コトノコーヒー 姉の呟き   作:みえふぁ

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淹れてみた

昨日お店を閉めてから、葵が買いたいものがあるとかで出てっちゃって、家に一人だけになった。一人なこと自体は別に珍しいことでもないんやけど、昨日は仕事終わりやのに妙に元気が有り余ってた。でもこんなときは葵に意味のないウザ絡みをするのが定番のはずが、その葵がいないのである。スマホ見ながらゴロゴロする気にはなれやんし、かといって仕事をするかと言われるとそれは違う。絶対に違う。なんかないもんかと部屋をウロウロしてたら、ふとコーヒーのドリッパーが目に留まって「これや!」ってなって、自分一人でコーヒーを淹れてみることにしたというわけだ。

 

流石に焙煎からは面倒なんで、とりあえず挽くところからスタートだ。葵は焙煎から始めることもあるけど、さすがにそこまでやる気にはなれなかった。ミルは手回しじゃなくて電動のものです。一応我が家には電動と手回しの両方が置いてあって、葵はそんときの気分で決めてるっぽい。一回飲み比べとかしたことあるけど、少なくともウチには違いはわからなかった。葵はなんかあるっぽい反応してた気がするけど、とりあえずウチみたいな素人は楽ちんな電動一択でいいと思う。豆投入してセットしてボタン押せばいいんやし。

 

んでお湯の注ぎ方やけど、これが全然知識がない。なんか最初に蒸らすらしいっていうどっかで聞いた情報と、あとは葵の見様見真似でやってみた。なんかそれっぽく繊細な雰囲気出してやればええやろ!って感じでやってたけど、たぶんまるでなってない注ぎ方してたと思う。途中、目を瞑りながらの方がそれっぽいかなとか考えたけど、お湯をこぼす未来が見えたんでやめておいた。あ、お湯の温度はよくわからんけど熱すぎやん程度にしたつもりだ。とにかくよくわかってない。

 

そうやって出来上がったコーヒーのお味はというと、うん、まあおいしい。ていうか豆がちゃんとしたものやからウチが淹れたところでおいしいのだ。ただ、葵が淹れたコーヒーと比べてなんか足らん気がするんで、やっぱり淹れる腕っていうのは大事なんだろう。なんやろう、味のわかりやすさというか、シンプルさというか、そんなのが足りないと思う。あかんわ、ウチだけの語彙力じゃ感想をロクに言語化できやん。普段妹の翻訳に頼ってたツケが回ってきちゃったか。まあなんにしても、葵の淹れるコーヒーはウチのとは別物だった。普段からあの子に淹れてもらってるのって、もしかしたら結構恵まれてることなんかもなあ。


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