コトノコーヒー 姉の呟き   作:みえふぁ

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コーヒー好きのお財布事情

さあさあ明日から休みも明けるということで、お店の準備をしながらいつもの調子を取り戻したいところです。在庫の整理をし、同じように休みから動き出した業者さんからのメールやらを確認する。そういや休みの前のアレが片付いてない、あの人から何か頼まれてたけどなんやったっけと、休みの間にすっかり頭から抜けてたことを、今になって思い出す。こんなもん昨日のうちからやっときゃ今日慌ただしくすることもなかったんやけど、そうやって計画的に動けないのは私と妹に共通している数少ない部分だ。こんなところ似やんくてもよかったのになあ。

 

そうやってばたばたしてると、妹が私を呼ぶ。業者さんから、お高いコーヒーが確保できたけど、数は少ししかない。要るなら早めに連絡をくださいという電話が来たそうで、そのときは特に内容も聞かず了承してしまった。まあ精々200g3000円くらいだろうとタカをくくっていた私は、後からその倍の値段はすると聞いてまあ驚いた。葵はニッコニコだし、まあ良しとしようか。でも流石に高いなあ、今からでもキャンセルできるだろうかと考えていると、顔に出ていたのか、葵に「どんなに高くても、買う人は絶対にいる」と物凄い剣幕で力説された。その対面に立つウチにできることは、頷くだけである。ホームページの方には、品種も値段ももう載ってると思います。喫茶の方で出すつもりはありませんが、もしそうすると、少なくとも一杯千円はするそうです。

 

コーヒーを売る側に回ってみると、これを趣味にしている人は凄いなあと感じるくらいには、コーヒーという趣味にはお金がかかると思う。葵が常連さんに「こんなのが入りましたよ」と言うと、「予算がちょっと…」と言われる方は結構いる。心当たりのあるお客さん方、別に珍しいことでもないので、喜色満面でオススメしてくる葵に申し訳なさを感じず、「予算オーバーです」と言ってください。葵はわかりやすくしょんぼりとするでしょうが、無理をせず。うなだれている葵にとっても、本望ではないでしょう。

 

あとは、高校生くらいの常連さんでも、家から出てるのかお小遣いなのかバイト代なのかは分からないが、高いものを買っていくことはほとんど無い。ただ、たまに買っていく時なんかは、多分お店に来る前からアレを買おうと決めているのだろう。こっちにも伝わってくるくらいのワクワクした表情で、よどみなく品種名を口にするのだ。似たような感じのお客さんは、大人でもちょいちょいいる。

 

ただ、高い豆の品種名を名残惜しそうにじっと見ているお客さんに、葵がオマケとしてその高い豆を、一杯分だけ小さな袋に入れて買ってくれた豆と一緒に渡すことがある。まあ葵の気持ちもわからんでもないんやけど、仮にも商売なわけで。これは注意したら流石に控えてくれるようになったけど、まあ、やるときはやる。

 

もちろん、これを読んで、お店でそのオマケを狙おうとしているお客さんもいることだろう。が、さっき私の方から妹にいっそうキツく言っておいたので、少なくとも今日から一年くらいは無駄である。残念やったな、ハッハッハ。

 


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