コトノコーヒー 姉の呟き   作:みえふぁ

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座ってゆっくり

カウンターの奥に置いてある私の休憩用の椅子、まあまあ前に買い替えたんやけど、その座り心地のよさを今になって実感し始めた。固すぎず柔らかすぎず、ほどほどにリラックスした上で「さあ仕事しよか」って気分になれる。お客さんの席に座ると、座り心地良すぎて動きたくなくなるので、丁度良さも大事なのだ。腰を痛めたのをきっかけに買った椅子やったけど、治ったあとも大いに助けてもらっている。そこそこ値は張ったので、長持ちするのを願うばかりだ。

 

皆さん知っての通り、葵は基本座りっぱなしである。立ち上がるのは焙煎のときとコーヒー淹れるときぐらいで、常連さんと話すのだって座りながらだ。コーヒー飲んでるお客さん相手に、何なら葵もコーヒー片手に雑談していることすらある。どっちが客やねんと横から見てて思うけど、まあこれが妹なりの接客ってことで納得している。同じ目線でってやつだ。いや、それにしたってもうちょっと気張ろうぜと思わんでもないけど。でもお客さんだって気張ってる葵を目当てには来てくれやんやろうし、得な立場におるなーあの子。

 

葵の椅子は開店当初から使っているもので、あの子のお気に入りだ。妙に固いからウチはあんまり使わんけど、葵はあれぐらいが好きらしい。まあ見た目がおしゃれなのは良いなと思っている。あれに腰かけた店主がメガネかけて新聞でも読んどれば、「いかにも」って感じの喫茶店のマスターが出来上がるのだ。というか、実際葵がそれをやっている。ああいうのって年いった男性のイメージがあるけど、葵がやってもなかなか様になるのだ。「葵が似合うんならウチも似合うんちゃう?」と思って真似したら、「どこか間抜け」という辛辣な評価を妹直々に頂いたのは未だに納得いってない。顔のパーツほとんど同じなはずやけどな。やっぱ髪色か?

 

そうそう、この前入ったコーヒーですけど、前に初めて飲んだときには「めっちゃ落ち着いた喫茶店っぽい匂い~」って感想を抱いた。ザ・喫茶店って感じだ。間違ってもコトノコーヒーさんになんか置いちゃいけないぐらいの正統派。なんでそんな豆を仕入れたかと言うと、売れるからである。飲みやすくて、お値段もそこそこで、おいしい。葵もハマったときみたいな大はしゃぎはしやんだけど、「悪くないんじゃない?」って感じの反応やったし。こういう「葵の好みじゃないけど売れるから仕入れたい」って豆は、妹の審査を通してからやないと買えないのだ。葵もこだわりがあるのか妥協はしてくれやんから、案外シビアである。一応昔よりはゆるくなっとるんやけどなあ。

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