迷子のマリア   作:naow

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真夜中に人形は良く映えますね。


夜間猟遊

 夜の森に散開した私たちは、各々がカーラお手製の魔導バイザー……怪しげグラサンを着用している。

 探知・探査魔法等の発動サポートや遠隔通信など便利機能満載の、見た目と違ってなかなかに有用なアイテムである。

 そう、コレは私がこの大陸にダイレクトアタック、もとい突入した際にも身に着けていたアレの、改良&軽量版だ。

 

 有れば便利なので、半分冗談でカーラに言ってみたら本当に出てきた。

 

 この調子で色々と便利な魔法道具を作り、ゆくゆくは大百科でも編纂すれば良いのではなかろうか。

 

「マリアちゃーん、こっちはもうすぐ着くよぉ? 先に始めちゃって良いかなぁ?」

 

 のんびりした口調が、イヤホンから流れてくる。

 風切り音はカットしているのだろうが、エマのことだ。

 

 どうせ全速力で目標まで一直線だったのだろう。

 

「構いません。ただし、火系統の魔法の使用には細心の注意をお願いします。山火事などは洒落になりませんからね」

 

 私は全員に回線を開き、その上でエマに返答する。

 エマへの返答に乗じて重要な事についての連絡をしている……風に見えたら格好も付くのだろうが、何のことはない、エマが全回線オープン状態で私個人に語りかけてきたので、そのまま返事しただけである。

 

 エマにはもうちょっと、操作法を教えたほうが良かったかも知れない。

 

「エマちゃんはやっぱり速いなあ。っと、私ももうちょっとで接敵かな。死体は()っといて良いのか?」

 

 全回線が開いているのに乗じて、アリスが報告とも付かないことに加えて疑問を放ってきた。

 誰が傍受している訳でもないが、緊張感の無いことである。

 

 とは言え、その疑問は看過して良いものか、確かに迷う。

 

(ほう)っておいて、後々魔獣を呼び寄せたり、何かの間違いでアンデッド化されても厄介ですね。とは言え、燃やすにしても気を使います。取り敢えずは放置しつつ、処理については後々――」

「待て、マリア。それについては私に考えがある。手伝いは欲しいが、それも後で良い。先ずは賊共を蹴散らすぞ。皆も、出来るだけ綺麗に殺してくれ」

 

 気は進まないが、後々処理して回るしか無いか、そう思った所で、カーラが割り込んできた。

 多方向同時通話とか、カーラのくせになかなかの代物を作ったものである。

 しかも、死体処理に関して考えがあるというのなら、任せてしまうのが良いだろう。

 

 どうした? カーラ。

 今日は無駄に有能感が出ているではないか。

 

「了解しました。では、その件については後ほど。各々の健闘を祈ります」

 

 私は短く応えると、回線を閉じた。

 別に開いていても問題無いとは思うのだが……戦闘中にエマの笑い声が聞こえてきたりしたら、背筋が冷えて仕方がない。

 

 私は障害物となり得る木々と、カーラの指示――出来るだけ綺麗に処理する事――を考え、本日の得物はスティレット……ここは敢えてミセリコルデと呼ぶことにして、それを一振りづつ両手に構える。

 

 私の行く手に当たる賊の一団は、暗闇の中、何やら暗視装置のようなものを頭部に装着している。

 ただの賊とは思えないその姿に、私は溜息と笑みが溢れる。

 

「偽装する必要も無いほど、作戦に自信があるのは……今までの成功体験ですかね? 今回ばかりは相手が悪かったと諦めて頂くしか無いですが」

 

 元々人形の目には、漆黒の森も昼の草原と変わりはない。

 それに加えてカーラお手製の索敵ガジェットまで装備しているのだ。

 

 見えない筈の物陰の存在までもが、ハッキリと感知出来ている。

 

 風を斬るような速さでその一団に肉薄した私は、微かな物音に反応して振り向いた個体の喉元に深々と慈悲の刃(ミセリコルデ)を突き立てた。

 元々軽装な相手に、こちらは人形の怪力である。

 どこでも刺し放題では有るが、無駄に苦しませる必要も無い。

 

 頸骨を粉砕された出来立ての死体がバランスを崩し倒れゆくのを置き去りに、私は次の獲物に襲いかかる。

 

 この広い森のそこかしこで、戦闘とも呼べない虐殺が幕を上げた。

 

 

 

 真っ直ぐに行って突く。

 最短で移動して刺す。

 それだけの単純な作業は、同じレベルの者であれば対応は容易だっただろう。

 ただ残念なことに、私は彼らよりも強く、速かった。

 

 どう動くかが判った所で、反応出来なければどうしようもない。

 

 私は死体の群れを見下ろしながら、周囲に索敵の魔法を走らせる。

 

 各々が簡単に行われたエリア分けに従い、そのエリア内に居る賊や賊に扮した何処ぞの兵を殲滅して行く。

 作戦とも呼べないそれは、特に何に妨げられる事もなく、着々と進んでいく。

 

 ……エマのエリアはそういった敵の反応が一番多かった筈なのだが、一番進捗が速いのはどういう理屈なのか。

 

 溜息を置き土産に、私もまた次の獲物の集団へと走るのだった。

 

 

 

 それぞれの「隊」の員数は多くはなかったが、「隊」そのものは多数分布している状況だった。

 中には普通の……何の変哲もないただの野盗の群れなども混じっていたが、今となってはそのどれも稼働していない。

 

 稼働していないとはつまり……まあ、そういう事だ。

 

 数によっては時間が掛かると思っていたが、主に狂戦士が大暴れした影響で、思ったよりも早く終わってしまった。

 で、そんな状況で私が何をしているかと言えば、適当に拓けた場所に、適当に大穴を掘ったところだ。

 

 エマほどではないが、私も爆破の魔法程度は使えるのだ。

 

 その上で、何をしているのかと重ねて問われたならば、カーラを待っている、と答えるしか無い。

 死体処理に関して考えがある、というカーラに任せた私だったが、その提案は少しばかり意外だった。

 

 カーラの意図を読めなかった、或いは読みきれなかったエマはどうやらいつも通りに損壊した死体を量産してしまった様子だが、私とアリスは良く理解(わか)らないながらも、製造した死体は五体満足である。

 首の骨が折れてブラブラしているのは幾つか有るが。

 

「エマの方は、悪いがアリスも手伝ってくれ。それ以外のモノは、私が運ぶ」

「……」

 

 カーラの指示に対して無言を返したアリスの表情まで見える気がしたが、下手に笑って私までお鉢が回ってきては堪らない。

 そんな訳で死体焼却用の穴を深く掘った私だが、カーラの運搬法までは想像が及んでいなかった。

 

 まあ、どうせ作っていた人形総動員で運ぶのだろう、新作のお披露目も出来る訳だし、確か同時に40体は操作できると豪語していたし。

 そう思って静かに待つ私の前に、闇を割って現れたのモノは。

 

 歩く死体の群れだった。




ここに来てジャンルが変わるのでしょうか?
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