コトノコーヒー 姉の呟き   作:みえふぁ

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一回見に来て

ブログに書いて以来、お客さんの方からちょくちょく置き物をもらうことがある(招き猫はあれ一つだけ)。まあこっちも一応お店やから、ある程度吟味してから店に置くか置かんか決めるんやけど、なんか最近、あげたものが店に置かれるどうかという遊びみたいなもんが、常連さんらの中ではやってるらしいことを聞いた。なんか最近やけにもらう上にバリエーション豊富やなあとは思っとったけど、そんなことになってるとは知らなかった。置かんものはその場でお返ししている。相手の好意でもらっておきながらすぐそれを返すってのはいくらか罪悪感みたいなもんがあったけど、そんなのが流行ってるって話ならまた別である。こっちも厳しく審査してバンバン落としてくんで、そのつもりでいてください。

 

そうやって今日、常連さんらと審査会をして、騒ぎすぎて葵に怒られたりしてたところに、いつものちっちゃい子がいらっしゃった。なんかやたらおっきな布に包まれた板みたいなんを抱えてる。んで、いつものカウンター席に座らずにウチらのほうにまっすぐ来ると、その体とおんなじぐらいのデカさのそれをウチに差し出して「これはどう?」と言った。ようわからんけどとりあえず受け取って布をどけてみると、それは絵だった。どっかの湖っぽい風景が描かれてて、めっちゃ綺麗なやつ。少なくとも素人目にはすごいものに見えて、ウチとお客さんらでその絵覗き込んで「すげー」ってなってた。「あの辺り空いてるし、どうかなって」と言いながらちっちゃい子が示した壁は、確かになんも飾られてない。

 

カウンターの向こうの葵をこっちに呼んで絵を見せたら特に問題もなく許可がもらえたんで、その絵は審査を通り飾られることとなった。その場にいたお客さんはみんな不合格やった人らやったんやけど、「あんなの見せられちゃねえ」と言っていた。確かに、あの絵を目の当たりにしては文句も出ないというものである。しっかしそれにしても綺麗な絵だった。あの子のことやし、どっかのオークションで落札したどえらいもんやったりせんやろかと思って、「あの絵はどうしてんですか?」と聞いたら、返ってきた答えは「自分で描いた」である。流石に冗談やろと思って確認しても、返ってくる答えは同じだった。なんなら絵になってる湖のこととか描いたときの話とかしてくれた。マジみたいである。「ちょっと図々しいかと思ったけど、やりたくなっちゃって」と言ってたけど、茶目っ気のレベルが高すぎる。もう飾ってしまったんで、明日から見れます。見るだけでもいいから見に来てください。すごいぞ。ウェルカムボードにへったくそな絵を描いてるのが恥ずかしくなってくる。

 

それにしても、楽器に絵に、知人の知らない芸術センスを見せつけられるのが続いている。ウチもなんかやったろうか。絵と楽器はもういるからアカンやろ、文章はこうやって書いてるけど拙いもんやし、葵の方がうまい。なんやろ、ほかに。料理も別に上手いわけやないんやけどな、極めるか…。


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