コトノコーヒー 姉の呟き   作:みえふぁ

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喜ばせてやりましょう

マグカップ割っちゃってからそのまんまだったんで、この前買い物行った時にようやく新しいのを買うことにした。葵にどんな物が良いとかあるんか聞いたら「それっぽかったらいいんじゃない?」と言われてしまった。相変わらずこだわる所はとことんこだわるけど、さほど興味無い部分は急に適当になる子である。せっかく新しく買うんやからってことでちょい高めのカップを買っていおいた。これはすぐに割らんようにせなあかんな。中学生の頃買って気に入ってたグラスを母親が洗い物中に割っちゃったときなんかショックすごかったし。あと白いマグカップなんで、使ったらとっとと洗うようにしないといけない。さっさと洗わなあかんと分かっててもついつい先延ばしにしちゃって、底の方に汚れがついちゃうのである。

 

それとこの前のブログを書いた後、葵に淹れてもらったときに「マスター、これおいしいね」みたいなことを言ってみたら、まさかの鼻で笑われた。ちょっと茶化した風に言ったのは事実やけど、葵に鼻で笑われるとは思ってもみなかった。「はいはいありがとうね」みたいに続けてたけど、ちょっと呆然としてしまった。

 

お客さんからも読んでもらってた人から「マスター」って何回か呼んでもらえた。初めのうちは気分良かったけど途中から何かしっくり来やんなあと感じ始めたんで、やっぱりウチはそっち側の人間ではないのかな。その場にいた人なら見ればわかったと思うけど、葵は「やめてくださいよー」とか言いながらもずっとニマニマしてたんでマスター呼ばれの適性があるらしい。いや、適性のある人間は嬉しそうな反応はせずに微笑んで軽く会釈するような、堂々とした態度じゃないとあかんか。どうやら琴葉姉妹にマスターは似合わないみたいである。しかしああもマスターと呼ばれて嬉しさ隠しきれてない葵を見せられると、鼻で笑われたあんときのウチとの扱いの差を感じずにはいられない。いやお客さんなんやから鼻で笑うとか絶対アウトなんやけど、やっぱウチにももうちょっといい反応くれてもよかったんじゃなかろうか。

 

まあ葵をニマニマさせる方法自体はもっと簡単なのがあって、淹れてもらったコーヒー飲んで「これおいしいなあ」と言えばいいのだ。あの子の自信のあるものであれば尚良しである。ウチはもう好みを把握されちゃってるんで嘘ついてもバレるけど、葵がウチの好みか判断しかねてるコーヒーにおいしいって言ってあげればそれはもう喜んでくれる。あれ?ならウチの「マスター、これおいしいね」は完璧やったんちゃうか?おっかしいな…。


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