迷子のマリア   作:naow

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自分の行動は、しっかりと選んで行きましょう。


28 選択肢

 カンタとケイトが拠点としている街は、北東へ徒歩でおよそ3日の距離だという。

 当然の様に行動を共にしようとする2人、特にカンタの様子に、私はげんなり顔で待ったを掛ける。

 2人がどう思おうが、私は1人で旅を続ける。

 その意志に揺るぎはない。

 そう告げたのに諦めの悪いカンタに、「貴方が気持ち悪いので無理です」と優しくはっきりと告げて、私は1人で歩き出した。

 

 ごく短期的な目的で言えば、この2人と出会った時点で達せられているに等しかった。

 トレイン――敵性存在の群れを引き連れて爆走するような輩が、戦闘に乗じて逃げない訳が無いと思っていたし、そもそも助けたかったと言う気持ちはあんまり厚くない。

 

 魔力操作の修練の成果も確認してみたかったのだが、そちらが全然出来ていないのは完全に誤算だったが。

 

 ともあれ、私としてはそう言う事情なので、最初からこの2人に興味など無いし、当然仲良くなろうとも思っていない。

 ついでに言えば、街に立ち寄るのも観光目的以上の意味は無いので、急ぐ理由がそれほど無い。

 手持ちの路銀はまだ余裕が有るし、食料についても同様だ。

 肉類は狩りで賄える訳だし。

 寝床ですら持ち歩く私は、街の宿を使うこともないのだし。

 

 そもそも旅の目的が物見遊山の気楽な世界観光に等しいのだし、そんな調子で旅を続けていたら、いつかはカンタが拠点にする街に立ち寄ることも有るかも知れない。

 その時には、カンタに会わずに済むように、祈っておくとしよう。

 

 話してみた感じでは、カンタは反省なんかしていない様子だし、ケイトは注意こそするものの手綱を握れていない。

 いつかまた、似たようなことをやらかすだろう。

 その時には冒険者登録を抹消されるか、それとも次は逃げ切れずに犠牲となるか。

 

 ……いずれにせよ、二度と会うことは無さそうだ。

 

 カンタを止めながら、自身も何処か残念そうなケイト。

 その様子を見て、別れることにして本当に良かったと思いながら、私は振り返りもせずに歩く。

 

 

 

 念の為、予定していた進路を大きく変えて、かつ、尾行を警戒して周囲に探査魔法を定期的に走らせながら。

 結果で言えば、ケイトは私が思ったよりかは常識人であったらしく、ちゃんとカンタを押し留めてくれたらしい。

 

 それからはだいぶ迂回して、地図で見ていた大きな池の畔に立ち、思った以上の大きさに自分の想像力の貧困さに衝撃を受けたり。

 池の向こうに沈む夕日が見たい、と、良さそうなロケーションを探して池の周囲を移動し、思っていた以上の景色を目にして(ガラ)にもなく感動してみたり。

 

 ゆっくり時間を掛けて移動して、カンタの居るであろう街を眺める位置まで来たのは、あの2人と別れて2週間程過ぎた後のことだった。

 

 当然立ち寄る意志は無いので、道行く旅人や冒険者に幾らか奇異の目を向けられつつも、私は街を迂回する道を西に進む。

 小さな街で、魔獣除けの防壁も一応有る、程度のものでしか無い。

 だが、逆に言えばこの周辺にはあれで間に合う程度の魔獣しか居ないと言うことなのだろう。

 

 南門から街を迂回して、のんびり1時間弱程度歩いた所で西門前に到着し、思ったよりも小さい街なのかも知れないと思いながら、更に北方向へと伸びる道と、西へ伸びる道、それぞれを交互に眺める。

 取り敢えずの目的は北だった訳だが、若干東に寄ってしまった様で、少し軌道修正を兼ねて西に出るか。

 それとも、そもそもが宛のある旅でもなし、このまま北に向かうか。

 

 東に出るのは……せめてもう少し北上してから、と思う。聖教国の野望は大きいが世界への進出は遅く、まだ周辺数カ国に影響を与え始めている、程度のモノらしい。

 まあ、そんなに容易く広がるものでも無いだろう。

 

 地球の歴史で思い返して見ても、一つの宗教を拡げようとするのは並大抵の事ではない。

 その土地に根付く信仰を押さえつけ、消し去り、弾圧して、上書きする。

 或いは、土着の信仰に寄り添うフリをして取り込み、全ては同じ教えの中に有ったんですよ、なんて言いながらその根を広げる。

 

 どちらを選んでも、必要な時間も、掛かる手間暇も膨大だ。

 途中で大きな不祥事でも起こしてしまえば、計画は大きく後退どころか、下手すれば地域から完全に敵対され兼ねない。

 

 もう、考えるだけでも面倒臭い。

 

 そんな事業に手を出して邁進していると言うのだから、まあ、頑張れとしか言い様がない。

 宗教的な側面からの浸透は、そんな感じでじんわりと進みつつある、という段階らしいが、私が近寄り難く思うのは、特にそれ以外の部分で、だ。

 ()(かく)、私が好もうが避けようが、現状ではそれほど表向きの権力(ちから)は持っていないのだから、近寄り過ぎなければ問題にはならない筈だ。

 

 考えただけでげんなりしてしまうソレから思考を逸らし、私は西の彼方へと視線を固定する。

 

 ベルネを出て、ぼちぼち2ヶ月に届こうかという所か。

 聖教国と違い、特に情報もなく、活況を取り戻したと言う話は耳にするのに、そこへと伸びる霊脈は只管(ひたすら)に不気味な静けさを放つ、古い交易の街――アルバレイン。

 探ってみても、何やら騒がしい双子冒険者の話が目を引く程度の、しかし特に大きく目立つ訳でもなく、理由もなく私の心に引っ掛かった、その程度の、良く有る街、である筈の。

 

 実の所、かの街にはいつか訪れてみたいとは思う。

 

 思うがしかし、急いではいけない、そんな気がする。

 その街からも必然、今は大きく離れている。

 どちらに出ても、そろそろ問題は無い気がする。

 それでも東に出るくらいなら、大きく西を回って、それから北に出るのも有りだろう。

 

 ――この時の私は、聖教国に嫌悪を(いだ)き過ぎていた。

 だから、東に行きたくないのだと思いこんでいたのだ。

 

 ――西に、引き寄せられているのだなどと、気付く事も出来なかった。




選んだ心算(つもり)で選ばされていた。良く有る話です。
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