昨日の夜、妹がコーヒーをこぼした。なんかコーヒーといえばこぼすものというイメージがあるけど、妹がこぼすのは結構まれである。一緒に食べるお菓子を開けようとしたはずみに手がカップに当たったみたいで、倒れたカップを見ながら呆然としていた。何をぼーっとしとるんやと思いながらタオルで床やら机やらを拭いてると葵も動き出した。やたらテンション下がってたから「こぼしたぐらいで落ち込まんくってええよ」と励ますと「まだ少ししか飲んでいなかった…」とため息をついたのだ。どうも、罪悪感とか汚して迷惑をかけてる申し訳なさとかよりも、全然飲めてないコーヒーを台無しにしてしまったことへのショックの方が強かったみたいやった。
それから、片付けが終わったあとも洗い物をしながらため息をつく葵を見て、つい笑ってしまった。マジでコーヒーを飲めなかったことがショックみたいなんやなーと思うと、こみ上げてきた笑いが抑えきれなかったのだ。葵はウチがテレビを見て笑ったと思ったみたいでテレビを見たけど、そんときついてたのはニュース番組で。それを見て不思議そうな顔をするもんやから、いよいよこらえれやんくって大声上げて笑ってしまった。あんなん反則やろ。葵に問い詰められて白状したら不機嫌になって、またそれもおかしくってクスクス笑ってたら頭をひっぱたかれた。あの子に手を出されたのは久しぶりである。葵はよほど後悔があったみたいで、二時間後くらいにもう一回淹れ直してた。今朝も飲んでた。
今朝といえば、昨日のコーヒーの匂いが残ってないやろかと、這いつくばってカーペットの匂いを嗅いでたら、葵に変な目で見られた。少なくともコーヒー関係のことで葵に変な目で見れれるのは納得いかんかったんで、葵も強引に誘って、朝から一緒にカーペットの匂いを嗅いでいた。何しとるんやウチら。思っていたほどコーヒーの匂いはしなかった。もっと染み付いてとれない感じのイメージがあったんやけどなあ。
お店でも当然、お客さんがコーヒーをこぼしてしまうことはあるんやけど、あらあら大変と思いながらも、一杯四、五百円もすんのにもったいないなーとか考えてしまう。葵やないけど、心の中の気持ちとしては、もう一杯サービスしてあげたいぐらいだ。まあ流石にそれはお店的にもまずいんで、申し訳程度に焙煎待ちのお客さん用のコーヒーをお出しすることにしている。クリーニングとかは自分で行ってきてね。
コーヒーといえばこぼすもの、なんて言っておきながら、飲んでるときに特に意識はしていないのだから恐ろしい。忘れた頃にやってくるというやつである。葵は今朝飲むときはやたら慎重になってたけど、また時がたてば忘れるのだろう。そうしてこぼれたコーヒーを呆然と眺めて、ウチがそれを見て爆笑するのだ。嫌な歴史ほど繰り返されるものである。これを読んでくれてるお客さんも、こぼして呆然とするとか、やめてくださいね?思い出して笑っちゃうんで。