コトノコーヒー 姉の呟き   作:みえふぁ

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好みはあるけど

二つ目のブレンドコーヒーが出来上がったそうです。まだ微調整とか配分のちゃんとした把握とかするみたいやけど、大枠は完成したって感じ。酸味があってスッキリって味らしいかったんで自分は遠慮してたし、実際ホットで一口飲ませてもらったんやけど、得意な味ではなかった。ところが次に葵がドヤ顔で持ってきたアイスとカフェオレがめちゃくちゃにおいしかったのだ。

 

これは葵の狙い通りらしくって、そういう味はホットやと苦手やなーって人のために、別の飲み方をしたらおいしく飲めるように作ったんだと。豆の何をどうしたらそんな風になるんかはまるで分からんけど、これ作るのにはだいぶ悪戦苦闘してたんで、きっとすんごいことなのだろう。いや知らんのやけど、姉としては妹を褒めるべき場面なはずだ。実際おいしかったんやし。メニューに載るのは三日後ぐらいになりそうです。葵はこの時期のうちに間に合ってよかったと安心してた。値段も全然お手頃なんで、酸味が得意な人も苦手な人も、よかったらぜひ。

 

ちょっと話が変わるけど、苦手な味うんぬんで言えば葵は辛いのが苦手である。うちで作るカレーは基本甘口で、ウチは自分の分にだけ後からそれ用のスパイスとかをかけて食べてる。まあ辛いものは避けようと思えばいくらでも避けられるけど、どうやっても避けられないものもありまして。あの子、お弁当によく入っとるカリカリしてるタイプの梅干しが苦手なのだ。

 

もったいないけど残せばええやんと見てて思うし口にも出すんやけど、あの子は何がなんでも食べきろうとする。なんかよくわからんけど昔からそういう子だった。料理についてきた薬味とか計画的に使っていって最後には少しも残さない。多少苦手でも頑張って食べようとする。いや普通にえらいんやけど、皿の端に寄せて最後には親に食べてもらってたウチなんかよりよっぽどいい子なんやけど、それでもあんなすごい形相で梅干し食べようとしてる姿を見るたびに「やめとけば?」と言ってしまうのだ。で、見事食べ終わったあとに「誰もが好きだと思ってお弁当の定番みたいな位置にいやがって」みたいな愚痴をひとしきり言って終了である。あ、葵はこんな口悪くないですからね。だいたいの意味は同じなはずやけど。

 

私はコーヒーに強い興味はなかったけど、「あんなもん飲めたもんじゃない」って感覚持って生まれなかったことは、たぶん幸せなことなんやと思う。もし全コーヒーが苦手やったら今こんなことできてないやろうし、もっと言えば学生の頃だって、葵の趣味に付き合ってやれなかったかもしれないのだ。人並やけど、味もわかっておいしいとも思えるっていうのは、案外良いことなんかな。

 


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