コトノコーヒー 姉の呟き   作:みえふぁ

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せっかくの機会

最近、在庫の減りが全体的に早くなってきている。上がるにしたってもっと気づかんぐらいじわじわっとか、何かがきっかけ(主に休み)でばーんと上がるのがほとんどだった。でも今回のはなんかこう、良い感じに順調に上がってきてるのだ。喜ばしいことなはずなんやけど、こーゆー変化は初めてなだけにちょっと怖くなってる。通販ばっか伸びててお店の顔ぶれや人数はさほど変わってないのも変な怖さを感じる原因かもしれない。発注する量は増えてるけど、そこで見る数字と、お店のいつも通り感のギャップがありすぎるのか。

 

いつも通りといえば、この前金髪ちゃんがいつも通りじゃないものを飲んでいた。あの子のいつものはホイップカフェオレである。他の食べ物はともかく、飲み物は本当にそれしか注文しない。ウチはわりとその気持ちが分かる。なにせこのコトノコーヒー、コーヒーの種類が多い。しかも名前が意味わからんカタカナだらけで見ててもさっぱりだ。その上、一部コロコロ変わるんだから、コーヒーに大して興味のない一般人としては、とりあえず間違いなさそうなそれが定番になるっていうのは、結構自然なことなのだ。まあ初見でホイップカフェオレとかいう見たことない名前のもんをメニューから選ぶのが、安定した選択肢になるのかはわからんけど。

 

そんな彼女が珍しくメニューとにらめっこしてたもんやから、気になって声をかけた。別に何ってなくっても手空いてたら声はかけるんやけど。そしたら「今日はコーヒーを飲んでみる」と言ったから驚きである。隣の友達のコーヒーを一口いただいてる程度の光景も見たことなかったから、コーヒーにそもそも大して興味ないんやと思ってた。なんでも紫ちゃんから「あの店に通っておいてコーヒー飲まないのはもったいない」と言われて、それなら一回試しにってことらしい。納得である。美味しい牛肉専門店でコロッケばっかり買う的なことやろか。いやあれはあれで結構おいしいけどな。

 

しかし、それならわけわからんメニュー見続けやんでも、隣の紫ちゃんに助けてもらえばさっさと注文も決まりそうなものだ。実際紫ちゃん隣でずっとそわそわしてたし。そのへんのワケも聞いたら、どうもここに来るまでの道で色々聞かされたらしくって、それにちょっとうんざりした金髪ちゃんが「自分で決めるから!」と言い放ったそう。ウチも昔葵と似たようなことがあったのを思い出しちゃって、思わず笑ってしまった。頑張れ紫ちゃん。そのうち葵みたいに喋り倒せる相手を選んで喋れるようになるから。

 

結局、金髪ちゃんはちょい高めぐらいのを飲んでいた。多少値が張るけど、クセがあっても苦手とまではなりにくいから、こういうときにちょっと奮発するのはわりと大事、とは葵の言葉です。それと似たようなことを紫ちゃんから聞いてたらしくって、なんやかんやお互い良い友達持っとるんやなあ、羨ましい。


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