コトノコーヒー 姉の呟き   作:みえふぁ

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知ったような顔してやりましょう

基本的に気楽な仕事だけど、最近はやっぱり落ち着いていられない忙しさだ。休みの前に向けてコーヒーの発注を多めにしたはずなのに、在庫がなくなりそうになっている。今までの数字を参考に、十分だと判断して発注しているので、それはつまり、だんだんとお客さんが増えているということなので喜ばしいはずなんやけど、喜んでいる暇もない。ウソ、喜んでる暇くらいはあるので、やっぱり気楽な仕事だ。

 

しかし、こうも予定が狂うと、また発注をしなきゃならなくなる。せっかく仕入れるなら、別の面白そうな豆にしたい。すると予算への意識とか感覚なんかがウチも葵も狂ってきて、お値段気にせず次から次へと発注となる。バンバン仕入れてバンバン売れて、さぞ儲かってるんでしょう?と言いたくなるかもしれませんけど、出入りが激しいばっかりで、見た感じ出てそうな利益には程遠いのが現状です。ちゃんと計画性もって経営してたらこんな風にもならんのやろうけど、ウチも葵も超楽しいので良しとする。言うても普段より利益は出てるし、休みになんか美味しいもん食べに行こかーって話が出てる。第一候補は牡蠣となっております。

 

そんなこんなで仕入れまくってるうちの一つにまた面白い豆がありまして、紅茶みたいな味がするやつだ。何を馬鹿なと思われるかもしれませんけど、苦味がほとんど無くて、後味がホントに紅茶みたいなのだ。色もコーヒーのわりにえらい薄かった。葵曰く、甘いコーヒーの実を発酵のときになんやらしているらしい(コーヒーの実って甘いんですって、知ってました?ウチは知らんかった)。こんなもんコーヒーちゃう!って思う人もおるかもやけど、なかなか面白い味なのでおすすめです。

 

そういや、妹からいつかに聞いた話にやけど、邪道邪道言われて評価されてなかった製法があったけど、その作り方ってことを隠したコーヒーが幾つか品評会で入賞したら周りが手のひら返してどんどん売りだして、結構な流行になったってことがあるらしい。コーヒーの世界でそんなロマン溢れる話があるんやなあと思った記憶がある。今回の紅茶っぽいのはそんな冷遇されてるんかは知らんけど、後で「私は知ってたし認めてましたよ」って面するためにも、おひとつ、どうでしょうか?

 

ちなみに、これのサンプルの試飲するときに例のアホが遊びに来ていた。雪の降る中傘もさしてなかったのか、頭に雪が積もっていたのは流石というべきか。髪の色のせいで雪がそれほど目立ってなくて気づくのに遅れてしまい、注意する前にダッシュしおったせいで店内に雪がまき散らされた。でもまあせっかく来たならと葵が誘ったんで、サンプルをこいつとも一緒に飲むことになったのである。そしたら「変な味!」と葵の手前言いやがったので、クソ長い髪を思いっきり引っ張ってやった。葵が笑っていたのでそれで許してやる。 そうそうこいつ、意外とコーヒーを飲みやがるのだ。自堕落な生活してるわりに実家が裕福なやつなのである、舌が肥えている。さっきも変な味とか言ったが、見当違いなことは言わない。ただ語彙力が致命的なので、漠然とした感想を言って、それを葵に言語化してもらって、これウチと同じちゃうか?うっわ、嫌なことに気づいてしまった。

 

お店と関係ない完全な余談になるけど、当然我が家は年中コーヒーだ。けど昨日安くなってたのでついついリンゴを買ってしまった。まるでコーヒーには合わないし、リンゴ3個は2人で食べ切るにはまあまあ気合いが入りそうである。おすそ分けするにしてもおつとめ品やしな…。


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