コトノコーヒー 姉の呟き   作:みえふぁ

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妹のこだわりとホイップカフェオレ

昨日、コーヒーの商社さんが来て妹と何やら話していた。新しく入荷したものの在庫が幾つあるだとか、品評会入賞品がどうとか、私にはよく分からない話だった。一応妹から色々と話を聞いているので前よりは知識もあるはずなのに、まだ素人には理解できない世界なのか。

 

葵は商社の人が来たときは、店の奥に招き入れて、相手の分のコーヒーを淹れて持っていく。コーヒーの商社さんやから、相手も当然コーヒーの味がわかる人なわけで(あとで葵に聞いたらコーヒーの資格を持ってるらしい。資格て)。「プロの人はちがうなぁ」なんて思いながら、意見を交わしているのだとか。私から見たら妹も十分プロなのだけど、本人はそうは思ってないみたいだった。しかしまぁ、通だの何だの言って自惚れている人の言葉はちょっと聞き入れにくいし、妹の認識くらいがちょうどいいのかもな、と思って、それを本人に話すと「そんなことないよ」と返されてしまった。わけわからんって顔に出ていたのか、優しく笑いながら説明してくれた。妹曰く「自惚れるのも1つのコーヒーの楽しみ方」だそうだ。いい子すぎる。この子の親に感謝しそうになったが、よくよく考えれば私の親でもあり、私の方はこの有様。つまり親の育て方は関係なく葵本人が素晴らしいのだ。しかし、私自身は妹に比べればコーヒーを飲む自分に酔っている方だろうし、少し救われた気分だ。世の中の雰囲気でコーヒーを飲むことに後ろめたさを覚えている人も葵に感謝するべきである。

 

そんないい子な妹だが、ちょいちょい豆を予算オーバーして買う悪癖がある。話を聞いているうちにソレもほしい、コレも捨てがたいとなった挙句全部購入するのだ。これは流石に何度か注意しているが、マシにはなっても治る気配はない。葵が楽しそうなのであまり厳しく言えないけど、甘やかしすぎも良くないので、申し訳なさを感じながら時々予算オーバーしてもらうくらいを目指そうと思う。

 

悪癖といえば、妹にはもう1つ、よくわからないこだわりみたいなのがありまして。ウチのメニューには「ウィンナーコーヒー」が存在しない。その代わりというか「ホイップカフェオレ」なるものが載せられている。これは実質ウィンナーコーヒーなんやけど、葵の「あれはコーヒーじゃなくてカフェオレ」「初めて飲んだ時コーヒーって名前に入ってるからコーヒーの口で待ってたのに裏切られた」「世間がどうかは知らないけど、私のお店でコーヒーを名乗れると思うなよ」という考えのもと、コトノコーヒーではホイップカフェオレとしてお出ししています。

 

ややこしいからメニューの最後に「要するにウィンナーコーヒーです」って書くことを提案したこともあったけど、にべもなく却下された。もはやこの店でウィンナーコーヒーは禁句。今こうしてブログに書いているのもマズイかもしれん。

 

これを読んでいるお客さんもお気をつけを。もし店内でうっかり「ウィンナーコーヒー」なんて口にした日には、出禁にはならずとも、鋭い眼光ときっつい酸味たっぷりのコーヒーを味わうことになるかもしれない…。

 

あ、新メニューの小倉トーストできました。よかったらどうぞ。


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