コトノコーヒー 姉の呟き   作:みえふぁ

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いつもお世話になっています

あるコーヒー農園で、一定以上の高い基準をクリアしたものを集めたコーヒーがありまして、毎年出るもので、前に仕入れたときに結構好評やったし今年もいこか、と前に二人で話していた。けど、今年は異常気象やらなんやらで基準を満たしたものがなく、量は少ない上にめっちゃ高額になってたんで、今回は見送ることとなりました。前のときはなかなかウケが良かったから、もし今年も期待していたお客さんがいたらすみません。お世話になってる商社さんのどこも手に入ってないらしく、都心の方のおっきいお店で千幾ら払って飲むものになって居るという話だった。今は去年分の在庫の僅かな残りをかき集めているとかで、あの人たちも大概大変である。私たちの方はと言えば、もらったリストを眺めて「これええやん」と言って、送られてきたサンプル飲んで、注文するだけだ。

 

第一、大きい駅からも近くない高速道路も近くを通ってない、こんな個人経営のちっさい店にわざわざ寄ってくれている時点でもう頭が上がらない。他の用事のついでで、と言ってくれてるけど、帰り道のおまけに寄ってくには面倒な場所にあると思う。「周りには他に喫茶店もないし、ここで良くね?」で場所を決めたので、その辺のことに気づいたのはお店が始まってからだ。思い返してみると適当にも程がある。こんな端から端まで適当な喫茶店の経営が何故成り立っているのか、不思議でならないが、私たちのセンスが素晴らしかったということにしておこう。

 

いい豆を紹介してくれる事といい、私たちは一体何を期待されているのか、前々から聞こうと思っていたことを、ついに昨日聞くことができた。すると、「だいたい買って頂けますし、応援したくなるんですよ。あと、いい場所ですから」と言われた。

 

なるほど確かに、町のちっさな喫茶店というのは「ちょっと気を利かせてあげようか」という気分にさせるものやろうし、そうやって気を利かせたら、予算を考えずに紹介されたものを片っ端から買うこともある上客でもあるんかもしれない。世の中悪いだけのことなんてありゃあせん、というのがウチの信条なんやけど、後先考えない経営の姿勢も、経営の面で良い影響があるとは思いもしなかった。こうやって何も考えずにやった結果成功すると、別の機会に「よく分からんけど、まあなんとかなるやろ!」と意気込んで無計画に挑戦し失敗するのだから、気を引き締めなければならない。ならないが、多分無理やと思う。もうそういう人生と割り切ることとしよう。

 

まあ今のところ、経営も成り立っててお客さんにも喜んでもらえているのだから、これが崩れない限りスタイルも継続するつもりだ。お客さんも私たちも、私たちを裏から支えてくれている人も楽しいのなら、こんなに良いお店はないだろうから。


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