補助エンジンの出力も下がってるぞ」

「アスラの重力に捕まりました! 大気圏再突入まで、あと20秒!」

 爆発の衝撃で滑り落ちた右舷艦尾から大気圏に入り始めた武蔵は発熱を始め、さらに重力に引かれて加速を始めていた。

「大気圏突入姿勢へ移行し、少し艦体を右に倒せ。機関長は補助エンジンだけでも立て直せ、技師長は損害の詳細を調査!」

「了解!」

 高熱にさらされたまま、武蔵はなんとか艦体の向きを変えて装甲の厚い艦底を惑星に向けた。

「地表まで後どれくらいだ⁉︎」

「地表衝突まで、このままだと残り1分です!」

「くそ……墜としてたまるか!」

 舵を操作する泰平から理沙へ視線を向け、有賀は指示を飛ばす。

「手段は問わない、攻撃を緩めずに敵の数を減らせ」

「了解、稼動可能な武装で減らします」

 上向きに指向した1番2番主砲と、両舷のミサイル発射管から攻撃を続けながら、武蔵はいつしか惑星の中に落ちていた。

「安定翼展開! 落下時間を稼ぐうちに、エンジンを!」

 両舷に大きく翼が現れたことで僅かに落下は遅くなったが、代わりに酸素を得たことで艦尾の破口から漏れたエネルギーが再度の爆発を起こした。

 

 

「サーリャ、早く中に」

「でも……」

 リーリャに手を引かれ、城の地下に逃げようとしていた少女は、天空から落下してくる影を見つめていた。

 見えた2度目の爆発で艦は大きく傾き、見るからに不安定な姿になったそれを見て、サーリャは目を瞑る。

 ――あんなに守ってくれているのに。

 ――何かしたい。何かしなくちゃ。

 ――だってここは。

 

「――ここは、わたしの星なんだから!」

 

 握られた姉の手を振り払い、サーリャは走り始めた。

「サーリャ!」

「お姉様、わたし行かなくちゃ!」

「待ちなさい!」

「今だけは言うこと聞けない!」

 城から離れ、武蔵がいた渓谷までやってきた彼女は、まだ辛うじて浮いている巨艦を見る。

 胸の前で祈るように手を組んだ彼女は、また目を閉じる。

「お願い。この星のために戦っている、大切な人のために……わたしはどうなってもいいから、力を貸して!」

 目を開けた時、彼女の瞳は青色に変わっていた。

 渓谷だけではなく彼女の周りから徐々に岩石が浮き上がる。

「わたしも、助けたい!」

 岩石は武蔵の艦底に優しく触れ、武蔵を支える岩盤を形成すると、ゆっくりと艦を押し上げていく。

 その脇では楔のように先の尖った大きな岩石が速度を上げて武蔵を追い抜いていく。

「サーリャ、何して……」

「わたしたちのために戦ってるんだよ。わたしも――っ」

 肩の痛みで言葉に詰まる。

 一瞥すると、包帯の下から、赤い血が滲み出ていた。

 ――このままだと届かないかも……。

「お姉様! 手を貸して、一緒に!」

「何を……」

「早く!」

「あーもう……!」

 珍しく強い口調の妹に負け、浮き上がる岩石の合間を縫って妹と並ぶ。

「ありがとう、お姉様」

「何をすればいいの?」

「一緒に、ミカを助けるの」

 手を繋ぎ、リーリャも力を発現して既に浮いている岩に力を伝える。

 次第に緑色に輝き始めた岩は、徐々に、しかし確かに加速を始めていく。

「宇宙に……」

「「飛んでけえええぇぇぇぇぇ!」」

 

 

「本艦に岩盤接触……押し上げて加速しています!」

「加速⁉︎」

 美佳の言葉に驚いた声を出した有賀だが、眼前で緑の光跡を残して楔状の岩塊が飛んでいく光景を見ると認めざるを得ない。

『甲板科より艦橋、なんか艦体の外装を修理した箇所から光が艦全体に広がってる気がするんですが……』

「波動エンジン、補助エンジン共に安定して出力上昇……これは……?」

「残っている波動コイルも安定し始めましたし、被害箇所のアラートも……これは……」

 機関長と柑奈が言葉に詰まる。

「……まさか……サーリャちゃんの……」

 美佳の呟きに、柑奈は水月の言葉を思い出した。

 ――「人を媒体に、星のエレメントに影響を与えてるんだよ」

「そっか……水月の仮定が正しいなら、そういう事になるかも」

「えっ……?」

「うん、そうだよ。美佳ちゃんの言う通りだと思う」

 キョトンとして背中を見つめる美佳の事は意に介せず、柑奈はモニターを操作していくつかのグラフを表示させた。

「やっぱり、これはリーリャさんやサーリャさんのものです。反応がコスモリバースと似ていても、リーリャさんとサーリャさんが能力を発現した時にはそれぞれ違う特徴があった。今回出ている反応は、その2人の特徴をどちらも持つ。今武蔵を押し上げている岩盤も、宇宙に昇っていく岩も、地上のリーリャさん、サーリャさんからの支援です」

 柑奈が振り向いて説明を終えると、近藤は有賀と目を合わせて頷いた。

「無駄にしてはいけない。本艦は間もなく宇宙に戻る。……望まれぬお客にはご退場願おう」

 武蔵が宇宙に到達すると同時に、武蔵を押し上げていた岩盤は砕けていく。

 両舷のミサイル管から放ったマグネトロンプローブによって、武蔵はその岩盤をアステロイドリングとして周囲を飛ぶ岩塊と歩調を合わせた。

「すごい……地上からここまで、2人の力が届くなんて……」

 艦橋から見える岩塊は、さながら友軍艦のように映る。

 孤独に戦っていたはずの武蔵の周りには、今やアスラの意思とも言わんばかりに無数の岩塊が浮遊していた。

「周囲の岩塊、一部が再加速して敵艦隊に向かっていきます!」

「続くぞ、砲撃と同時に最大戦速! 反撃開始!」

 艦長の号令で左右に指向した艦首側の砲塔から火を噴いた武蔵は、直後に放った魚雷とミサイル、先をゆく岩塊に続いて速度を上げた。

 岩塊の強度は高く、敵艦の装甲を貫いて宇宙に爆発を起こす。

 岩塊で致命傷を与えられなかった艦には武蔵と航空隊からの攻撃が降り注ぎ、応戦する敵の攻撃はアステロイドリングと波動防壁に弾かれた。

 やがて前進し続けた武蔵は敵艦隊の中をすり抜け背後をとった時、レーダーに新たな反応があった。

「前方に巨大な反応……形状から要塞と思われます」

「さっき受けた砲撃はコイツからか……」

「多分。全長900m以上……サイズは要塞にしては小さいけど、さっきの砲撃……」

「あれが地面に命中したら、城が壊されるだけじゃ済まなかったかも」

 有賀、美佳の会話に割り込んだ柑奈は、2人を見て頷く。

「来島、第二射を撃たれる前に墜とすぞ」

「了解」

「戦術長より航空隊へ、本艦は今から敵艦隊後方の要塞を墜とす。航空隊は地上からの支援と共に艦隊の殲滅にあたれ」

 再加速をかけた武蔵の横をすり抜けた戦闘機体はターンして艦隊の背中にミサイルを放ち、艦橋と思われる部分には機銃を命中させていく。

 それを背にした武蔵は主砲を相次いで放つが、要塞の装甲は硬く一見するとダメージを与えられたようには見えなかった。

「泰平、要塞の背面に回り込めるか」

「多分行ける」

 泰平は舵を傾け、要塞のギリギリに武蔵を通して背面を目指す。

 敵に接近するためにアステロイドは第一格納庫の破口に集中させていた。

「航海長! 今すぐ距離をとってください! 攻撃が――」

 直後、右舷の波動防壁に無数の光線が突き刺さる。

 スラスターを点火して下方に逃れつつ距離を取る武蔵だが、要塞の表面にはいくつもの細かい砲口がある事が肉眼でも確認できていた。

 しかし、応戦のために波動防壁に穴を開ける事ができず、対抗の手がないままに武蔵を狙う砲門は閉じてしまう。

「波動防壁減衰率73%、艦のダメージ限界を見ると接近は危険です」

 モニターを見た柑奈は淡々と告げる。

 速度はそのままに要塞の横を通り抜けた武蔵は、まだ薄く緑の光を放っていた。

「……美佳、今の敵の光線の間隔はわかるか」

「間隔? どうして?」

「正面から向かえばある程度被弾面積は小さくできるはずだ。間隔によって考える価値はある」

「ちょっと待って……」

 美佳は手元のパネルを操作してデータを柑奈に渡す。

 その間に背後に回り込んでいた武蔵は主砲でメインノズルらしき場所に攻撃を行なったが、この場所に留まるためなのか展開されていたノズルの外壁装甲によって弾かれた。

 武蔵のコンピューターによる予測を弾き出した柑奈は、少し眉をひそめる。

「敵の攻撃の物理的な隙間に入り込むには、本艦は大きすぎます。艦首側の損害は甚大になる上、現在の本艦のエネルギーでは波動防壁が耐えられません」

 武蔵が放つショックカノンの光が入り込む艦橋で、柑奈は続ける。

「砲門を狙うにしても、照準中に本艦は航行不能になる可能性が高い」

「……」

 報告を受けて考え込む。

 そして有賀は決断を下す。

 

 

 地上から見えるのは、断片的な光だけ。

 それが武蔵によるものなのか、別のものによるのかは分からない。

 だが不思議と、敵の場所と武蔵の場所が分かる気がした。

 町から離れた郊外の土地の岩石をしきりに持ち上げて宇宙に運び奥へ入り込んだ武蔵の代わりに敵の数を減らしていたが、年端も行かぬ少女2人の体力はこれまでになく削られていた。

「うぅ……はぁ、はぁ……」

「サーリャ、大丈夫?」

 手を繋いだまま、肩で息をする妹に目を配る。

 彼女は笑顔で頷いたが、少し無理をして見えた。

「今は美佳達に任せても……」

「それはだめ。ここはミカの星じゃない、わたしたちの星。わたしたちが守らないと、守ろうとしないと、ミカたちが何のために戦っているのかわからなくなる。それに……わたしたちを守ってくれてるミカたちは、わたしが守らないと」

「…………そう」

 ずっと一緒にいた妹は、自分に見せていた以上に成長していた。

 それに気づいたリーリャもまた、明るくなった空を見上げて覚悟を決めた。

「じゃあ、今だけはもう少し」

「うん、もう少し。数は減ってるし、ミカ達は……」

 少し目を閉じたサーリャだが、すぐにハッと空を見上げた。

「何かあったの?」

「ミカ、何をしようとしてるの……?」

 妹の言葉の真意を掴みかねていたリーリャの頭に突然、不鮮明ながら映像が現れた。

 そこには――。

 

 

 艦は加速をかけ、宇宙を駆け出した。

 左舷に指向していた主砲は正面に固定され、艦首側の全兵装とロケットアンカーをスタンバイした状態のまま、波動防壁を遮断して光を纏うアステロイドを破口の防御ではなく、艦前方に展開して。

 ――まっすぐ、装甲に固められた要塞の左の腹へ。

「回避不可能域まで、あと1分!」

「敵要塞、迎撃の予兆無し」

 美佳と柑奈のオペレーションが響く中、大きくなっていくエンジン音と共に加速を続ける。

「回避不可能域まで、あと30秒!」

 沈黙したままの要塞は、ただそこにあるだけ。

「回避不可能域まで、あと10秒!」

 しかし。

「要塞、砲門開きました! 迎撃来ます!」

 艦橋からも、迎撃の光は見えた。

 恐るべき速さで開いた砲門は間髪入れずにビーム砲撃を開始、それはまっすぐ武蔵を狙う。

「撃て!」

 それが到達する前に、四方に撒き散らされたアステロイドの狭間から武蔵の主砲と魚雷が放たれた。

 6本放たれた魚雷は2本が迎撃され、3本が砲門の無い装甲に命中したが、わずかに1本が敵の攻撃が止まった一瞬に砲門へ命中。

 陽電子の塊は敵の迎撃を切り裂き、砲門を貫いた。

「重力アンカー解除、ロケットアンカー射出と同時に姿勢制御ノズル最大噴射、回避行動!」

 艦長の指示と同時に視線を落とすと、レーダーでは既に回避不可能域まで進入している表示が出ていたが、それは言わなかった。

 高速で射出された錨は反作用で艦首を跳ね上げ、それを助長するように姿勢制御を行う事で敵要塞の上方に逃れる目的だった。

 しかし慣性のために逃れ切ることはできず、艦底が強く叩きつけられる。

 そのまま艦を横倒しにした武蔵は右舷のマストや翼を折り、展望室を潰して要塞に引っ掛けた錨を切り離し艦体に傷を残しながらも、なんとか離脱に成功した。

 背後では、武蔵の攻撃が命中したいくつかの砲門から爆炎が上るのが見えた。

 再度防壁を張って即座に航空隊への支援砲撃を始めた武蔵だったが、衝突した部分の装甲だけでなく離脱時に受けた損傷もあって、波動防壁の出力と強度は大幅に低下していた。

 航空隊の攻撃と地上から打ち上げられた岩石によって艦隊はほとんどが撃沈されていたが、残された十数隻は武蔵が復帰するとそちらに攻撃を集め始める。

 攻撃を受け艦体に無数の破口を作りながらも1隻ずつ数を減らしながら、再びアスラと要塞の射線の間に入った武蔵の眼前には、艦だったものの残骸が漂っていた。

 アスラを背に、要塞へ艦首を向け静止した武蔵は主砲を正面に向ける。

「航空機へ帰還命令、索敵は要塞の監視を――」

 近藤の言葉を遮るように鳴り響くアラートと同時に、窓の向こうに光が見えた。

「敵要塞、加速!」

「体当たりか⁉︎」

 美佳の報告に思わず立ち上がる有賀だが、正面で光が増しているのに気付いて目を細める。

「いや、あれは体当たりではない」

 まっすぐ前を見続けたまま、近藤は続ける。

「アレを粉砕して戦闘を終わらせる。砲撃用意!」

 

 

 武蔵が次の行動を起こそうとしている。

 おぼろげにそれを感じ取ったサーリャだが、惑星内から質量のある岩石を打ち上げて宇宙で動かすという行為は本人の予想よりも体力を奪い取っていた。

「サーリャ」

「……まだ、もう少しだけ……」

 自分を止めようとしているリーリャの言葉に返して一歩歩こうとするが、すぐに倒れ込んでしまう。

「でも、まだ終わってない……」

「えっ?」

「まだ何かやろうとしてる……多分、まだ……」

 弱々しく、それでも前を見つめて立ち上がろうとするサーリャの姿は、かつてないほどに力強く見えた。

「サーリャ……でもこのままじゃ」

「行かせてあげなさい」

 背後の声に振り返る。

「お母様……」

 リーリャの肩を軽く叩き、皇女はサーリャを見る。

「……強くなったのね」

「お母様が見てない間に。私も、知らないうちに」

「ええ、本当に」

 静かに、皇女もまた空を見上げた。

「今の私には、彼らを助けることはできない。できるのは、力を持つ貴女達だけ。貴女達が倒れそうになった時に支えるのが、きっと今の私の」

 語りながら、皇女は1人で立つサーリャの肩に手を置いた。

「……お母様……」

「これまで何もしてあげられなかった。きっと私も、貴女の力に迷っていたのかもしれない」

 そのまま、優しく娘を抱きしめる。

「強くなったわね、サーリャ」

「……それは違うよ、お母様。ミカ達の方が、もっと強い」

「だから助けたいんでしょう」

 再び妹の隣に立ったリーリャは、サーリャの手を取って指を絡めた。

「お母様が支えてくれる。私達は、美佳を支えよう」

「うん。いっぱい、助けてもらったから」

 荒涼としていた城の周りの大地に光が宿り、少しずつ緑が芽を出し始めていた。

 彼女達が見つめる宇宙の先にも、また一つの光が――。

 

 

「波動防護弾、発射!」

 放たれた2発のミサイルは、縦に並ぶと間隔を空けてそのまま炸裂した。

 現れたのは防壁ではなく、煙のようなエネルギーに囲まれた重力点。

「アケーリアスの時と同じように、エネルギーの放出方向を逆転させました。後は義弥さんと理沙ちゃんに」

「ありがとう、柑奈。美佳、敵との距離は」

「35000、今も毎秒加速しています」

 艦首側の主砲の仰角を下げ、並んだエネルギー体の中心を狙う。

「来島、外すなよ」

「2度目ですから。大丈夫です」

「要塞との距離、約20000!」

 迫る要塞は次第に大きくなり、肉眼でもその鈍い光が見えるようになっていた。

 武蔵とアスラに向けられた砲口には、赤く光るエネルギーが溜まっている。

 一方で武蔵もまた再びアスラの鋼材から緑の光を帯び始め、それは次第に発射しようとしている主砲に集まっていた。

「主砲へのエネルギー充填率、105%」

「いくぞ、砲雷長」

 有賀と目を合わせ、頷く。

「主砲……発射!」

 主砲口の前にたまり始めた光は大きくなり、一気に前方へと解放された。

 それが煙を突き抜ける度に収束され、太く強く進んでいく。

 発射目前だったエネルギーの球を砕き、砲身を貫いても威力は衰えず、陽電子の束が通り過ぎた場所には大きな穴が穿たれていた。

 

 白み始めた空に眩い閃光が見え、僅かながら衝撃波のようなものまで現れた。

 全てが終わった事が分かったサーリャは、糸が切れた人形のように崩れ落ちた。

 身体を支える母と姉に笑いかけた彼女は、流星のような光に目を向ける。

「帰ってきたね、ミカ」

 空に告げた彼女の左目は元の緑色に戻る事なく、青色のままであった。

「よかった……わたし、役に立てた……やっと」

 流星は光を失い、彼女達の元へ近づいてくる。

「あなたのおかげで。でも……ちょっと、疲れちゃったな……」

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