コトノコーヒー 姉の呟き   作:みえふぁ

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ご注文はハッキリ適当に

昨日は休みだったんで、私は毎週のごとく昼前まで部屋で寝ていた。起きるのめんどくて手元のスマホ触って、そしたらだんだんお腹も空いてきて起き上がるエネルギーすらなくなるのである。そんな怠惰な朝を過ごしているところに、リビングの方から電動のコーヒーミルを動かしている音がした。手回しのミルでも結構ガガガガガって音がするもんやけど、そこに機械の音まで加わってなかなか大きな音がするのだ。もちろんミルの音が聞こえるってことは、葵がコーヒーを淹れようとしてるってことになる。

 

寝起きにコーヒーも悪くないなあとか、今ならウチの分もギリ淹れてもらえるかなあとか思いながら、とりあえず起き上がって部屋を出ることを決意する。ちなみにこれがお昼とかなら、葵はウチの部屋まで毎回「コーヒーいる?」と聞きに来てくれる。実家にいた頃は二階にまでわざわざ聞きに来てくれてたんで、この子のコーヒー飲んでほしい欲も結構筋金入りだ。でもまだウチが寝とるかもしれやん時間やと、こっちを気遣ってか聞きに来ない。この日もそんな感じだった。

 

んで部屋を出たら、廊下でコーヒーのめっちゃいい匂いがしたのだ。ミルで挽かれた粉から発せられてるものである。同じ部屋におるときなら「おっええ匂い~」で済むんやけど、このときのウチはコーヒーを滑り込みで淹れてもらおうって状況だったんで、焦って「ウチもコーヒーいるー!!!」と大声を出してしまった。まあ、仕方ない。寝起きの優雅なコーヒーブレイクにしては落ち着きがないけど、おかげでギリギリ間に合って淹れてもらえたし結果オーライだ。葵には「なんであんなに叫んでたの?」と聞かれたんで事情を説明したら軽く笑われた。少なくともコーヒー関係の必死さで葵に笑われるのは納得いかんよなあ。

 

ちなみに、当然お客さんの中にも注文のときにハッキリ声を出す人とそうじゃない人がおるんやけど、ちょいちょい特殊なケースも見かける。コーヒーの名前ってカタカナばっかで長ったらしい上に慣れやん音した名前ばっかりやから、注文したい商品名を言うときになかなかハッキリ喋れないのだ。長いから名前のどの部分を読めば伝わるんかもわかりにくいし、全部読むには読みにくいものばっかりだ。「ま、まらうい…?」って不安そうな感じのお客さんをよく見る。ウチも始めてしばらくは商社さん相手に似たようなことやってたんで気持ちはよくわかる。

 

その上で言わせてもらいますと、正直伝わればええんで、なんて言ってもらってもいいです。イントネーションとかもウチ正しいのを知らないんで、適当で大丈夫です。私も今では商社さん相手に呼びやすいように適当で言ってます。あんな舌は絡まりそうなややこしい名前に真面目に付き合っててもしゃーないですからねえ。


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