ホントについさっきの話なんやけど、葵と一緒に商社さんのリストを覗いてまして。これもう無くなるなーとかこれ欲しいなーとか言いながら見てたら、葵が隣で急に「あっ!」と声を上げた。何事かと思ったら、どうも興奮した様子でリストに書かれてる一つを指さして「これ、これ」と繰り返す。何かあるっぽいけど何の心当たりもないし、思い出そうと考えてもわからない。葵が落ち着くの待ちながらその豆の名前とにらめっこしてたら、冷静になった葵が説明をしてくれた。
この豆はある農園の質の良いブレンドだそうだ。農園の名前は忘れたんで後で確認しておきます。いや明日休みやん二日も覚えてられへんわ。どっかにメモしておきます。話を戻しまして、このブレンドは質の高さにこだわってるらしく、その年のコーヒーの出来が悪かったら、そもそも出さないってことまであると言う。そんで、その売りに出さなかった年っていうのが丁度去年だったそうだ。正確には売り始めから日本で出回るまで時間差があるけど、とにかく去年の今頃には商社さんのリストに載ってなかったものみたいです。つまりその名前をウチが最後に見たのは、少なくとも一昨年の今頃だったということだ。心当たりがないわけである。あの頃といえば、店始めたてでてんやわんやしてて、とてもじゃないけどあんな言いにくい覚えにくいなコーヒーの名前なんて記憶していない。
質にこだわってるだけあって評判はいいものらしくて、その場で即商社さんのほうにメールを送った。こういう人気っぽいもんはとっとと注文しないとすーぐ他のお店に取られちゃって無くなるんで早い方がいいのだ。この調子だと今月は予算オーバー待ったなしやけど、まあええやろ。届くのは遅くて来月かって感じ。若干高めな気はせんでもないけど、葵の興奮っぷりと発注までの躊躇のなさ的に値段相応かそれ以上なはずだ。いや、葵が発注かけるのに躊躇するのは稀やな。
さすがに喫茶店では、そんな「スープの出来に満足いかなかったので本日は営業しません」みたいな、こだわりのあるラーメン屋みたいなことする店はほぼないと思うし、コトノコーヒーだってやらない。焙煎機も調子悪くなっちゃったときはあったけど致命的なものではなかったし。いや、たぶんあのときでも、葵が「こんな焙煎した豆をお客さんに出すなんてできない!」って言ったらその時点でその日の営業はなしになるな。どうやろ、お菓子と紅茶だけでつなげるか?そうなるとウチに慣れやんプレッシャーがかかることになるし、やっぱ営業なしかなあ。