コトノコーヒー 姉の呟き   作:みえふぁ

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こんな人ばっか

今回いい豆が入るにあたって、ずっとやりたかったやつをやってみた。あの、あれ。喫茶店とかでよく見る店の前においてある黒板みたいなやつ。今葵に聞いたらウェルカムボードっていうらしいです。あれを始めてみたのだ。皆さん気づかれました?最初は書きたいようにいらんことも書きまくってたら、一番大事なコーヒーのことが伝わらないと葵に言われたので、やりたい放題描いた落書きを削りに削って今の状態となった。最終的に生き残った落書きは招き猫ぐらいである。ゲイシャっていう名前なんやからと思ってヘタクソな芸者さんを描いてみたら、その芸者さんとは関係ないらしい。なんやそれ。

 

さてそのゲイシャさんですけど、めっちゃ好評です。買っていくお客さんがちょいちょい「また仕入れといて下さいね」って言っていく。豆なり粉なりを買っていくのはもちろん、喫茶の方でもけっこうな注文が入るのはウェルカムボード効果もあるんじゃないかと思いたい。葵も期待通りかそれ以上に在庫がなくなっていく様子を見てご満悦だ。

 

学生のころ、葵が豆を買ってきて淹れて家族が飲んでってしてるとき、ウチらの好み次第で豆の減り具合も変わるわけでして。あんまウチらが飲まんときは残念そうにしてたし、逆にウチらがよく飲んで豆の減りが早いときは、ちょうど今みたいに嬉しそうだった。規模が変わっただけで、この子のやってることは変わってない気がする。おいしいと思ったコーヒーを買って、淹れて飲んでもらって、喜んでもらえたら嬉しいっていう形は同じだ。これも学生のころやけど、朝私が起きてきたらちょうどコーヒー飲み終えてたところで、あーもうちょっと早めに起きて一緒に淹れてもらえばよかったなーって言ったら、ウチの分だけ淹れてくれたことがあった。そんときは基本的に葵のと一緒に作ってもらう感じやったから、その行動に「マジでただのコーヒー屋さんやん」と笑ったけど、マジでコーヒー屋さんになるとは。

 

案外、商社さんも農園の人とかも、こんな人らばっかなのかもしれない。飲んでほしいの連鎖があって成り立っているのかも。なんかそう考えるとぞっとする。お世話になってる商社さんの人らも、まともそうに見えて、根っこが葵と同じやし。あの子と話してるときの息の合い方は絶対に同類だ。この前社員みんなで飲んで味の審査してとか言ってたし、あの人らも大概やなあと思った。この仮説は結構正しいんじゃなかろうか。

 

あと、常連さんのなかにも、葵と同じ人間なんやろなあって人がちょいちょいいる。将来葵みたいになるんやろなあっていう学生さんとかね。葵がいなきゃ知りもしなかった世界である。まあ別に害があるわけでもなく、むしろ好きなことについて話しまくってる人たちを眺めているのは楽しいので、どんどん好きなようにやっててほしい。

 

業者さんの方に連絡したら追加で発注できそうな感じだったのですぐお願いしたけど、今ある在庫はそのうちなくなると思うんで、飲みたい人はお早めに。明日定休日やけどね!


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