ちょっと前にサンプルの豆が届いたんで葵に淹れてもらったんやけど、その間にお菓子の準備しとったら「ちょっと来て来て!」と葵に呼ばれた。葵があんな急かすみたいにウチを呼ぶのは珍しいから何かあったんちゃうかと思って、そこそこ急いでキッチンまで戻った。戻ってみたら、あの子は特に何事もなく、ただ普通にコーヒーを淹れているだけである。なんやったんやとウチが聞こうとしたら先に葵から、現在コーヒー淹れられてる最中のビーカーを指さして「すごい色薄い!」と言われた。
言われて見てみれば、うん、確かに色が薄い。コーヒーの色ではあるんやけど、この豆はいつもより透明感があるみたいやった。カップに入ってしまえば分からない、コーヒービーカーのときにしか見れないものだと思う。ただ、ウチとしてはまあ、そんだけである。「ホンマや色薄いなあ、へー珍しい」って程度の反応しかできない。ただ葵はそうじゃなかったみたいで、「綺麗でしょ?綺麗でしょ?」と更なる反応を求めてくるから困ってしまう。コーヒー淹れるのに集中せんでええんかと思ったけど、こういうときはしっかりケトル動かす手は止まってない(さすが喫茶店店主)から話も逸らせない。
結局「お姉ちゃんにはよう分からんわあ」って素直に言ったら、「そっかあ」とちょっとしょんぼりさせてしまった。ここで気を遣ってもしゃーないってことは分かってるはずやのに、ちょっと胸が痛い。その後コーヒーの味の話で盛り上がって、機嫌直してくれたんでまあよし。実際ウチの好みやったし。
一応これまでも、似たような会話自体はあったのだ、「今回のは色薄いね」「ホンマやなあ」ぐらいの軽いもんやけど。そんなぐらいやもんで、味とか匂いならともかく色まで見とるんかあとぼんやり思ってたぐらいだった。まさかあんなハイテンションで話しかけられるとは思わんよ。一緒にお店始めてまあまあ経つけど、コーヒーの色まで楽しんどるのは知らんかったなあ。あの子、お店で淹れとるときも黙っとるだけで(色うっす!)って思っとるんやろか。それとも仲いい常連さんとはもう話してたりすんの?聞いたことあるよって方はまた教えてね。
しかし、あの子に呼ばれたときは何事かと思った。近くにおって助けを求められるのはしょっちゅうやけど、離れてとるときに呼ばれたもんやから何事かと思って、行ってみたらコーヒーの色の話とは。今度からはあの子に大声で呼ばれても、ゆっくり向かうぐらいでちょうどええんかも。いや、ウチにとっては大したことじゃなくても葵は早く見てほしいんやろうし…。結局急ぐ羽目になりそうやなあ。