コトノコーヒー 姉の呟き   作:みえふぁ

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丸かじり

昨日の休みにウチが買い物から帰ってきたら、葵がキッチンで残ってたリンゴを丸かじりしてた。なんでも「一度やってみたかった」らしい。何となくわからんでもないけどようやるなあとか思って眺めてたら「お姉ちゃんも一口いく?」とリンゴを差し出された。口元ベッタベタの妹に半分ぐらいかじられてるリンゴを差し出されたからさすがの私もちょっと怯んだけど、せっかくならってことで一口いかせてもらった。うん、果汁とか甘味が口いっぱいに広がっておいしかったです。でも一口いっただけで口の周りベッタベタになったし、家庭によってはわりと普通にやるらしいけど、あれを丸々一つ分する気にはなれやんなあ。

 

んでウチはそれで満足したんで残りの買ったものを車から持ってこようと外に出たら、ちょっと離れたとこに紫ちゃんの背中が見えたもんで声をかけた。どっかこのへんに用事でもあったんやろうかと思ったら、うちを目当てに来てくれてたらしい。珍しく学校が早く終わったんで、せっかくなら普段来ない曜日にってことで帰りに寄ってきてくれたというのだ。しかし昨日は水曜日、定休日ゆえに当然コトノコーヒーは営業していない。そのことが頭からすっぽ抜けてて、着いてから休みってことに気が付いて帰ろうとしてるところだったみたいだった。

 

せっかく来てくれたわけやし、お店動かすのはあれやけど、部屋で普通で飲ませてあげるぐらいはできるかな?と思って、じゃあちょっと飲んでく?って提案をした。紫ちゃんも顔を明るくしてくれて、葵が今どんな状態か忘れて、家へご案内したわけである。そのまま部屋へ入って私たちは、キッチンでリンゴにかぶりつく葵を目にした。ここでウチはやらかしたのを理解した。醜態とまではいかんけど、口元汚して片手にかじりかけのリンゴを持ってる姿は、常連さんに見せるものとしてはさすがにみっともない。でも肝心の葵はと言うと、ウチの後ろの紫ちゃんに気づくと、手を振って「どーもー」と普通に挨拶をする。あの子は全然平気らしい。紫ちゃんも気にせず平然と返してた。恥ずかしくなってるのはウチだけらしかった。

 

イマイチ状況を理解できないウチと放置された残りわずかなリンゴを置きざりにして、二人はコーヒーの話で盛り上がりながら淹れる準備を始めた。ここでつっこんでもしゃーないと判断して、一応ウチも手伝える範囲で手伝った。ウチはなんか釈然としやんだけど、二人とも楽しそうやったし嬉しそうやったし、良かったんだと思う。あ、さすがに売り物は出せやんから、普段葵が個人的に飲んでるものを淹れて飲んだ。これは別のお店で買ったものだったりする。あの子はえらい気に入ってたんで、また仕入れられそうなら買うかもしれません。

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