コトノコーヒー 姉の呟き   作:みえふぁ

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冬眠に備えて

休み前ということで、いつもより多めに買って帰るお客さんが多い。2袋に増えるとかならまだしも、5袋とか6袋とか買っていく人はどんだけ飲んでるんやろ。いやさすがに贈り物用のも含まれとるんか...?でもそうやっていくつも買っていく人に限って、買った分全部飲みますって言っても不思議じゃない人ばっかりやから判断に困る。まあ店側としては黙って渡しときゃいいんやけどな。ちっちゃい子はお兄ちゃんを荷物持ちに連れて来て、4袋買っていった。妹がお世話になってますって挨拶された。しっかりしたお兄ちゃんである。

 

しかし、ずっと豆を炒って渡しての繰り返しやと動きも単調でメンドさが増してくる。ついつい「何でこんな買ってくんかなあ」と漏らしたら、葵に「熊が冬眠前にエサ貯め込むようなもの」と言われてしまった。これには仕事中やけどつい吹き出した。そう仕事中、つまりこのやり取りは、お客さんの前で行われたものである。客の行動を動物の習性に例える妹とそれに思わず笑う姉という、めちゃくちゃ失礼な店員がそこにいたということだ。一応、その場にいた客さんらは笑ってくれてた。その笑いが気遣いから来るもんじゃなかったことを願う。

 

世間が休みの間でも営業してる喫茶店なんてほとんどないわけで(茜ちゃん調べ)、コトノコーヒーだってその例に漏れない。そう思えば葵の冬眠前って例えもまあ間違ってはいない、はずだ。まあ世間が休みってムードで、その上さむい中わざわざ外出てコーヒー買いに行くぐらいなら前もって買っといた方が賢そうではある。

 

かく言う私も、この前の休みに冬眠前の準備を終えたばかりだ。おかげでお菓子とお酒とおつまみの在庫は十分です。こんなところで計画性発揮せずに店の経営を見通し立ててやってくれと言われそうやし、それはごもっともなんやけど。世間から「休んでいいよー!」と言われたのに、いざ残りを確認したら空っぽでってなると、近所のコンビニに行くのだって億劫である。まあいざとなれば葵に頼んだらいい。特に有効なのがじゃんけんだ。「じゃんけん負けた方が行こな!」って言うと、負けず嫌いのあの子は負けた悔しさを抱えて言うこと聞くのが嫌なので「じゃあ私が行くよ」と折れてくれるのである。さすがのウチでもちょっとこれは意地の悪い方法って認識はあるんで、基本的に奥の手やけど。あとたまにじゃんけんに乗ってくることもあるし、それで負けたらウチが行かなきゃいけないから、結構リスキーな手段でもある。ウチも負けて行くの嫌やしな。


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