~鳥獣捕獲玉の書~ 著ヒスイのコテツ   作:まるまーる

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コテツ編 シンジ湖と鎮め箱 

 

『静まり給え… 静まり給え…』

 

糸を張ったような緊張感

俺たち職人と漁師たちが固唾をのんで見守る中

テンガン山の巫女様方の鎮めの儀式が厳かに行われていた

 

 

事の発端は4日ほど前 

このフタバ村での大事な稼ぎの一つシンジ湖での漁業の際に

独りの漁師が誤ってコイキングの群れに舵を切ってしまった事からだった。

 

何時もならおっと間違えたハハハの笑い話で済んだのだが、この時ばかりはタイミングが悪かった。

群れを船で押しのけたその直後、湖底からたくさんの大きな泡がたえまなく昇ってきたそうだ、突然大きな音と共に湖が裂け大きな龍が現れた!

 

ギャラドスが群れの兄妹たちに会いに来ていたのだろうか、事故だ!と敵意は無いのだ!と示したところで一度怒らせたギャラドスは一月は怒りが静まらないという伝承の通り暴れ狂った。

 

漁師たちは2艘ほど小舟を失ったが不幸中の幸いか誰も欠けずに逃げることができたのだった、そうして辛くも村に戻ってきた彼等は村長に伝え鎮める手筈を整えることとなったのだ。

 

まず怒りを鎮めてもらうために必要な笛の音と舞は幸いにも近くの

コトブキ村に滞在中だった旅巫女の方をお呼びできる事となり

 

次に村総出でギャラドスに謝罪の気持ちを示すために好むであろう食べ物を文字通りかき集めなんとか必要であろう量を集めることができた。

 

 

最期に足りないものそれはギャラドスの『鎮め箱』だった。

 

 

ポケモンは自分の縮尺を変えることができる特性を持つ、そして体を小さくしている間は休息を得る為か気性がおとなしくなりやすい。

それらを利用し彼らの好みの空間を作り荒々しいポケモンを静めつつ長く滞在してもらい交友を深めたり、こういった状況の際に鎮める事を目的とした箱

それが『鎮め箱』だった。

 

 

 

 

職人一家に生まれた次男坊 それが俺コテツであり

普段は村人の家族用の箱しか作らせてもらえなかった俺は不謹慎ながら

こういった作業ができることが楽しみで仕方がなかった。

 

兄と父が唸りながらもその気に成れば飛べるギャラドスの居心地の良い箱とは…

と考えているのを横目に見ながら砕いたボセウと柔らかい砂を混ぜ込んで箱に敷く砂を作っていく。

 

鎮め箱に必要なのは 『絆(交友)』 『食』 『住』 であると考えられており

どれが欠けても彼等を鎮めることはできないと伝えられてきた。

 

『突貫だからと言って中途半端な物をお出しする事は…』

と父が言うが兄の

『緊急なんだ! ギャラドスがいつ周りに被害を及ぼす事か… 早くしないと』

と言う意見もよくわかる、おまけに儀式は箱が出来次第すぐに行うときた。

 

ギスギスとした空気を感じたため

『もっと楽しんで作ろうよ なかなか作れない箱じゃん? この砂もいい感じだしさぁ…』と和ませられるであろう言葉を吐いたのだが

 

『うるせぇ!箱バカ!』と怒鳴られた解せぬ

 

結局悩んでいても仕方ないとコイキングを湖で飼っていた経験のある漁師に話を聞きながらコイキングが好むであろう環境に寄せつつ箱を作る事となった。

 

今回の件は緊急性が高すぎるため 事前に調べることができなかった故の

妥協…らしい この工房の棟梁である父はそう言っていた。

 

そうしてエッチラオッチラト高さ3mほどの箱を10人ほどで神輿の様に担ぎ

半分ほど湖に沈め 準備を整えた上で 儀式が始まった。

 

気配を感じ取ったギャラドスであろう水しぶきが遠くに上がる

怒りを撒き散らしている姿を見て体がすくむ、怒った彼を見ると

箱の完成度が足りているだろうか満足してくれるだろうかという不安が溢れてくる。

 

周りの漁師のおっちゃん達、父や兄もそうだろう

この場で一番どっしりとしているのは間違いなく巫女様であろう

笛を吹いている老巫女様と 舞を踊り続けている少し若めの巫女様

ギャラドスが目の前に辿り着き 大きな咆哮を挙げていかくしても彼女たちは

止まらずただこちらの敵意の無さと友好の意を示し続けていた。

 

どれほどその光景を見ていた事だろう

気づけば曇天の空は晴れており 鮮やかなだいだい色に染め上げられていた、

 

そしてギャラドスが箱の中の食事に気付きこちらを軽く見たかと思うと

8mはあった彼の体躯がシュルリと縮み箱に入って食べ始めたのだった。

 

あぁ良かったと安堵を皆が溢しながら一息つき 一部の者は座り込んだ。

巫女様方は舞をやめ 笛の音を変え うたを唄い始めた、

これまでのは鎮めるためのもので これからのは友好を伝えるものなのだろう

 

ゆったりとした唄を聴きながらこの場にいる誰も彼もが

一つになったかのように分かり合えた気がするそんな時間だった。

 

ギャラドスは一通り落ち着いた頃にこちらを見据えた

何か言いたげな表情に見えたのでとりあえず漁師は謝罪を

巫女からは感謝を そして俺からは『箱どう? 落ち着くか?何なら住めそうか?』と

 

俺からの質問にだけ 不満げな表情で返し 箱に敷いていた砂をこちらにかけてきた。

露骨な奴だ いつか見返してやるからなと少し睨んでしまった。

会話ができれば 不満点を洗えるのだがまったく悔しいものだ。

その後 俺は父と兄にゲンコツを食らい 漁師に怒らせてくれるなと泣かれた、ごめん。

 

それからすぐにギャラドスは離れていった、

大騒ぎになってしまったが一緒に生きていればこういうこともあるものです。

と巫女様がまとめていたのが心に残った出来事であった。

 




コテツ…鎮め箱職人一家の次男坊 箱好き


ボセウ…ヒスイの『ぼんぐり』よくポケモン達が巣の建材にしている

Q鎮め箱使い捨ててええの?

A 儀式で使った場合 そのままにして小型ポケモン達の巣等に使って貰います
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