コトノコーヒー 姉の呟き   作:みえふぁ

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安っぽい方が楽でいいね

昨日近くに用事があったらしい商社さんがやって来て、普通にお客さんとしてコーヒー注文して飲んでいった。適当な理由をでっち上げて仕事として来られればこっちとしてはおもてなしにコーヒーの1杯ぐらいは出さざるをえないのだけど、律儀に注文してくれるんやなあと少し好感を持った。

 

ところが、普通にカウンター席から「そういえばあの豆がまた値上がりして...」みたいな話を切り出したもんやから驚きである。そこからも、あの豆が確保できたから今度持ってきますねーとか、この前のこれをまた買ってほしいんですけどーとか、もうただの仕事の会話になった。他にお客さんもおったからか、そこまで大した内容ではなかったけども、それ以外は店の奥でしてる会話とほとんど変わらない。挙句その数少ない周りのお客さんも興味を持って寄ってきたから、コーヒー好きが集まって変な盛り上がりを見せていた。途中からもうウチではついていけないようなレベルになっていって、ウチが引っ込んで代わりに葵が会話に加わった。私から見れば単に仕事の話やけど、あの人たちにとっては面白くて仕方ないんやろなあ。

 

んで、コーヒーの味とかそういう話で盛り上がるんならまだ理解できるんやけど、何故かあの人らはコーヒーの値上がりの話で盛り上がっていた。確かに大事ではあるけども、コーヒー好きが集まってその話題でそんな盛り上がる?ってぐらいには話し込んでいたのだ。でも実際、ここ数年喫茶店回してるだけでも「高くなったな〜」と感じることは多いから、もっと長い間買っとるあの人らはウチよりも実感があるのかもしれない。うちの豆でも安く抑えられている方で、大きい店だととんでもない値段になってることもあるらしいし。郊外のすみっこでやってる個人経営だから許されてるらしいというのは、最近になって思い始めた。

 

マジでこのままやと、二十年後とかにはコトノコーヒーだって高級店扱いされているかもしれないのだ。そのとき、ウチが値段に見合っただけの落ち着いた大人になれているのかと聞かれれば、正直怪しい。今はまだ「やかましくて落ち着きのないお姉さん」でいられてるけど(ですよね?)、このまま成長せんかったら「やかましくて落ち着きのないオバサン」になってしまう。コトノコーヒーがお上品路線を進むのなら、いい加減落ち着くべきなのかもしれない。でも最近になって余計落ち着きがなくなった自覚はあるし、学生の頃の方がまだ大人しかったんちゃうかとすら思っている。今から猫かぶり直すのも面倒やし、値上がり止まってくれやんかなあ。


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