カガミ死ネタ注意
全身の激痛で目を覚ます。
20人の追手の内12人までを仕留めたところでチャクラも忍具も底を尽き、満身創痍の状態でこちらに放たれた雷遁をどうにか避けたものの、その着地点に仕込まれていた起爆札による爆発をもろに受けたところまではどうにか把握している。流石に死んだものだと思ったが千手の丈夫な体は一思いにあの世に送ってはくれなかったらしい。
周囲には物が燃えたあとのような匂いが漂っていて、それに嫌な予感を覚える。
意識を手放す寸前、見知ったチャクラを感知した気がした。
うつぶせに倒れていた体でどうにか首を擡げる。死屍累々と転がる雲隠れのクーデター軍。中には金角銀角の姿もある。扉間は手傷を負わせはしたがとどめを刺した覚えはない。嫌な予感がじわじわと胸を浸食する。そうして、ついに見知った木ノ葉の忍装束を一つ見つけてしまった。
こちらに背を向けて倒れているが愛弟子の姿を見間違えるはずもない。なぜ、撤退を命令したのにここにいる。お前はそんな跳ねっ返りな真似をする奴じゃなかっただろう。
「……カガミ…っ…」
もはや体を起こすことも叶わず、ずるずると這ってそちらに近付く。足の感覚は既にない。もしかしたら感覚どころか足自体が吹き飛んでいるのかもしれなかった。
やっとの思いで辿り着き、ぐいと肩に手をかけて仰向かせ、そうして一瞬、世界が色を失った心地がした。
きっと瀕死の己の感知能力が既に役立たずになっているんだろうと祈っていたが、こうしてカガミの体に触れてもチャクラの流れも心臓の鼓動も何も感じられず、既にその命が絶えていることはあまりにも明白だった。
そうして未だうっすら開かれた瞳。それはうちは一族が生来持つ黒い瞳でも、カガミがついに発現し、扉間に内心複雑な思いを抱かせた基本巴の写輪眼でもない。
かつて里の創設前、千手とうちはが血みどろの争いをしていたときに相対し、また幾度かは発現の瞬間にも立ち会ったことのある目。
その目が発現すると本人のチャクラの質もそれまでとは大きく変質する。だから断言できるが、扉間が囮となって別行動をとると宣言したあの瞬間まではたしかにカガミは万華鏡写輪眼を発現していなかった。なのになぜ。この目が発現する条件がなんであるか、扉間も大まかには把握している。
「……馬鹿者が…!」
自分のことなどそれほどに強く想ってくれなくて良かったのだ。
ただ良き師であったと。火影としての務めを果たしたのだと。そう想ってくれたなら充分に報われるというのに。
扉間は物言わぬカガミの胸に顔をうずめ、しばらくそうした後にチャクラを練り始めた。
もはや心身共に尽き果てた体で、己の命を削りながら無理やりに飛雷針を発動させるに足るだけのチャクラを練る。その無理に体が耐えきれずごぼりと口から血が溢れた。
いざとなったら互乗起爆札で己の体ごと敵を一人でも巻き添えにしてやろうと思っていたが、追手は全てカガミが仕留めてくれた。だったら自分の命の使い方は別にある。
この馬鹿な愛弟子を、妻子のもとへ、里へ帰す。
──僕は扉間先生も、扉間先生たちが興したこの里も大好きです。
弟子たちを一人前として認め、当時まだ作り始めたばかりの額当てを巻いてやったとき、そうカガミは言った。だから忍として尽くすことができて嬉しいと。
当時まだ少年だったが故の純真さからくる微笑ましい言葉だと思っていたのに。
「……本当に、難儀な一族だ…」
扉間は少し困ったような切ないような笑みを浮かべ、飛雷針の術を発動した。
後には、雲隠れの賊たちの死体と、焼け焦げた木々だけが残っていた。
卑劣様はまっすぐな馬鹿が好き