コトノコーヒー 姉の呟き   作:みえふぁ

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いくらでもどうぞ

あいつが店からおらんくなって、また二人に戻って数日経った。あれでも一応友人なんで、しばらく一緒に生活して仕事してきたわけやから多少の物悲しさみたいなもんは感じると思ってた。しかしこれが、びっくりするほど寂しくないのだ。下らん話振ろうとして「あ、そっかおらんのやった」ってなることはあるけど、それだってすぐに流せるもので。「あの貰い物の洗剤効き目良かったのに使い切っちゃったか」ぐらいのものである。無くなって初めの頃はちょっと不便に感じるけど、またもとの安い洗剤に戻るものだ。ましてやあいつはそこまでプラスなことばっかりってわけでもなかったんで、なおのことなんやろうな。まあそんなわけなんで、またいつも通りのコトノコーヒーで行きたいと思います。葵は疲れから解放されたって顔してたんで、ちょっと申し訳ないことをしたかな。こっからやれるだけ挽回してかなあかんな。

 

とか思ってたら、なんと今日いらっしゃったお客さん、変な店員が増えてるってのをブログで知って、一目見ようとわざわざ遠方から足を運んでくださった人なのである。これはもう、とんでもなく申し訳ない話だ。何が申し訳ないって、まずあの見る価値なんてありゃしないアホを見物する気にさせてしまったっていうのと、肝心のあいつがもういないということだ。この人は遠くに住んでるけど定期的にお店に来てくれる方で、ちょっと前に来たばっかりだったんで、お店に入ってきたときは何かあったのかと思った。そしたらそんな事情だったなんて。別に大した価値のある人間でもないあれの存在を書いてしまったのが間違いやったんやろか。

 

一応このブログを始めた目的は、お店側として発信できるならしといたほうがええんやろうなっていうのと、お客さんとのコミュニケーションの助けになりゃええなってものだった。んでやってて気づいてきたのが、こうやって親近感みたいなのを覚えてもらうことで「ちょっと寄ってあの店で買っていってやろうか」と思ってもらえてるんじゃなかろうか、というものだ。単純に商売の話をするなら通販で買ってもらえれば差はないんやけど、やっぱ少しでもお店に来てくれるお客さんが増えるっていうのは嬉しいのだ。嬉しいんやけど、今回はどうやらそれが裏目に出たみたいである。

 

お世辞にも便利な場所にあるとは言えないんですけど、それでもお店の雰囲気なんかには結構自信があるのだ。忙しい時期じゃなけりゃだいたい席は常に一つは空いてるんで、三時間でも四時間でも居座っていただいて構いませんから、ぜひ一度来てみてください。まあ、あんまりのんびりしすぎてコーヒー冷ましたり氷が溶けきっちゃったりしようもんなら、カウンターの向こうからあの子のじとーっとした目が向けられるんで、ほどほどにね。


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