【カオス転生三次】名無しのガイア連合技術部員が戦闘職を始める様です。   作:クエゾノ

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山梨第三支部編
旅立ちとテンプレ


「とはいったもののどうするか・・・」

 

神主の話が終わり、医療班にしこたま怒られてサーニャに健康管理権限を認めさせられた後、職場に長期休養の届けをだしたところ笑顔で速やかに受け入れられ、家に帰ってきた。

 

それで自分の式神達に、今回の件について連絡を入れての対応を終えたのが今である。

 

あれから神主から一連の説明を受けて、そのための装備を渡された。

 

腕に巻いた籠手のような"COMP"を見て、そのときのことを思い出す。

 

 

 

 

「よし、じゃあ必要な事を説明しようか、」

 

神主がそう言うと、布のかけられた古めかしいお膳を恭しく持った、何度か見かけたことのあるピンクの長髪の妙な巫女服を着た式神が現れた。

 

布の上には籠手とコンピューターが一緒になったような奇妙な道具が乗せられていた。

 

「着けて」

 

言われるがまま左手につける。

すると電源が入り、使用者登録が完了したという通知が表示された。

 

「これは?」

 

「COMPだよ」

 

「え?

悪魔召喚プログラムは、製作に失敗どころか、

呪文をコンピュータープログラムで実行する方法すらまともに分かってないという話でしたが、」

 

「うん、その通り、

でもどうしてもCOMPを作りたい技術部員達がいたんだ。

じゃあどうしたのか、」

 

「・・・簡易式神を組み込みましたか、」

 

"COMP"の中に潜む静かな気配に気づく、

 

「ですが、デモニカ方式のやたらと重い簡易式神との霊基接続装置を入れて、こんな重さで済むはずが・・・」

 

「そこはね、ICチップ型簡易式神を使ったんだ。」

 

「簡易式神自身の動作で回路をOnOffさせるアレですか、

あれは動作速度が遅すぎて既存のコンピューターに組み込んでの動作は無理だった気が、」

 

「ICとしてはね。

特定の信号が打ち込まれた時に霊的処理をして特定の信号を返したり、信号に従って特定の力を発揮するという。センターや動作機として使えれば十分な訳、

ま、遅すぎて画像処理ができないからデモニカみたいなことはできないんだけどね。

それでも内蔵された簡易式神の力をコンピューターからのコマンドで使用できるから、悪魔召喚プログラムにあったような、幾つかのアプリは利用できるよ。

 

肝心の悪魔召喚機能はないんだけどねー」

 

「COMPとして意味無いじゃないですか・・・

悪魔がサバトマ使っても自分より弱い眷属しか呼べない辺り、簡易式神にサバトマ覚えさせてもLV0の滓のような何か、しか呼べませんからねぇ・・・」

 

特性を持たせたスライムの降霊の自動化を目指して色々やったが悉く失敗した日々を思い出す。

 

そこでふと疑問に思った。

 

「あれ?画像処理機能が使えなくても敵がどの辺にいるかの感知機能は簡易式神な以上使えるのなら、ソナーの様にそれを画面に表示させて、

式神IC組み込んだ照準の先に悪魔がいたときに通知する悪魔銃用の照準機と一緒に使えば、デモニカより使い易い未覚醒者向け装備になったんじゃ、」

 

「それを五島さんに渡すの?」

 

「・・・無いですね。」

 

あっさり引っ込める。

簡易式神でもチャージ時間はあるが、ディア等簡単な魔法を覚えさせれば使える以上、

携帯できて簡易式神の機能を手軽にコマンドで利用できるこれを未覚醒現地人に渡すのは危険すぎる。

 

そういや、デモニカは見栄え重視であんまり強くないからこそ自衛隊に提供されたんだったなと思い出す。

 

「これを渡したのは、使用者のバイタルチェック機能があるからなんだけど、

そこの横の赤いボタンを押してみて、」

 

言われた通り押すと、電圧計の様な、針と緑と赤に真ん中から分けられた表示板がデジタル表示される。

針は少し赤側を指している

下にもメーターがあり、こちらは数字表示で47.5833412%と表示されて・・・いや47.5833413%に上がった。

 

「上は今の君のあり方がどっちに偏ってるか、

それで下は、君の悪魔へのなり具合、

上が赤だと下の数字が上がっちゃうよ。

 

それで100%になったらゾンビになる。

まだまだ半分もあるから余裕じゃんとか思っちゃ駄目だよ。

 

50%越えると一気に上昇率が上がるし、そこから%が上がるのに合わせて、さらに上昇率が上がって、止められなくなるから、」

 

「そうですか・・・」

 

呟く、

今、赤なのは式神達にMAGを送っているからだろう。

 

「普通に戦って、ゆっくりMAGを吸収していれば緑側に偏るし、緑が振り切れたら、君のその子とか、強力なスキル、装備も戦闘で一回位なら使っても大丈夫、

制限付きチートだね!」

 

「装備?」

 

思わず、神主を見る。

 

「あれ?言ってなかったっけ?

強い魔力を持った装備や道具を使ったり、科学の武器でも強力過ぎる武器を使って一気に悪魔を大量に倒してMAG吸収して俺tueee!やったら存在が傾くよ?

ついでに、今持ってる短剣とか護符も使ったらヤバいよ。」

 

「言ってませんよ!?」

 

思わず叫ぶ。

完全に金にあかせてのチートができない。

 

「じゃあ止める?」

 

「止める訳ないじゃないですか。」

 

それだけは譲れない。

 

「じゃあ、頑張ってね。

あと、それからこれからの僕や医療班からの連絡はこの子からになるよ。」

 

そう神主が言うとCOMPを持ってきた巫女型の式神が前に進んだ。

 

「よろしくお願いします。」

 

 

 

 

 

 

というわけで、最初は、終末に備えて準備していた金満装備で低位異界に殴り込んで経験値やMAGを荒稼ぎしようと考えていたが、レベル帯にあった装備をする羽目になった。

 

「フルオートショットガンまでレベル20まで、アウトなのは痛かった・・・」

 

製作した自分の式神のレベリングの時は、山梨第三支部の狩場の浅層に適当にフルオートショットガンを担いで行って、マハブフとフルオートショットガンを適当に乱射して式神のレベルを2~3まで上げた上で、彼女自身で銃と武器と魔法で倒させ、そこで一代前の式神に来てもらって、この低レベル帯での最後の仕事として立ち回りの講習を受けさせてからレンタルに出していた。

それで先代は、一代上の式神から次のレベル帯での講習を~というのを繰り返している。

ただ、一度に全員のレベルが上がるわけでもないので、重なったり、そもそも特定の戦い方の専門で後輩が入ってこないというのもある。

 

サーニャはまさにこれで、原作を元にして、

【護りの盾】【トライエド】【トラフーリ】【トラポート】【探知】【アナライズ】【催眠波】【大放電】【キャンディボイス】【貫通弾】【子守唄】・・・etc.

等のスキルカードを詰め込んで威力偵察型にしたところ、高レベルなよく分からない異界に突っ込ませて情報を持ち帰る仕事において、いれば確実に成功して全員帰れるという珍しいタイプの強めな式神となったので、よくレンタル依頼が来る。

 

サーニャを長期間に及ぶリース契約に出すつもりはないが、どうしても必要という場合には、式神製造の補助を行える式神の都合をつけて、一任務単位で貸し出す事がある。

わりとトラ系のスキルカードは過保護な神主が量産しているのもあって入手難易度は高くないので、自分で作れよとも思うが、

 

まあそのお陰で、サーニャは自分のレベルを越える異界に突っ込んで、護りの盾を張りつつ、全力でぶっぱなして威力偵察を行うので日頃のメンテや、僕と致して精を取り込むことによるアップグレードと合わせてレベルが異常に上がってるのだろう。

 

・・・契約を軽視して、深層まで突っ込ませた挙げ句、わざとボスに遭遇して戦闘、勝利ということもあるのでそのせいかも知れんが、

 

神主に無理言ってつけてもらった護りの盾スキルは万能属性以外の攻撃を通さないのでわりと良いように使いたがる連中が多い。

 

なお、それやった連中は契約違反をついて全力で搾った後、技術部と事務方の方で回覧回して式神レンタルができないようにしている。

 

原作よりも強くなりたいとサーニャが言うこともあって、第二次大戦時の航空機動艦隊を単体で殲滅できる巨大怪異を航空中隊規模で倒せる原作エースウィッチを目指してアップグレードを重ねている。

 

ただその結果として、戦闘職だと持て余す代物になってるんだよなぁと思う。

 

サーニャは火力、防御力、機動力全てが非常に高いが、それを発揮しようとすると一戦あたりのMPやMAG消費が非常に大きいので機動力(逃げ足、忍び足)はとにかく継戦能力が低く、このタイプのスキル構成の式神だと、多数の戦闘を継続して行うことによって金を稼ぐ戦闘職が運用しようとすると、確実に大赤字になる。

 

そのため、サーニャの様なスキル構成の式神を所有したがる戦闘職は少なく、それでいて、特定の依頼や依頼の中の仕事で無いと困ることになるというレンタル需要が高い状態にある。

 

基本的にサーニャを異界のボスにぶつける事は契約上許さないことにしているが、それでも威力偵察と称してボスにぶつけようとする連中は後を立たない。

 

どうでも良いが、式神のレベルが上がったら一度メンテを行って成長に合わせて全身を整えると、ステータスが上がったり、稀にスキルスロットの余裕がでたりと上がったレベルをうまく活かせる事があるので、お勧めしている。

式神に内蔵されている自動アップデート機能は素晴らしいが、成長が進むに従い緩和されるとはいえ、どうしてもオートだと局所最適になりがちなので、一度全身を整理してやると喧嘩してるところが無くなって余剰が生まれる。

 

まあ、アップグレードや修理、メンテの予約は常に飽和状態なので自力で術式を弄るか、専属がいないと難しいが、

 

 

「ねえ、そのCOMP、ちょっといじっていい?」

 

思考はサーニャの言葉に中断される。

 

僕の体の異常に気付いて警告を出してくれていたが、こうなるまで無視してたのもあって頭が上がらない。

 

「そういやコンピューター技能持ってたな。

いいよ。はい。」

 

サーニャといえば電子戦というノリで付けたが、あんまり使ってない気がする。

 

COMPを外して渡す。

 

「ありがとう。携帯端末のデータも移しちゃう?」

 

「おねがい。」

 

「わかったわ。」

 

そう言って、僕の端末を受け取るとサーニャの部屋に持っていく。

 

それを見送ってからしばらく考える。

 

「・・・使うか、

もう使うことはないと思ってたんだけどなぁ・・・」

 

物置部屋に入る。

ごちゃごちゃしてる箱をかき分け奥に置かれた箱を引きずり出す。

 

 

 

リビングの机の上には開かれた箱と箱から出された装備が置かれていた。

 

「なつかしいな。

これって、技術部に入るまえ、私といっしょに戦ってた頃に使ってた装備だよね?」

 

COMPを弄るのは終わったのか、寄ってきたサーニャが僕の腕にCOMPを着けながら呟く。

 

サーニャとしてはCOMPのコンピューター機能的には弄るところはあんまりなかったが、これまで使っていた僕の端末のデータを移して、SIMカードを付け替えた上、操作しやすいように、ボタン配置を少し変えたらしい。

サーニャが弄ったからか、なんとなくサーニャの気配を感じる。

 

「そそ、」

 

手製の鉄パイプショットガンと、木製バットに五寸釘を打って釘頭を切って尖らせた釘バットと、腰につけるコンバットナイフ、それに軍放出品として買った旧式のフリッツヘルムとサバイバルベストと防弾チョッキが目の前に置かれている。

 

サーニャが弄ったCOMPを翳して判定する。

・・・レベル的には問題ないようだ。

 

ちなみに、魔力のある装備は魔力の強さで判定されるが、

銃等の科学の武器は形式と銃弾を打ち込んでの人力で判定される。

科学側の防具に関しては基本的には何を使っても悪影響はないが、調子に乗って強い悪魔の攻撃を受けると存在が傾く。

 

「これを装備して戦うの?」

 

「そのつもりだな。戦闘止めるレベル6まで使ってた装備だし大丈夫だろう。」

 

そういって装備してみる。

歳をとったのできつくなったかなと思いきや、むしろ当時よりも余裕があった。

痩せた・・・というよりもゾンビになりそうなレベルでやつれたのだろう。

 

いつの間に着替えたのか、サーニャも当時の戦闘装備に着替えてちょこんと隣に寄り添ってきた。

 

だがサーニャの存在感と比べると装備は貧弱きわまりないものに見えて、

良くてコスプレ、悪ければ外見の幼さと相まって子供の遊び道具にしか見えない。

隣に立っている自分はかかしか人形か、

 

技術部に籠っている間に、いつの間にこれだけ時が流れてサーニャは成長していたのだろうか、

 

そんな事をふと思う。

 

まあ自分も技術部での日々は、戦っていた日々よりもある意味で濃いものだったので無為に時間を過ごしたつもりは無いが、

 

そんなことを考えながらサーニャの頭をヘルメット越しに撫でて、自分のものであることを確認する。

 

サーニャは不思議そうにこちらを見るが、何も言わずにされるがまま、立っている。

 

「じゃあ、さっそく行くか、」

 

サーニャの頭から手を離すと、呟く。

 

「何を言ってるの?」

 

急に周囲の温度が下がった。

気づく間もなくいつの間にか握られた手は、握り締められてこそいないが、万力の様に固く、小指1mmたりとも動かせない。

一瞬で30のレベル差が目に見える形で現れていた。

 

「今日は駄目よ。

今朝、血を300mlも抜いたんでしょ?」

 

「戦っていた頃も抜いてたし・・・」

 

「内勤になって、抜く量増やしたんでしょ?」

 

「それはまぁ・・・」

 

「今日は休まなきゃ駄目」

 

断固たるサーニャの言葉に反論の言葉を飲み込む。

 

「分かった・・・」

 

「うん、いいこ」

 

そこで温度が戻って、手の力が弱まり、サーニャが今度は逆に頭を撫でてくる。

 

以前、内勤だからと毎日血を抜きすぎて血が黄色くなっても、抜く量減らしたから大丈夫としばらく続けてた時は本気で怒られたなぁと当時の事を思い出す。

 

・・・いつの間にか、完全に逆転されていたようだ。

 

それを不思議と心地よく思いつつも、亭主関白に戻してやると、レベル上げの覚悟を決めた。

 

「じゃあ、今日は何をする?

レベル差が大きい式神と日常的に致すのは医療班に禁止されたけど、

今日は、警告を無視してこうなったお詫びということで、サーニャのしたいことをするよ。」

 

・・・正直サーニャと致す頻度が落ちるのはキツいが致し方なし、

 

それを聞くと、サーニャは顔を赤らめて、目を逸らしてもじもじしながら呟く。

 

「何でも、言っていい・・・の?」

 

「おお、いいぞ。」

 

「じゃ、じゃあ・・・

えっちなことはしなくていいから、一日中ベットでゴロゴロしながら私のこと可愛がって?

頭とか、耳とかしっぽとか撫でて・・・」

 

「・・・それ、サーニャの望み?

僕がしたいこと言ってるんじゃなくて、」

 

きょとんとした後で、サーニャは理解したのか、笑みを浮かべる。

 

「私と同じこと、思ってたんだ・・・」

 

 

 

 

 

ふにふにとサーニャの艶やかな黒い毛で覆われた猫耳としっぽを弄る。

サーニャが肌触りのいい薄手の黒い寝間着を着ているのもあって、黒猫を撫でている気分になる。

 

ただ寝間着からこぼれる手足と艶やかな髪は白く、黒猫が人間に変化する途中の様な、あるいは神話が喪われ悪魔としてすら残っていない様な時代の洞窟壁画に現れる半獣のような、不思議な魅力を放っている。

 

耳としっぽはくたっと力が抜けリラックスしているようだが、時折ピクピク震えたり、敏感なところに触れるとピクンと力が入る。

 

白い四肢は甘えるように、自分の体にすり寄ってくる。

 

もうこんなことを、途中昼食夕食をとりながらも、十時間は続けただろうか、未だに飽きる気配はない。

 

と、腕の中の黒猫少女がもぞもぞと動いて体を起こす。

 

「そろそろ、寝よ?」

 

サーニャは少し体を起こしながら言う。

 

「ああ・・・

こんなことだったら、もっと前から休みとってやっておけば良かったな。」

 

「ふふっ、無理だよ。

だって、毎日、なんども死とよみがえりを繰り返すくらい、式神が大好きなんしょ?」

 

サーニャは仕方ないなぁという表情で見つめてくる。

 

「サーニャ?」

 

少し雰囲気が変わった。

 

「だから、

これから会うあなたの式神達も、私に負けないくらい、大事にしてあげて、

そのために、私はしばらくあなたの目の前から姿を消すから、」

 

「サーニャ!?」

 

「【子守唄】」

 

優しげなメロディーだが、その裏には強い意志の籠った歌声が耳に入る。

 

レベル差30の精神スキルに耐えられる訳もなく眠りへと落ちて行った。

 

「私たちの娘たちをお願い・・・」

 

最後にそう聞こえ、唇になにか柔らかい感触があった。

 

 

 

 

 

 

チュンチュン・・・

 

どこか寒い目覚めを迎える。

 

起き上がるがサーニャの姿は見当たらない。

 

と、

ピピッ

 

腕のCOMPに通知があった。

 

「サーニャからだ。」

 

メールを開く。

 

『こんな形で目の前からいなくなっちゃってごめんなさい。

でも、このままだと私に捕らわれてあなたの式神みんなとの時間より私との時間を優先しちゃうから、こうして目の前からいなくなることにしました。

 

式神の契約術式は有効なので、勝手にどこかに行ったりはできないけど、私の力、全力で隠れているので見つけることはできないと思います。

他の高レベルの人たちに頼めば私の事を見つけられると思うけど、

レベル30まで、私を探すのは止めて下さい。

それまでのあなたの健康管理はCOMPに入れた健康管理アプリを通じて連絡します。

 

あなたの事はいつも見守っています。

みんなのことも大切にして、みんなで仲良いあなたのハーレムで会いましょう。

 

アレクサンドラ・リトヴァク』

 

 

 

 

「それで、私のところに来たんですか?」

 

昨日笑顔で見送られた第二式神製作部に来ていた。

 

「部長、話し方、前の頃に戻ってません?」

 

「なんのことですか?

確かに少し前は、忙しすぎて、言葉遣いが少々乱暴になっていたかもしれませんが、」

 

ゆっくりと紅茶を飲みながら部長は言う。

隣に二人の黒髪のメイド型の式神を侍らせている。

この二人は部長を手伝うのみならず、差し入れ持ってきてくれたりと第二式神製作部のマネージャー的存在である。

 

「お疲れ様です。」

 

微かに怒りの波動が漏れる。

それを静めると、部長は、同士としての顔になり少し真面目に言ってくる。

 

「しかし子守唄ですか、式神は式主にその手のスキルを使用できないよう、契約と術式で縛っているはずですが、」

 

「そこは、サーニャに関しては、医療班にドクターストップ権限を認めさせられてるので、その一環として子守唄に関しては認められていたんですよ。

目の前から姿を消したのも式主の体調管理権限の一環ですし、」

 

「なるほど、それはさておき、探すなと言われて探して欲しいというのは、あんまりにもあの子の意志を踏みにじっていませんか?

略称のサーニャではなく本名まで署名しているのに、」

 

「どこにいるかまでで良いんですよ。

ただ、連絡がメール一本なので誰かに拉致られてそれっぽいメールを入れられている可能性があるので、

そういうことがないかどうかを知りたいんです。」

 

「相変わらず、過保護ですね。」

 

「式神ガチ勢として、式神のことには徹底的になるのが当然ではないですか?

こんな一度握った手を離したら、また元通りの存在として会えるかになんの保証もない女神転生世界では特に、」

 

「・・・おっしゃる通り、全くその通りですね。」

 

部長は、つい、この世界の無情さを忘れていたという風に呟いた。

 

「ですが、私が誘拐して、コレクションに加えているかも知れませんよ?」

 

「部長は他人のものを取ったりはしないでしょう。

それにここに来る前にも確認しています。」

 

「ええ、複数チェックは式神ガチ勢として当然、ですよね。」

 

「ええ、」

 

「分かりました。

せっかくの部下の門出です。無料で見て差し上げましょう。」

 

そう言うと、部長はティーカップを置き、目を閉じる。

 

「【探知】【ハイ・アナライズ】」

 

そうして呟く。

 

「まさか・・・」

 

「どうかしましたか?」

 

「今、この子と話しているので待って下さい。

 

・・・とりあえず、あなたの心配している様なことはありませんよ。

むしろ、疑問が残りそうな形式で伝えて式主が迷惑かけることになって、ごめんなさいと謝られましたよ。」

 

「そうですか、ありがとうございます。

サーニャもごめん。」

 

「とりあえず、この子と離れることは気にしなくても大丈夫です。

それより、ちゃんとこの子の願い、聞いてあげるんですよ。」

 

「はい。ありがとうございました。

ではしばらく、」

 

そう言って、古巣を去る。

 

 

 

「だいぶ、こたえてる様でしたね。」

 

部長は一人呟いた。

 

「ですが、あなたが思っているよりずっと、あの子は強くて、あなたを信じていて、あなたから学んでいますよ。」

 

だからあの子は姿を消した。

そう心の中でつなげる。

 

「それより、サーニャであのレベルで積極的にハーレム公認とは、上手く調整しましたね。

 

ガチ勢として、繋がる先の神格の乱数調整は基本とはいえ、

それほど繋がりは強くないもののの、サーニャ(アレクサンドラの略称)→アレクサンドラ(アレクサンドロスの女性形)→アレクサンドロス(ヘラの異名:盾を掲げ戦士を守る女)→ヘラで、

かの厄介な女神に近づいて影響を受ける可能性もあったはずですが、

 

今も無理やりちゃんと原典に繋げ続けているとは、」

 

そう言って、紅茶を飲んだ。

 

 

 

工場を出る。

こんな朝から元職場から出ることでいけない気分になるかと思えば、たまに徹夜明けで朝出ることもわりあいあったのでそんなこともなく、

ただ荷が降りたスッキリした気分と、いつも隣にあった体温の無さに寂しくなりつつも、第三支部へのバス停まで歩く、

 

 

 

 

第三支部へ向かう猫バス型式神に揺られながら、サーニャを感じられない喪失感を感じる一方で、これから行く第三支部での行動を考える。

 

とりあえず、第三支部には、鍛練用の異界があるので、そこである程度鍛えるつもりだ。

第三支部にリース契約に出してるニーナが空いてたら、レンタルするか、契約条件のレンタル予約が空いてる間はメンテ等をやっていいに従って、メンテとコミュと異界でのレベル上げを行う。

 

さすがに式神も無くガチガチの装備で固めてる訳でもないのに、レベル7で一人でレベルの上がりやすいレベル帯の異界に潜るのは単なる自殺である。

 

一人でやった方が確かにレベルが上がりやすいかもしれないが、多分やったら死ぬ。

一段階下のレベル帯で一人でやるよりは、複数人で上のレベル帯で戦った方がレベルが上がりやすい。

 

霊薬がぶ飲みで一日中戦い続けるというのも考えたが、霊薬を使うと悪魔側に傾くので、一日一回のMPポーション以外、必要時以外止めろと医療班に止められたので、悪魔に存在が傾かない程度に質の高いレベル上げを翌日にそれほど疲労が残らない範囲で行い続け、一年で30までレベルを上げなければならない。

 

・・・無理でね?

というか今まさに霊薬の必要時でね?

 

いや、1日あたりの戦闘時間増やして限界までやって翌日からの、限界までやってさらに翌日を、蓄積疲労でぶっ倒れるまで続けて、ぶっ倒れたところで霊薬で回復すれば、霊薬の使用量は複数日で一回に収まるはず・・・

あと、霊薬じゃなくて、科学系の薬なら存在が傾かないから起きていられる薬と、痛み止めでも入手するか、目指せドーピングランナーと後のプランを立てる。

 

そんな事を考えている内にバスは森を抜け、山梨第三支部のバス停に向かう。

 

 

 

「コんにちハ、あるじさま」

 

「ニーナ?」

 

バス停には、金髪で蒼色ががかった深緑の翡翠のような瞳の白いセーラー服を着た小柄な少女が立っていた。

 

背中まである長めの淡い金髪に黒いリボンのついた細いカチューシャをしている。

セーラー服は白いが袖と襟は緑色で、それがニーナの金髪を引き立てている。

 

頬は少し赤く染まり、目元は本来はつり目気味だが柔らかな表情がそれを隠し垂れている様に見える。

 

このあたりの調整が大変なんだよなと、モデルを作る時の事を思い出す。

 

美人にしたければ目元を吊った方が楽だが、少しきつめの顔になってしまう。

柔らか目の可愛い顔の時は目元を吊りつつ、眼全体は傾けたりといった微調整が必要になってくる。

 

特に彼女に関しては前世のとある同人のキャラを元にしているのもあって、出来はいいからこれで良いかでやめることができなかった。

 

「ハイ、サーニャさんから、レンタルの予約が入っていたノデ、むかえに来まシた。」

 

若干話し方がぎこちないのは買ったり不安定なのはまだレベルが十分上がっていないので、会話スキルを使いこなせていないからだろう。

 

「サーニャからレンタル?

聞いてないけど、」

 

「エエ、サーニャさんも、教えていないと言っていました。

予約されているのは初心者一日講習コースですね。

これをうけるか聞いたら断るだろうからと、」

 

「そら断るわ。」

 

一応以前はこのレベル帯で戦っていた上、たまに来てはレベリングしているのに講習が必要とは思えない。

しかも時間を無駄にできない状態では特に、

 

「でも、最近、近接武器は使ってない、ですよね?」

 

「そらまあ・・・」

 

基本的にマハブフとショットガンをぶっ放すだけのお仕事である。

 

「強い道具も開扉の実も使えない、ですよね、」

 

「基本はな。」

 

開扉の実は、緊急時には認められている。

 

「じゃあ、受けマしょうよ。」

 

「ええ・・・」

 

悩む。

言ってることも分かるが・・・

 

「それに、講習を受けてる最中、キャンセルされたら私の評価も下がります。」

 

「それなら受けようか」

 

あっさり翻す。

確かにそれは重要だ。

自分事ならいくらでも無理をきかせて構わないが、他人の、しかも自分の式神の事は別だ。

 

「じゃあ、イきましょう。」

 

「分かった。

ところで最後のそれ、サーニャに言えと言われたの?」

 

「ハイ、そうですが、」

 

きょとんとした不思議と無垢な表情でニーナは言う。

 

本来このレベルの式神が言う言葉にしては違和感があったがその通りだったか、

 

「ありがと、

あー、行く前に、受付寄っていい?

登録とか挨拶済ませておきたい。」

 

「ええ、ご案内シます。」

 

 

 

 

 

「あ、交霊キチが来た。」

 

「なんだそれ、」

 

「あだ名だよ。掲示板では話題になってたよ。

みんな心配して早い復帰を祈ってたぞ。」

 

「あの狂人共が心配なんてするわけねーだろ。」

 

「隔離スレに毒され過ぎだぞ、

表は心配してる人もいたぞ。

早く回復して自分の式神作って欲しいって、」

 

「掲示板か・・・

そういや、ここ数日色々あって見てなかったな。」

 

受付にいた知り合いの顔見知りの未覚醒転生者の事務員と駄弁る。

 

以前、どうしてもと無理にお願いされて、無理やり未覚醒でも使える簡易式神で人型式神を仕立てた事があって、その時以来、会ったときには立ち話する程度の仲である。

 

基本的に自分はぼっち気質だが、式神製造のプロの一人になったお陰で、部長をはじめとして、なんだかんだでこうして付き合いが生まれている。

 

ちなみに、そうして作った人型簡易式神は、当然立ち上がることすら怪しかったが、こいつは家で喜んでその子を介護しているという。

このあたり、隔離スレを覗いてるだけあるなと思う。

 

「ひとまず事務側の通達として、お前が誰かについては隠しとくことになったから、

さすがに、ウチの自動高性能式神量産装置がまともな装備も持たず、レベル一桁であちこちふらふらしてることについて詳しい情報が出回るのは色々危険すぎる。

んで、基本名前は出さないように、

こちらも基本名前は呼ばない。

アナライズ結果誤魔化す装備もつけてるんだろ?」

 

「ああ、」

 

その辺りは分かる。

 

「んで、事務方としてもある程度サポートすることにしたから、

お前の式神に関しては優先レンタル&リース契約の早期終了に関しては要相談だが基本OKになった。」

 

「いいのか?」

 

「事務方も第二式神製造部にはかなり世話になってるからな。

わりと無理な式神依頼通してくれたり、」

 

「まあ、部長はわりと権力志向が強いからな。

その手の各部門に出来る限り最大限恩を売るのは怠らない。

そのお陰で勤務がブラックになったりするんだけど」

 

「お前・・・」

 

なぜか奇妙なものでも見る様な目で見られた。

 

「そういや、以前作ってやったおまえの人型簡易式神の調子はどうなん?」

 

「お、それ聞いちゃう?聞いちゃう?」

 

やけににやにやしながら奴は言う。

 

「まさか・・・」

 

「サーニャ、こっちに来て、」

 

カウンターの奥の扉から、"サーニャ"が現れる。

装備は事務方らしくスーツっぽいが、体の造形のモデルが同じなので、自分のサーニャそっくりである。

"サーニャ"はとてとてと奴の元に来る。

 

「呼びましたか?」

 

そこでポンと奴は"サーニャ"の頭に手を置く。

それを"サーニャ"は目を細めて心地良さそうに受け入れる。

 

「ああ、ちょっとこのメモを部長に届けてくれ」

 

「分かりました。」

 

「ありがとう。」

 

そう言ってサーニャはメモを受けとると戻っていく。

 

「覚醒したのか、」

 

「おう、最近始まったデモニカ講習を受けてな。

お陰でレベル4だ。

お前に作ってもらった人型簡易式神のサーニャもレベル上げ&改造でこの通りよ。」

 

「といっても、今ちらっと"見"たけどあの子レベル3だろ?

よくあそこまでしゃべれたりモーションできるな。」

 

「簡易式神の頃から話しかけまくってたからな。

これぞまさに愛の力よ。」

 

「はいはい、」

 

とはいえ、レベル3で普通にしゃべれるように仕込む時点でわりとすごい。

 

こいつが自分に泣きついて来たのも、自分がサーニャの式神のテンプレートを作ったからだったなと思い出す。

あのとき、さんざん迷惑かけられた挙げ句、態度が偉そうなのもあって、こいつには敬語を使わないことにしている。

 

「それで神主にはエイラの製作依頼出すつもりだから、これでエイラーニャが揃うと言うわけよ。」

 

さすがに未覚醒者の二体目の人型簡易式神の所有は、危険性が跳ね上がる上、どう考えても管理しきれないというので神主直々にストップが入ったので、当時エイラも作らせようとしていたこいつは悔しそうにしていた。

 

「大丈夫か?

サーニャは・・・」

 

「名前と盾で守るという特性から、ヘラと繋がりやすいんだろ?

分かってるって、だからエイラを側に置いて薄めるし、本霊との通信もしないつもりだ。」

 

「まあ、あのレベルだとそもそもモーショボーあたりの雑魚霊と繋がりそうだけどな。」

 

「そういや、お前はエイラは作らないのか?」

 

「エイラも嫌いじゃないけど、恋敵のイメージが強くて、作る気になれない。」

 

「恋敵(笑)」

 

「つまらない嫉妬だよ。」

 

「嫉妬(笑)」

 

「まあ実際、サーニャもエイラも中身の存在しない形だけのデザインと設定の束でしかないんで、

自分で作り出さない限り現実に存在しないから恋敵も嫉妬も無いんだけどな。

だからこそ、それを現実に作るための式神という技術は素晴らしい。

 

というか、いい加減掲示板語やめん?

カッコ、カッコ閉じを実会話でつかうのは、」

 

「拗らせてるなぁ・・・

・・・そういや、お前のサーニャはどうしたんだ?

一緒じゃないのか?」

 

「一緒らしいけど、レベル30まで見えないよう姿を隠してるとメールが来た。」

 

「なんじゃそりゃ。

まあ、お前のためを思ってのことだろ。」

 

「それは違いない。」

 

それだけは間違いない。

 

「そういえばニーナの事だが、」

 

「ニーナがどうかしたのか?

なんか調子が悪かったり」

 

「いや、拗らせた奴に付きまとわれてるみたいで、因縁つけられるかもしれないから気を付けろよ。」

 

「事務方でガイア連合から出禁にしろ」

 

「いや、無理無理、さすがにレンタルした式神に手を出そうとして、持たせてる簡易式神のエネミーソナー&開扉の実の安全装置が発動したからって・・・」

 

「誰か教えろ殺してくる」

 

「やめい。

それに、殺したらケツ持ちしてるレベル30オーバーのブラックカード持ちが出てくるぞ。

とりあえず、そいつらには式神レンタル禁止とクエストとショップ禁止にしたんで、落ち着け、」

 

「・・・分かった。

山梨第三支部は、適当な対処を行ったと、それでいいな。」

 

「ああ、ま、なんかあったらどんどん通報してくれ、

俺らブラックカード持ちに何かしたら、さすがにケツ持ちしてるのも黙るだろうし、」

 

ブラックカードとは転生者に渡される物で、持っていると各種特権が受けられる。

 

基本的にブラックカード持ちのためにガイア連合は存在していると言っていい。

 

「ケツ持ちしてる奴、誰か聞いていいか?」

 

「悪い、さすがに俺らの情報は教えられんわ、

ただ問題起きて通報したら自動的に分かると思う。」

 

「そうか、」

 

「よしっと、手続き終了、

式神補助輪付き異界サイクル初心者コースをお楽しみあれ、」

 

「やめろ。」

 

呻くように言った。

 

 

 

 

 

洞窟の入り口を抜けて異界に潜る。

ここは神主が管理していた狩場を訓練用に解放したもので、レベル15位までは訓練に使うことができる。

 

迷宮好き勢と神主が調子に乗って改造しまくったせいで、異界というより現代ダンジョンと言った方が適切な有り様になっている。

 

明るく照明完備な上、いくつかの階層毎にダンジョンボスがいて、各階層に到達したら解放されるエレベーターがあると言えば分かるだろうか、

挙句、この異界内で死んだら過大な救助費用と引き換えに蘇生サービスまでついてくる。

そもそもこの異界の名前が修練用ダンジョンという時点で大分アレだ。

 

とりあえず、ここでレベル10位までレベル上げしたら、

レベル差的にパーティー組んでも平気なレベル11,12の子を派遣してる某所まで行ってそこで彼女達と一緒にレベル上げするかと考えている。

 

これからのことを考えると1,2週間で1はレベルアップしないといけない分、大分厳しいが、

 

「じゃあ講習を始めますね。

マズは属性について、

悪魔には属性というものがあります。

属性の種類については割愛しますが、大事なのは、悪魔ごとに有利不利属性があって、

悪魔は、弱点属性をつくと怯みます。

そうして怯んだら、もう一撃加えるチャンスです。」

 

照明に照らされた洞窟を背景に、白いセーラー服を着て腰に無銘の日本刀とコルトディテクティブSP拳銃を吊り下げた小柄な金髪少女が微笑みながら説明する。

 

もう知っていることだが、得意気に説明しているニーナを見ていると、わざわざ無粋に口を挟む気がなくなる。

 

そんなことより、可愛いニーナの成長を見て和むことの方が有意義だ。

 

「ここ一階層で現れる悪魔は、ガキとノッカーとゾンビとゾンビドッグ、カハク、ハーピー、です。

詳しい属性の説明はその都度しますが、注意として、ココのゾンビ系悪魔とガキは銃撃を反射して、カハクは火炎を反射するので、気を付けて下さい。」

 

なので、フルートショットガンで戦うときは特殊弾を適当にバラ撒いてたなと思い出す。

 

すると、入るとき持たされたお守り型の異界探索用簡易式神に反応があった。

同時にCOMPのエネミーソナーにも反応が出た。

 

ニーナは腕輪・・・腕輪型の簡易式神をちらっと確認するとこちらを見て言う。

 

「では、ゾンビがいるところに向かうのデ、近接武器を構えて下さい。」

 

「いきなり近接!?」

 

最初は遠くから銃や魔法で戦って慣らそうかなと思っていたが、

最初から接近戦を指示されるとは思わなかった。

 

とりあえず、釘バットを振り上げる。

 

「あいた!」

 

勢い余って尖らせた釘が頬を掠めた。

 

おそらく傷になっているだろう、

まあ、そんなことはとにかくと、強くなった腐った匂いのする方を向く。

 

「ヴォ、ボァ~~・・・」

 

奇妙な叫びを上げながら、半分腐った人体の様なものが現れた。

だが距離は遠い。

 

「あれが悪魔です。

サァ、近づいて武器を振るって倒して下さい。

この悪魔はレベルが低いので、簡単に倒せます。」

 

念のためアナライズしてみる。

 

【ゾンビ】

レベル2

スキル:無し

【銃撃反射】【呪殺無効】【火炎弱点】

 

レベルが低すぎる。

おそらく、死者の成れの果てとしてのゾンビではなく、死者がそうなるという伝承が形を持っただけの悪魔だろう。

 

釘バットを振りかぶったままゾンビに近づく、

そうして、

 

「アッ、まっ」

 

「おりゃ!!」

 

ゾンビの頭部に横から釘バットをぶちこむ。

 

一瞬の抵抗の後、脆いゾンビの頭部は砕散った。

 

素質が魔術系とはいえこの程度の相手なら余裕で肉弾で倒せる。

 

しかし・・・

 

「あぁあぁあぁ・・・」

 

横殴りにしたせいで砕けたゾンビの頭部の腐った肉や汁が少しかかってしまった。

 

すぐにMAGに分解されて消えていくとはいえ、気持ちの悪い感触と鼻の奥に匂いは残る。

 

「こうやっテ、頭が破裂シて、相手の中身を被ることがあるので、

鈍器で、弱い人型悪魔の頭部を狙うときは、横からよりも上から振り下ろして、叩いた方がイイですよ。」

 

「早く言ってよ・・・」

 

情けない声が出た。

 

 

 

次は銃の講習である。

今使っている鉄パイプ型散弾銃は手製銃だけあって引き金は無く、ショットガン弾を二重になった鉄パイプを滑らせて底に打ち付けることで直接叩いて発砲するフィリピンゲリラガンと呼ばれる代物で、いくら慣れてたと言ってもこれは新しいの買うべきだったかと今さらながらに後悔している。

 

飛行系のハーピーが来るとのことだったので、弾丸をスラッグ弾(一粒弾)からパチンコ玉ほどの弾丸がいくつか入った鹿弾に変更する。

 

この銃でスラッグ弾を使って飛行系の相手に狙いをつけて撃ち落とそうとするのは無謀以外の何者でもない。

 

COMPのエネミーソナーを確認し、ハーピーが来る方向へ散弾銃を向ける。

 

「キシャーー!!」

 

ハーピーが吠える。

 

鉄パイプの持ち手をスライドさせて雷管を撃針に叩きつける。

 

バン!

 

鹿弾が弾け飛び、ハーピーのあちこちに黒っぽい小さな穴が開く。

 

だが遠かったのか浅い。

 

「クアァーーー!!」

 

怒り狂ったハーピーが突撃してくる。

 

ハーピーに向かって再度鉄パイプをスライドさせる。

 

カンッ!

 

硬い音がするが弾丸は発射されない。

 

カンッ!カンッ!

 

再度やっても変わらない。

 

「あっいけね、」

 

これ単発だった。

 

慌てて、開けてある穴から、ショットガン薬莢を引き抜いて再度装填しようとするがその隙にハーピーが迫ってくる。

 

「シャッ!!」

 

ハーピーが爪を振るってくる。

 

ガキッ!

 

思わず、鉄パイプ散弾銃の銃身で受け止める。

装填中のショットガン弾が転がり落ちる。

 

こんなときだけは冷静な思考がこのまま一撃離脱されると不利だと告げる。

腰を落としながら一歩進み、ショットガンから手を離す。

 

ハーピーの毛だらけの顔が目と鼻の先にある。

目が合った。

 

「はっ!!」

 

気合いを入れて、左手で逆手に抜いたコンバットナイフを持って、力一杯ハーピーの耳に抉り込む。

 

「グゲェ」

 

奇妙な音を立てて、ハーピーは白目を向いて崩れ落ちて、MAGに変わっていく。

 

ナイフと拳銃は護身用としてある程度は訓練を続けていたのでこれくらいはできる。

 

それを拳銃を構えて見ていたニーナが言う。

 

「大丈夫ですか?」

 

「ああ、大丈夫」

 

「それなら、良かったです。

次は銃だけで、倒してくださいね。」

 

「分かった。」

 

さすがにこの有様のままでは終われない。

 

ナイフをしまって、捨てたショットガンを拾う。

やはり、ハーピーの爪を受け止めて歪んでいる。

力を入れて、曲がりを直すと、何回か無理やりパイプを往復させて、滑らかに動くように調整する。

 

「よしっ」

 

呟いて弾を込める。

今度はもっと引き付けて射つ。

 

 

 

「次は魔法ですね。

ブフとマハ・ブフ、ムドを使うんですよね?」

 

「基本はそうだな。」

 

といっても不確実なムドはよほど物理、氷結系の相性が悪い相手でも無い限り、使いたくないが、

 

「では、こっちにゾンビがいるので案内します。」

 

歩き出すニーナについていく、

しかし異界の中で自分の式神とはいえ、セーラー服の小柄な少女の後ろを追って歩いていると妙な気分になってくる。

 

というかこの子、貸し出し中とはいえ、自分の持ち物なんだよなと改めて強く自覚すると、妙に興奮してくる。

 

「・・・?

ドウカ、しましたか?」

 

「いや、なんでもない。」

 

妙な気配を気取られたのか、ニーナに聞かれ、慌てて答える。

 

 

 

「マハブフ」

 

目の前にいたゾンビ共が凍りつきMAGに還っていく。

 

「ブフ、ブフ」

 

残ったゾンビ達もブフで倒していく、

 

腐っても・・・自分がこいつらの同類になりかけてるとかそういう意味ではなく、腐っても魔術系の覚醒者として魔術を使った戦闘では遅れをとることはない。

ブフとマハブフは昔から使ってたのもあって、慣れている。

 

「おつかれサマです。

MP回復ポーションです。

使いますか?」

 

そっと、ニーナがポーションを差し出してくる。

 

「ごめん、ポーションの類いは敵の攻撃を受けて怪我した時や、一日一回のMPポーション以外は基本的に使うなって医者から言われてるんだ。」

 

「そうですか・・・」

 

残念そうにニーナがポーションをしまう。

その表情を見ていると悪いことをした気分になってくる。

 

「さあ、次は道具の使い方です。

自動販売機があるところまで行きます。」

 

「至れり尽くせりだなこの異界!?」

 

思わず突っ込んだ。

 

 

 

 

 

「本当に自動販売機だ・・・」

 

街でもよくある自販機に雑に装甲をつけて強化したものを見て呻く、

ペットボトルや缶や瓶に入って霊薬やらアイテムが入っている。

珍しい瓶ビールの自販機があると思いきや、瓶ビールの代わりに火炎瓶が売られているのはシュールを通り越してなんの冗談だと言いたくなる。

管理部門が悪ノリしたのか、火炎瓶のところには、ゾンビパーティーには黙って火炎ビールとか、北欧原産モロトフカクテル等と煽り文句が書かれている。

この二つには名前以外の差は無さそうだった。

 

ニーナはカードを翳して、火炎ビールとモロトフカクテルを一度に押すと購入口から落ちて来たそれらを持って、渡してくる。

 

割れ防止なのか、薄い金属板が巻いてある。

 

ニーナの元ネタはロシア人なのでモロトフカクテルで、自分はゾンビなりかけなので火炎ビールで一緒に焼かれちゃう等とバカなことが頭に浮かぶ。

 

「この火炎瓶を使うときは覆いをとってから、相手に向かって投げて下サイ、

ガイア連合の火炎ビンは割れると燃えるようにできていますが、

ガイア連合以外で買ったり、自作するときには口の部分が外れない様にしっかり留めてあるか、確認して下サイ。

そこが弱いと火をつけて投げる時に抜けて中の油を被ってしまいます。」

 

「丁寧だな。」

 

「たまに、自作する人がイルので・・・」

 

そういや自分も昔、戦っていた時に火炎瓶を自作して使っていたなと思い出す。

 

当時は二本携帯して戦っていたが、戦闘中割れて火がつき、なんとか敵は倒したものの、色々混ぜて火力と粘性を上げていたため転がっても消えず、

ブフで無理やり火を消したところ、腹から下腹部にかけて火傷+凍傷という、サーニャのディアでも治らない訳のわからない怪我を負って、医療班のお世話になったなと思い出す。

 

そんな忌まわしい記憶を心の奥底に封じ込める。

 

「さあ、ゾンビの所に案内します。

ゾンビは火炎弱点なので、とても有効です。」

 

そのまま、ニーナの案内に従ってゾンビの元へと歩いていく。

 

 

 

離れた所にゾンビが一体突っ立っている。

 

「それじゃあ、投げるか」

 

モロトフカクテルの方の覆いを取って構える。

 

「あっ、力いっぱい投げると、銃撃扱いになって反射される事があるので、注意して下サイ」

 

「えっ、それは知らなかった。

ありがとう」

 

慌てて力を抜く、そうして、そのまま構えて、多少力を抜いて投げる。

 

パリン!

 

ゾンビが炎に包まれて倒れ、MAGに還っていく。

 

完全にゾンビが消えてもまだ炎は消えずしばらく燃えていた。

 

「火炎瓶は近づいた敵の真ん中に投げると複数の敵を巻き込めることがあります。」

 

「そうなのか」

 

今の騒ぎに気づいたのか奥から三体のゾンビがゾロゾロとやってくる。

 

「じゃあやってみるか、」

 

今度は火炎ビールの火炎瓶を敵の真ん中ら辺に投げてみる。

 

「あっ」

 

コントロールがずれて、敵の前に落ちた。

火柱が立ち上る。

 

さすがのゾンビも火柱を迂回してこちらに向かってくる。

 

「ジオ」

 

ニーナの言葉とともに、ニーナの前から雷光が走り、

近づいてくるゾンビの一体の腹に炸裂した。

 

バン!

 

放電音を立ててゾンビは倒れる。

 

その間に、ニーナは拳銃の回転弾倉を抜きとり他の弾倉に入れ換える。

 

「【火炎弾】です。」

 

バン、バン

 

銃弾が命中すると二体のゾンビが燃え上がり、そのまま倒れる。

 

ニーナは、三体のゾンビをあっという間に倒すと、こちらを見て得意げに微笑む。

 

「ここから少し歩くとエレベータールーム、です。

着いてきて下さい」

 

そう言って、歩き出す。

 

 

 

目の前に大きな金属製の扉があった。

 

「このカード読み取り機にカードをかざすと、ロックが解除されて、ロックを解除した階層までエレベーターで、行けるようになります。」

 

言われてた通り、カードをかざすと、金属扉についた小さな扉が開く。

 

ニーナに先導されて中に入る。

中は小さなエレベーターが並んでいるホールになっている。

 

「この中には許可された悪魔以外は入ってこれません。

また、既にあるじさまは既に3階層まで解放しています。」

 

この辺は既にニーナ等作りたての式神のレベリングで何度も利用したことがあるのでわかる。

 

「さて、これで講習を終わります。

ドウでしたか?」

 

そこでニーナはこちらの目の前に立つと上目遣いで、照れたような期待しているような表情を浮かべこちらを見上げてくる。

 

「いや、すごく良かったよ。

かなり成長してる、あの戦い方とか凄かった。

説明もちゃんとできてるし、」

 

レベル差もあるが、実際、あのジオからの流れるような特殊弾装填と射撃は自分でもできるか怪しい。

 

それを聞くとニーナは花が綻ぶように微笑む。

 

「良かったです。

 

では、帰りましょう。」

 

「あーこれからレンタルするから下に降りてレベル上げしないと・・・」

 

「ダメ、です。」

 

そう言うとニーナは自分の前に立って、そっと右手を僕の頬に当てて撫でる。

 

そういや、ここは安全なんだなと思って力を抜いた瞬間、

 

ニーナが触れているのとは逆の頬がジクジクと痛みだし、血が流れ出す感覚がした。

あ、まずい。

 

と、同時に緊張が解け、知らず知らずの内に力が入っていた体から力が抜け、ガタガタと震え出す。

 

戦闘後の離脱症状、初めて戦った時以来無かったがなんでこんな時に、

 

ニーナはそっと手を伸ばし首に手をかけて、その濃い青みがかかった翡翠のような瞳でこちらを見つめる。

 

「ディア」

 

そっと彼女が呟くと同時に頬の痛みが消える。

 

「息を吐いて下さい、」

 

言われた通り吐く、

 

「息を止めて下さい・・・息を吸って下さい・・・息を止めて下さい・・・」

 

指示にしたがって呼吸を繰り返す。

 

次第に体の震えが引いていく、

が強い脱力感は消えなかった。

 

「初めて戦ったり、久しぶりに戦ったら、みんなよくそうなってしまうもの、です。

 

戦いで体が緊張して、そこから安全な所にいくと、安心しちゃって、体が必要以上に緩んでそうなってしまうもの、です。

 

だから休んで下さい。」

 

精神の問題なら耐えられるつもりだったが、これは肉体の、神経系のストレスから来る生理反応である。

 

さんざん無理させていた体が、機会とみて魂に反逆しにかかった、そんな妄想さえ浮かぶ。

 

本来なら徐々に緊張を下げたり、あるいはレベル持ちの身体能力で神経への負荷に耐えるが、久しぶりということで、神経への負荷がもろにかかってしまい状態異常のような状態になってしまった。

 

状態異常・・・?

 

「状態異常なら・・・アムリタソーダで・・・」

 

「ポーションは、敵の攻撃を受けて怪我した時や、一日一回のMPポーション以外は基本的に使うなって医者から言われてる、ですよね?」

 

サバイバルベストからアムリタソーダを取り出そうとした腕を、ニーナの手がそっと握り、止められる。

 

「あう・・・」

 

ここで、いつもなら自分の状況を危機的状況を説明して説得にかかるが、そんな気力が湧かない。

 

いや、気力の無さにあかせて一言命じれば、自分の式神であるニーナは断れないはずだが、せっかくのニーナの気遣いを無視するのは嫌だった。

 

・・・いや、ニーナはそこまで情緒が発達しているか?

先ほど言ったルールにしたがってるだけじゃ・・・

 

「さあ、戻りましょう。」

 

ニーナがその、小さいが力の強い体で優しく肩を貸してくる。

小柄過ぎて、半分おぶさっている様な形になる。

 

それでも、自分の式神が示した気遣いの様に見えるものをないがしろにしたくはなかった。

 

 

 

「ふぅ・・・」

 

ガイア連合第三支部の迷宮部門のロビーにて、長椅子に座ってゆっくりする。

 

戦闘ストレスの離脱症状で気力が抜けて、やる気が起きない。

 

特にエレベーターは止まったりせず、ニーナは講習終了の連絡のため、事務所の方に行っている。

これから、ニーナにはレンタル依頼は入っていないので、契約に基づいてメンテ等を行う予定だ。

ついでに、新しくショットガンを調達する。

暇だし、my式神専用掲示板でも見るかと思って、スマホを取り出す。

 

「おい、おっさん」

 

「ん?」

 

乱暴な口調で声をかけられたのでそちらを見る。

 

目の前に五人の男が立っている。

高校生位の青年と言っていい年齢にみえるが雰囲気が荒っぽい。

話しかけて来たのは、一番前に立っているカイザーアーマーを着て十徳刀とデザートイーグルを装備した男、

レベルは・・・10,11位か、

その後ろは彼より少しレベルが下の様だ。

明らかに戦闘職なのに誰も高性能式神を連れていない、

現地人異能者か、

 

「お前、ニーナと一緒にいたな?」

 

「?」

 

なんでこいつらは、マイ式神でもない汎用なスキル構成のレンタル式神を個体識別しているんだろうか、

教習所の日替わり教官みたいな感じだと思っていたが、そういう文化なのか?

 

いや、ニーナが有能だから覚えられているのかもいれない。

 

「何とぼけてんだオラ!」

 

「それは、確かにニーナから講習を受けましたが」

 

いきなり襟を捕まれた。

 

「ニーナを誘ったな!」

 

荒っぽい相手は式神製作依頼で慣れてるとはいえ、こいつは何を考えているんだろうか、

相手がなんなのか分からないのはとにかくとして、ここでこんなことをやるとは、

そんなことを思っていると、

 

「ニーナちゃんは兄貴の良い人なんですよ、

それなのにニーナちゃんを誘って講習行くなんて、年考えろよおっさん、」

 

「そうそう、しかもその年齢で講習とか恥ずかしくないの?

クソダサザコおっさん」

 

後ろにいた取り巻きとおぼしきチャラい男が囃し立てる。

 

「そうだ。ニーナは俺の物だ。」

 

「何を言っているんですか?

ニーナは僕の物ですけど」

 

「あ?」

 

「式神には組織であれ個人であれ所有者がいます。

自分がニーナの所有者です。」

 

「お前がか!!」

 

そのまま首を絞めるように襟ごと持ち上げられる。

 

そうしてそのまま、襟を捕まれた状態で身体中睨み付けられる。

 

何を見たのかそこでフッと馬鹿にしたように嗤う。

 

「ふん、ザコが、お前にはニーナは釣り合わない。

せいぜい簡易式神と遊んでろ。」

 

「は?」

 

こいつは、こうやって喧嘩売る前にあらかじめ相手の力量を図っていなかったのだろうか、

そもそも高性能式神や簡易式神をなんだと思ってるんだろうか、

そんなことを思っていると、

そして、言い聞かせるように目を見て言ってくる。

 

「あれはお前には過ぎた女だ。」

 

リアルで言う奴を初めて見た。

いや、サーニャに関してはレンタルした連中に、技術部で個人警護やらせとくのは勿体ないとかは、わりと言われてたか、

 

そんなことが頭に浮かぶ。

 

奴は僕の目を睨み付ける。

 

「ニーナを渡せ、」

 

殺すか、

確か、カイザーアーマーは冷凍に弱かったはず、

マハブフで怯ませてからの劣化ブフダイン・・・いや、マハブフ二段構えで、それでダメなら冷凍弾ぶちこめば死ぬか、

いや、ここは山梨第三支部、ここでは控えよう。

 

そんなことを考えていると、

 

襟を掴んでいた腕が横からガシッと褐色で傷だらけの巨大な手に捕まれた。

そのまま、無理やり下げて椅子に戻される。

 

ミシッ・・・

 

異音と共に奴の手の力が弱まり解放された。

 

「いででででででで!!!」

 

「またお前らか、懲りないな。」

 

「ジント・・・?」

 

人に威圧感を与えるためにデザインされた巨大な体躯と傷痕だらけの褐色の肌、そして物騒な装具、

そのコンセプトに見覚えがあった。

 

「そうだが、会ったことがあるか?

あいにく覚えてない。」

 

「いえ、あなたの降霊を担当したのが私なので、少し懐かしくなっただけです。

助けていただいてありがとうございます。」

 

「そうだったか、そういうことはあまり言わない方がいいぞ。

それに、礼を言う必要はない。これが仕事だ。」

 

しまった。

聞かれたか?

と思って絡んできた男達を見たがそれどころでは無いようだ。

 

「てめぇ!ジント!邪魔するんじゃねぇ!」

 

「そうですよ!兄貴の恋路を邪魔する奴は馬に蹴られちまえ!」

 

わーわーと男と取り巻き共が騒ぐ。

 

「お前ら、やるなと言ったよな?」

 

ジントの雰囲気が変わる。

連中はピタッと黙って、その顔から血の気が引いていく。

 

【威圧】か、これは降霊の段階でうまくつけられたんだよなと、彼を作ったときのことを思い出す。

 

「くそっ、引くぞ!

あと、おいお前!

ニーナを返してもらいに来るからな!

首を洗って待ってろ!」

 

返すも何も元から自分の物だが、こいつの脳内はどうなってるんだろうか、

二度とくんなと思ったが、ここでようやく、こいつも"ニーナ"が"好き"で"ニーナ"を求める顧客候補だということに気づいた。

 

それならば、やることは決まっている。

 

「もし、ニーナをお求めでしたら、式神製造部にご依頼下さい。

予算の範囲内で、都合が合えば、スキル構成や性格の指向性をあなた好みに調節したあなたのニーナを注文できますよ。」

 

この頭のおかしい男もマッカとフォルマを搾り取る顧客だと思えば気分を抑えられる。

ニーナのテンプレートは登録されているので、こいつも自分の"ニーナ"を手に入れられる。

というか、偏愛向けるなら自分の"ニーナ"を買って向けろ、僕のニーナが迷惑するだろ。

 

「ふん、お前らはみんなそうだ。

ニーナをなんだと思ってるんだ。

やっぱおめえにはニーナはふさわしくない。

俺が何もやらんでも捨てられるろうな。」

 

そう言って冷たい目を向けてくる。

めんどくさい、このタイプか、

そもそも式神を、いやニーナという存在をなんだと思ってる。

そんなことを思う。

 

こちらを一睨みすると奴等は去っていった。

 

「ありがとうございます。ジントさん。

もしよければ、お礼に事務方に言ってメンテをしましょうか?」

 

たしか、ジントは発注者が山梨第三支部の個人の式主を持たない地脈のMAGで運用するタイプの式神だったはず。

勝手に人の式神に、お礼であれ、あれこれするのはどう考えてもトラブルの元なので、まず、持ち主に話を通さねばならない。

根本的に、そういう風に作っている。

 

「いや、悪いがその類いの賄賂になりかねないような行為は禁止されている。

それにメンテは事務方の方で定期的に適切に行われているので、心配ない。」

 

「そうですか・・・無粋な事を言いました。

すみません。」

 

と、そこで、

 

「あるじさま!」

 

ニーナが駆け寄って来る。

 

情緒がさっきより明らかに発達している。

何かあったのか?

 

「どうかし・・・」

 

「あるじさま!大丈夫でしたか!?」

 

とても慌てたようにニーナが話す。

 

「大丈夫、大丈夫、ちょっと変なのに絡まれただけ、

ジントさんに助けてもらったし、」

 

二重の意味で、

最後は心の中で呟く。

あのままどうしようもなければ、確実に血が流れていた。

 

「怪我はないですか!?」

 

ニーナは聞いておらず捕まれた襟のところの首筋を覗き込む。

 

近い・・・

 

ちょうどニーナの綺麗な金髪に顔を埋める形になる。

 

なんとなくそのままポンポンと背中をたたく、

 

首を確認していたが、気が済んだのか力を抜き、そのまま、寄りかかってくる。

 

「よかった・・・」

 

「大丈夫、大丈夫」

 

そう言いながら背中を撫でる。

 

「災難だったな。

感謝しろよ、飛び出して行きそうなニーナを止めてたんだから、」

 

「お前かよ。

そうか、ありがと。

あの場で出てこられたら確実に血を見る羽目になった。」

 

後ろから出てきたサーニャを連れた顔馴染みに、ニーナに抱きつかれながら話す。

 

「あいつら、ほんとどうしようもないな。

お前が言った通り、ガイア連合追い出せればいいんだが、」

 

「やっぱり厳しいか?」

 

「ああ、普通なら式神の持ち主の方が高レベルなんで持ち主自ら〆るんだが」

 

「〆ちゃってええん?」

 

相手の方が高レベルと言えども、継続的な戦闘が必要となる異界探索などの場合でなければ、ブラックカード持ちの技術部員としては、物理精神問わずいくらでも大物食いする手段はある。

 

「止めろ。

お前はレベル低いから、威圧とかじゃなくて、物理的に〆にかかるだろ。」

 

「反魂香使って生き返らせれば、実質無傷なんで物理でも威圧やろ。」

 

そう冗談半分で言ったら奴は頭を抱えた。

 

「おい、揉め事担当の前で、なに話してるんだ。」

 

「あ、すいません。ジントさん、止めときます。」

 

奴は、なにか奇妙なものでも見る目でこちらを見てくる。

 

「ジントの言うことは聞くんだな。

ジントは自我もってないぞ。」

 

「知ってるぞ、ジントさんの仕様書頭に叩き込んで魔界の深部まで潜って連れてきたのは誰だと思ってる。

知のステータスもあるし、そうそう自分で作った式神のことは忘れない。」

 

ジントは自我を持たないコンセプトでデザインされていて、そういう特性を持った魂をスライムとして降霊した。

 

「のわりに扱いが俺より良くね?」

 

「むしろ、自我持つ相手に善人ロールするよりは、自我持たない相手に善人ロールやった方が安心安全でね?

変に利用されたり粘着されても厄介なことになるし、」

 

だいたいこの事を言うと、大体の人は引く。

同士の場合は引いた後、なにかを納得してしまうが、

 

「善人ロールやる意味は一体・・・」

 

「やりたいからやる。

俺らにそれ以外に意味とかなんて必要かな、」

 

この辺、特に意味もなく生まれ、特に意味もなく死に、さらに特に意味もなく生まれ変わる事を体験した転生者は、存在することの意味自体を重視しない傾向がある。

だからこそ、自分が存在することの意味を勝手に定義して救済といって与えてくる類いの宗教とは相性が悪い。

 

「あー、お前はそうだったな。

でも、とかいっても、なんだかんだで助けてくれるじゃん。」

 

「おい、利用&粘着の筆頭」

 

こちらを見ている"サーニャ"を製造した時のドタバタの事を思い出して、思わず突っ込む。

 

突っ込まれて厄介筆頭は笑ってごまかす。

 

まあ、だからこそ善かれ悪しかれ人の繋がりが生まれるんだよなぁとも思う。

 

「しかし、お前、自分の式神のことになると、とたんに理性消えるよな。

止めなかったらなにかやってだろ?」

 

「やろうかと思ったけど、ここは事務方の管理する場所だし、

まあ、あのまま管理する気がないようならマハブフ位は使ってたと思うけど、」

 

「やめれ、

で、こっちが安全が確保したんで煽ったと、」

 

「?煽ったつもりはないけど、」

 

「・・・やっぱりというか、最後の宣伝、天然だったのか・・・」

 

「"ニーナ"が欲しいなら、こんなトラブル起こさず自分の"ニーナ"を買えというそれなりに善意はあったんだけどなぁ・・・」

 

ぽんぽんといつの間にか首もとに抱き付いていたニーナの背中を撫でながら言う。

 

「いまだによく理解できないんだけど、

このニーナが欲しいって話だろ?」

 

「だったみたいだな。」

 

「むしろそれ以外にあるのか?」

 

「・・・式神は人間じゃないぞ。

うーん・・・さっきの自分の反応、無理に人間で例えるなら、よく知りもしないで、人の妻に懸想してる男にそっくりの相手紹介した感じ?

あんまり深いこと考えない代わりに情は強そうだったから、本人の"ニーナ"もってればそっちに関心移るやろ。」

 

「あー・・・それなら、なんとなくは分かるわ・・・」

 

「・・・例えておいてなんだけど、あんまり式神を人間として見ない方がいいぞ。

ちょっとこの辺のこと、今度二人で話そうか、」

 

このあたり勘違いしていると、人間にとっても式神にとってもわりと不幸なことになる。

 

「お前から誘うって珍しいな。」

 

「あの大迷惑の果てに、なんとか成立したお前とお前のサーニャの関係が破綻してほしくないだけだよ。

お前が覚醒してサーニャもレベル持った以上、このままだといつかはぶつかる問題だから、

 

余計なお世話かも知れんが、さんざん色んな式神を作って見てきた降霊キチの、自分の式神ともっと仲良くなるための方法だ、

聞いといたほうがいいぞ。」

 

式神を人間として見ていたせいで式神との関係がうまくいかなくなった例を何度も見てきた。

十分な依頼料を貰っておいて依頼主の願望の形を受け止めきれない式神を作ってしまうのは自分達式神製造者の怠慢だが、

その願望の形が"式神が人間であること"なら技術での突破は困難だ。

 

式神はどんな形であれ仕様に沿った式神として見るべきである。

仕様書外の事や構造上無理な事を式神に要求するべきではない。

それは魚に鳥の様に飛べというのに等しい。

 

「あぁ、まあ機会があったらな。」

 

明らかに気の無さそうに言う。

そのうち、とりあえずここを出る前に一度捕まえて話しておこうと決意する。

 

というか、こいつからまたサーニャとの関係上手く行かないと泣きつかれたら鬱陶しい・・・

 

ちょうどその辺で、気が済んだのか、ニーナは体を離す。

 

「じゃあ、行こっか。ショットガンを見たい。」

 

「ハイ、あ、その前に・・・」

 

そういうと先ほどの僕を真似するようにニーナはジントに向き直って口を開く。

 

「ジントさん、あるじさまをありがとう。」

 

ニーナはぺこりとジントに頭を下げる。

 

「だから礼を言う必要はない。」

 

それに何事もなく自我を持たぬ式神は答えた。

 

 

 

 

ガンショップには銃刀法はなんだったのかと言いたくなるような、多種多様な銃器が山ほど並んでいる。

山梨第三支部という本部のお膝元なのでやたらと商品は充実している。

 

貿易系の仕事をやっている転生者がアメリカやら世界各地から買い集めてきて、事務方の許可を得て洗脳系の魔法で税関を突破して運び込んでいる。

 

ちなみに、ガイア連合内でのランクに従って買える武器は決まっているが、自分の様なブラックカード持ちには関係の無い話である。

 

護身用に持つならとにかく、異界での戦闘でメイン火力として使うならショットガンがベストという信念を持っているので、当然のごとくショットガンを見る。

 

ニーナの場合は、メイン火力というよりはあくまでレンタルした相手のピクシー的なサポート役としての運用なので、取り回しがしやすく、相手に合わせての特殊弾が切り替えやすい拳銃を持たせている。

 

「セミオートすらダメかよ・・・」

 

良さそうなショットガン(ベネリM1)を見つけたので、確かめたところCOMPに表示された結果を見て思わず呻く。

 

ここはやむを得ない、ポンプアクションにするかと思って、他のを探す。

 

「あノ・・・」

 

「ニーナ、どうしたの?」

 

「ショットガンなら、この銃がいいと思います。」

 

そう言って、木製ストックのいかにも猟銃という感じのショットガンを持ってくる。

札にはモスバーグM500と書かれている。

 

「ありがとう。どうしていいの?」

 

「使ってる人を見てて、不発になったのを見たことがありません。

ソレに、一度にたくさんの特殊弾の装填もしやすいです。」

 

少し弄ってみる。

確かに戦闘中弾を切り替えての装填がしやすそうだ。

 

シューティングレンジに行って、同型の銃を借り、何発か撃ったり装填したりしてみる。

 

・・・慣れてないが良い感じだ。

 

「ありがとう。これにするよ。」

 

「役に立てて良かったです。」

 

にっこりとニーナは笑う。

さっきより情緒発達してるなと思いつつ言う。

 

「ニーナも何か欲しいもの無い?

銃変えたいとか、」

 

少しニーナは首を傾げ、頬に手を当てる。

 

「銃は、このままで良いです。

だけど刀が、ちょっと、武器として合ってない感じがして・・・」

 

「基礎訓練はしたけど、剣術スキルいる?」

 

「ソウじゃなくて、向いていないというか、なんていうか・・・」

 

「しっくり来ない?」

 

「ソウそう、それです。」

 

「武器の素質が剣に向いてないのかな?

ちょっと一通り試してみよう。」

 

ニーナに関しては特に武器素質は決めてなかったというか、製造する時にそこまで設定するだけの余裕がなかったなと思い出す。

魔法系と銃が使えれば良いので、近接武器が何に向いてるかは重視してなかった。

 

ガンショップと言いながらも近接武器のコーナーもあり、そこでニーナに色々と武器を持たせる。

 

 

 

「剣とか刀とか槍系はやっぱりだめ?」

 

試し振りのコーナーで、何か違和感を感じるという表情でセーラー服の緑色のスカートと金の髪を翻してショートスピアを振っていたニーナに声をかける。

 

「ハイ、合ってない、です。」

 

「斧とかこん棒系は本格使いすると力のステが足りんしな・・・」

 

どうしたものか、

本来ならニーナは基本的に後列で運用するが、自分のお守りということで前列で運用する必要が出てきたのでこの問題が浮上した。

普通素質が無くても違和感を感じるレベルで特定種類の武器と合ってない式神ができることは珍しい。

こういう場合には大体他の武器の素質があるもんだが・・・

 

ショートスピアをニーナから受け取って、元の所に戻しながら考える。

 

杖系とか一通り試すか、と思ったところでクイと裾が引っ張られた。

 

「どうしたの?」

 

「あっ、ごめんなさい。」

 

ニーナはあわてて手を放した。

ニーナが気にしていた辺りを見ると鞭のコーナーだった。

 

・・・あきらかにSMプレイ用品が混じっているのは見なかったことにしよう。

 

「鞭が気になるの?」

 

「ハイ、」

 

「じゃあ試してみよっか、どれにする?」

 

「じゃあ、これを、」

 

「・・・クイーンビュートか・・・」

 

2mほどの先端がバラけた革の鞭を持ってきた。

これ武器というよりSM道具でねと思ったが、こんなものでも式神や覚醒者が使うと武器になる。

 

根本的に、SM道具以外だと武器に使えるような鞭ってあまり売ってないからなぁと、昔、戦闘職やってたころ買える武器を探してあちこち調べたときのことを思い出す。

 

店員に言って試し振りのコーナーに持っていく。

 

 

 

ヒュッ、

 

蛇のように鞭が蠢き、空を目掛けて飛びかかる。

 

革とは思えぬ刃物の様なキレに思わず見惚れた。

 

しばらくニーナはクイーンビュートを新体操で使うリボンの様に振り回す。

 

自在にクイーンビュートを繰るニーナはどこか楽しそうに見えた。

 

「ふぅ・・・」

 

ニーナがため息を吐いて演舞の様な試しは終わる。

 

気になったのでアナライズでスキルを確認すると、鞭術がいつの間にか生えていた。

 

今度から、後方用でも作った式神の武器適正もちゃんと確認しておこうと決意を新たにする。

 

「コレ、欲しいです。」

 

ニーナはねだるように上目遣いで言ってくる。

 

「ああ、良いよ。」

 

呟く。

 

「やった!ありがとう!

大好きです!」

 

思わず、喜んでいるニーナを見る。

 

自分の式神であっても、いやだからこそ、好きと言われるのは心に響くものがある。

 

・・・ねだられたのを買ってあげただけだが、

というか、これくらいは普通に買えるだけの金は持たせてるはずだが、

 

まあそんな無粋なことはとにかく、

 

思わずぽんぽんとニーナの頭を撫でると、ニーナにしてはめずらしく、にへらと緩んだ顔で笑った。

 

 

 

 

 

 

第三支部のダンジョン修行者用宿の一室、ここのエレベーターは異界に直結で行けるので修行者は泊まって修行する事が多い。

第一支部にある実家からだと、ここまで通うのに時間がかかるので1ヶ月間借りてダンジョン通いをすることにした。

 

 

ヒュッ、ピシッ!

 

ニーナが先ほど買ったクイーンビュートを振り練習している。

 

練習というよりはニーナの表情から新しく買ってもらったおもちゃで楽しんでるといった方が適切だろう。

 

それを横目で見つつ、購入したモスバーグM500の説明書を読みつつ、分解組み立て、手入れ装填等、一通り慣らす。

 

ニーナにレンタル予約は入っていないのでこうして好きに連れ回せると言うわけだ。

 

現場が忙しくなったり予約が入ったら連絡が入ってニーナが派遣されることになっているが、これから非番になるのでしばらくは無いだろうという話だ。

 

一通り、確認を終える。

ニーナの方を見ると、遊び飽きたのか椅子に座ってさっき買ってもらったクイーンビュートを眺めてのんびりしている。

 

「ニーナ」

 

呼ぶ。

 

それで察したのか、期待した表情を浮かべこちらに歩いてくる。

 

「服を脱いで、」

 

「ハイ、」

 

ニーナは顔を赤らめ、するりとセーラー服を脱ぎ捨てる。

 

セーラー服だけあってとてもいけないことをしている感じがする。

 

そのままニーナはうつ伏せに横になる。

 

そうしてニーナの乗る家から運んでもらった式神台を起動させた。

 

 

 

式神台の上で魔法陣に包まれているニーナの白い背中に手を翳し、ざっと術式を確認する。

 

問題を起こすようなものでは無いが多少術式が歪んでいたので、それを修正する。

 

「アッ・・・」

 

自分という存在の根幹を弄られる感覚に慣れていないのか、ニーナは声をあげる。

 

さらにレベルアップと自動アップデートによって部分最適に陥っている部分を解消して最適化を進める。

 

するとステータスがいくばか向上して成長しやくすくなる。

 

お、スキルスロットが一個できた。

 

それを終わらせると、内蔵スライムの調子を確認する。

 

元気に蠢いているが特に異常は無さそうで少しMAGを与えて可愛がってやる。

 

「♪」

 

内蔵スライムというが要は人間の脳の様な、式神の魂部である。

これを式神ボディに入れて、術式で縛ることで式神としての形を作っている。

 

そして式神ボディの確認を行う。

 

・・・わりとあちこちに問題にならない程度の損傷や回復時の歪みがある。

それを一つづつ、触って撫でてMAGや魔力で干渉して直していく。

 

「うふふ・・・くすぐったいです。」

 

ニーナは目を細めて笑みを浮かべる。

 

一連の工程が終わると式神台を終了させる。

 

ニーナは、起き上がって服を着替える。

 

「ニーナ、ちょっと話していいか?」

 

声をかける。

 

「ハイ、おはなししたいです。」

 

「こっち来てからどんな感じ?」

 

「えっとですね・・・」

 

ニーナは隣でベッドに座り、一つ一つ、あったこと、楽しかったこと、きつかったことをゆっくりと、それでいて明るく話し出す。

 

「そっか・・・

それで、その人、折れちゃって故郷に帰ったのか・・・」

 

「ハイ、

残念でした。」

 

色々な人に借りられて使われた話、優しい人、粗暴な人、うまく育った人もいれば、途中で心折れたり才能限界を迎えてしまった人もいる。

 

そして、話は連中のことに及んだ。

 

「それで、チャーム受けた訳でもないのに、いきなりアイツらの反応が敵になって、抱きついてきたんです、

それで、キスされそうになって、抵抗してたら、転ばされて・・・

そこで、スタッフ保護簡易式神が動いて、外に転送されて、アイツらが捕まったんです。」

 

「辛かったんだな。」

 

珍しく怒り気味にアイツらと呼ぶニーナを見てぽんぽんとニーナの背中を叩きながら呟く。

やっぱり殺そうか、生き返れない様にして

 

「いいえ?別に」

 

きょとんとした顔でニーナは言う。

 

「どっちにしろ、"あるじさま以外は私に何もできない"し、

しようとしてもすぐ捕まったので、いきなり抱きつかれて、無理矢理キスしようとしたり、倒された事が不快なだけ、です。

それより、そのあと、私を借りた人を邪魔するようになって、私が借りられる事が減って、私の役割を果たせなくなった事が辛かったです。」

 

「悪かった。様子を見に来れば良かった。」

 

連絡体制も整ってるし連絡してくれれば良かったのにとも思ったが、未熟な彼女の状況を把握できず、運用環境を整えられなかった自分の責任なので、彼女に文句を言うのはお門違いだ。

 

慌てた様にニーナは言う。

 

「いいえ、そこまでは辛くなかったので連絡しなかっただけです。」

 

「それでもだ。」

 

「それなら、私もあるじさまにアイツらのこと言わなかったせいで、巻き込んでしまって・・・」

 

沈んだ声で言う。

 

「どっちにしろ、あいつらは絡んできただろうし、ああいう連中がいるっていうのは、受付で聞いたから気にしなくていいぞ。」

 

しれっと受付担当のヤツを売る。

一応、今回の件で顔を合わせず済むように連中の位置情報をCOMPに送ってもらえることになっている。

 

「でも・・・」

 

「あいつらが全部悪い。

それでお互い全部良くしよ。」

 

「ハイ、そうですね。」

 

そういうとニーナは少し笑った。

 

「あの・・・」

 

そこで、モジモジとニーナは肩を寄せながら、何かをねだってくる。

 

「良いのか?」

 

「ハイ、あるじさまとするともっと強くなれるし・・・

シたいです。」

 

そして、ニーナと一緒にベットに転がった。

サーニャが見ていることはわかってはいたが、彼女からはそっと背中を押される感覚がした。

 

 

 

 

 

 

医療班愚痴スレ68

 

 

547 名無しの医療班

あの愚患者、ゾンビの代わりに狂人:ジャンキーLv25にでもなるつもりか、

 

548 名無しの医療班

患者の名前隠しても、この時点で患者が誰か分かっちゃうのは草なんだよ。

 

549 名無しの医療班

医療コンプライアンス的にアウトだけど、規模が小さすぎて学会とかやっても医療の知識の共有や拡大速度に限度があるから、

こうやって医療班限定の専用掲示板で症例と治療法のヒントになりそうなものは何でも共有してるんだよなぁ・・・

 

550 名無しの医療班

で、何やったの、

こっそり霊薬使ってた?

 

551 名無しの医療班

いや、アレはとりあえず医者の言うことは聞く、

言ってない事は全力でやろうとするが、

 

それで霊薬じゃなければOKですよね!

と、連続稼働できるようドーピングするからと、科学側の眠くならない薬と、痛み止めで良いのないか聞かれた。

 

552 名無しの医療班

おい。

 

553 名無しの医療班

おい。

 

554 名無しの医療班

痛み止め・・・

市販のロキソ〇ンとかかな?(すっとぼけ)

 

555 名無しの医療班

それは、前世の名前、こっちの世界だと、薬の名前や規制違ってることがあるから気をつけろよ。

おかげで一回医学試験に落ちた・・・

 

556 名無しの医療班

それっぽいのはあるっちゃあるけどそんな理由で処方したら医者としてアウトな奴

 

557 名無しの医療班

>>555

ワイは転生を解明しようと思って現世から医者目指した組だから、その辺のは苦労しなかったな。

転生者富豪に金出してもらって、そのまま転生者富豪がパトロンの医大の転生研究サークルに入った組、

 

そこからサークル全体がガイア連合の医療班に組み込まれたからなぁ・・・

 

まさかここが女神転生世界だとは思わなかった。

 

558 名無しの医療班

それで、処方しなかったよな?

 

559 名無しの医療班

当たり前だ。しっかり自分で変な薬を調達しない様に念も押した。

けど、異界でレベル上げしてる時間を延ばさないといけないから、カフェインと市販の痛み止めでがんばるらしい。

とりあえず、それで数日に一回レベルまで体力系の霊薬使用を抑えるつもりらしいんで、悪魔化という点では問題ないからほっとくことにした。

 

560 名無しの医療班

相変わらず精神力がおかしいなぁ・・・

 

561 名無しの医療班

アレはどっちかってーと、一度走り出して習慣にしたら、それを維持するために理性と社会合意の許す範囲で何でもやりだすタイプだから、精神力が強いって訳でもないと思う、

つまり自分で止まれる強さがない。

 

562 名無しの医療班

あーそれはあるか、

 

563 名無しの医療班

けど、アレ外界に放流しちゃって大丈夫なのか?

アレ、色々ヤバめな研究知ってる技術部の深淵組の一人やろ?

医療班にも移植用式神パーツの量産方法の開発絡みで関わってたし、

 

564 名無しの医療班

アレ、変に人が良いから、頼まれたらいろんな研究手伝ってるから色々知ってるんだよなぁ・・・

ここんとこ、仕事や式神ちゃんの管理が忙しいからあんまりは手伝ってはいないみたいだけど

 

565 名無しの医療班

その分、医療班に迷惑もかけてるけど、

 

566 名無しの医療班

"種"の話は止めろ。

当時は、わりと"種"に関しては医療班としても意見割れてたからなぁ・・・

結局、ガイア連合が健在な限り、レベル上限上げ+生命維持だと普通に専用のシキガミパーツ移植して、一般装備整えた方がいいし、関係者が納得できるレベルの安全性を求めるとコンセプトからして間違ってたということで、研究に関わってたメンバーの中でアレはいち早く離脱したからなぁ・・・

外付けで霊的素質を補って、レベル30まで上げられるデモニカが生まれた今となっては完全に過去の遺物だ。

 

567 名無しの医療班

・・・"種"に関わってたって、アレ、外に出しちゃって良かったの?

 

568 名無しの医療班

技術部深淵組の中では、わりと人の言うこと聞くし、人の話が通じる分マシな部類だと思う。(なお)

 

569 名無しの医療班

せやな。(全く言うことを聞かない技術部のキチ共を思い出しながら)

 

570 名無しの医療班

スキルカードはカードゲームのカードではないですし、

人間はデッキホルダーではないですし、

スキルカードは人間に物理的に挿し込むものではありません!

 

571 名無しの医療班

おい、人工デビルシフターの実験失敗したといって、悪魔とごちゃ混ぜに混ざった本人にこられても困るんだけど、

 

572 名無しの医療班

悪魔を倒す武器の試作品の反動で、どうして使用者本人がこんなに粉々になれるんだ・・・?

 

・・・・・・

 

・・・・

 

・・

 

 

(このあと延々と技術部員への愚痴が続いた。)

 

 

 




インテリ系キチvsDQN系キチ


第二式神製作部、ブラックの構図
降霊キチ「じゃんじゃん式神つくれるぞ!」
部長「関係各所に恩売ってマウント取りたいから、無理にならない程度に依頼受けるけど、
上のこいつ突っ込めばどうにかなってしまうから無理にならない範囲が広すぎぃ!
依頼で無理と嘘ついて生産能力誤魔化そうにも真偽判定魔法使ってくるので誤魔化せない!」



ニーナの身に起こったことについて、本人を含め周りがわりとドライな理由は山梨第三支部編の終わりで明らかになります。
とりあえず知らないのは連中だけで物理的に保護されています。



しかしまさかサーニャが姿隠すとは・・・これが登場人物が勝手に動き出すということなのか・・・
あとなんで、モブ名無し事務員がこんなに動いてるんだろ・・・



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