2~3メートルほどの高さの木から青々とした実が
この場合は真っ青か?が生っているこの不味そうな実こそ
今回の爺ちゃんのお目当て『青ぼんぐり』だ
『今回は何個必要なんだっけ 爺ちゃん?』
何だか渋い顔でこちらを見ている…いやこれ呆れてんな
『ワシ朝に言ったじゃろが』
『ははは…さぁ取ろう取ろう』
ピョンピョンとジャンプして取ろうとすると微妙に届かない
ボングリの木は140~150cmほどの高さに実をつける
この身長がちょうど10歳のトレーナー成りたての子が
飛んで届くぐらいの高さだからね
別名成人の木とも言われたり言われなかったり
『爺ちゃん届かんよ ヘルプヘルプ』
『だから朝に…まぁ良いクヌギダマ助けたれ』
コロコロと爺ちゃんについてきていたクヌギダマが
僕の足元まで来てくれた
そう毎年護衛兼踏み台として手伝ってくれているのが
クヌギダマだ 勝手にクマちゃんと呼んでいる
『ありがとねぇ クマちゃん』
ゴロゴロと低い声で返事をしてくれたクマちゃんに
よいしょと乗らせてもらい青ぼんぐりをもぐ
『5個でええぞ それで十分じゃ』
マジか 簡単な手伝いすぎて真面目に聞いて
サクッとやっとくべきだった…と軽く後悔しつつもぎもぎ
爺ちゃんの持っている籠に入れさせてもらって
工房…兼爺ちゃんの家に帰りながら聞いてみる
『なんですぐに井戸にいるって気づいたの?』
そう今日は井戸での自由時間を稼ぐため
わざわざクマちゃんにはオレンの実を賄賂として送り
ポケセンのジョーイさんには井戸行きを伝えることで
逆に爺ちゃんに連絡するのを黙っていてもらい(優しいからね)
近くの木こりのおっちゃんのカモネギには私の布団で
身代わりをしてもらってお寝坊工作をしておいたのに
(爺ちゃんは家にいるとサボってても何でかぶつぶつ言わんのだ)
『おう布団のカモネギには流石に驚いた…が
ぱたーんが井戸しかないバカ孫の居場所をなぜ誤魔化せると思っとるかがわからんのじゃが』
ガーンだな くそう…カモネギの演技力に期待しすぎたか…
ゴゴゴとクマちゃんに鼻で笑われた気がするが気のせいだろう
『まぁ…ええお前には今日は少し教えたいことがあったんじゃ』
工房に着くとそんなことを爺ちゃんは言った。
『今日取ってきてもらったこのぼんぐり 何に使うか覚えとるか?』
『え~と 真っ青だから~ああるあアクアぼーるでしょ?』
『違う違うルアーボールじゃ』
『あぁそんなんだったね惜しい!』 『惜しくないわい』
『これをおまえに作ってもらいたいそう思ってな』
『僕に?』『そうじゃ』
正直言ってあんまり興味もなかった が断るのもさすがに悪いしどう伝えようかな むむむ…
『ちなみにこのボールはヤドン好みの環きょ』『作る! 作るよ‼ もちろん!』
ひくほどやる気が出てきた あの子たちが喜ぶボール!それなら作りたい!
『おぉ ウレシイぞ…(複雑)』
『では最初に半分に割って…そうそう
…それをくり抜いて あぁそんなに力を入れてはいかんぞ!
…大丈夫じゃ 後4つあるからの
なんやかんやあって木の実を半分にし くり抜いた
頑固一徹そうな爺ちゃんの割には滅茶苦茶教え方が丁寧だった 意外~
『けどこれ生っぽいよ?こんなに柔らかいボールだっけ?』
『まだ乾燥させてないからじゃな そしてこれが乾燥させたものじゃ』
爺ちゃんがスムーズに棚から 乾燥後のボールをスススっと取り出してきた
このジジイ…! 僕のために準備してやがったな!
『さて後はこの中に水ポケモンの喜ぶ食・住を作っていこうかの』
爺ちゃんは桐箱から様々な工具とカラフルな石の様なものを取り出した
『爺ちゃん水は?ヤドンには必須だよ 濡らさないの?』
『ボールがじっとりだと管理が難しいからの
水がなくても良いように工夫がされとるんじゃ』
へぇ~と呟きながら爺ちゃんの手順通りに作業を進めていく
不格好ながらも一応は出来てきたのではなかろうか
『よし後はシルフカンパニー制の開閉装置を』
『え? ここで機械製品?作らないの?』
『良いか?エエ物は良いんじゃ古いから良いのではない』
職人技でそこは作らないんだ…と思ったけど
スクールで法的なきじゅん?とかなんとか決まってるという話もあったような…?
『さて後は少し防腐処理をして乾燥させておくから少し昔話を聞いてもらえんか?』
爺ちゃんが古ぼけた本を取り出してきた ホンットに段取りしっかりしてるし
僕によっぽど聞いてほしかったのだろうか
『今使われているボール達は元は箱だったのはしっとるか?』
『知らなかったー』 ふーんて感じだ箱でどう投げるのだろうか
話し始めた爺ちゃんの後ろからゴロゴロとクマちゃんが転がってきた
…頭の上のお盆にお茶とお菓子をのせて 冷静に見るとこの子テクニシャンだな
『おう ありがとな』 『ありがとねー』
お盆をちゃぶ台に置きゴゴゴと鳴いて庭に転がっていった
庭で待っていたカモネギと今日は遊ぶようだ クェー!
『でだ箱は…
そんな話をヤドンが喜ぶであろうボールができるまでの待ち時間に
お茶菓子を食べつつ扇風機の風がなびく工房で聞き始めるのであった。
読まれている古ぼけた本のタイトルは『鳥獣捕獲玉の書』だ
爺…人間地宝らしい ツンデレ
孫…名前はチエ なんだか変な魂が混じったが
前世の記憶もないヤドン狂い普通の女の子
クマちゃん…高速スピンの横回転をマスターするテクニシャン
彼女の回転にかかれば家事も余裕だ
鴨葱…彼は必死だった『オジイチャン』と呼ぶこともできた
ただし失敗してしまったのだ もう終わった話なのだ
お茶菓子…彼の地の特産を揚げておかきにしたもの甘辛いぞ