この前、ちょうど葵が外してるときに常連のお客さんからコーヒーの注文が入ったときがあって、普段なら断るところを何を思ったか「妹はいないんですけど、代わりに私が淹れましょか?」と返してしまった。ここでも何度か言ってることやけど、私自身はコーヒーについて素人だ。そのお客さんも「じゃあお願いしようかな」なんて言うから私なりにまあまあ頑張って淹れてお出しした。茜ちゃん価格で五十円引きだ。葵の腕に値段をつけているような気がしていやだったが、勝手にやったことで原材料分しかもらわないというのも、あんま良くない。そんなことを考えるなら最初から断れっちゅう話やけど。少し別にとって飲んでみたが、豆が良いものやから多少は誤魔化せても、やっぱり妹の淹れたものに比べれば美味しくない。
これはあとで知った葵にえらい怒られた、ぐうの音も出ない。これを読んで注文してみようと思ったそこのあなた、ダメみたいです。でもご安心ください。同じコーヒーの豆はお店で販売しているので、家で淹れればド素人作の茜ちゃんシリーズは簡単に再現、上回ることができます。
基本的に優しい妹だけど、ことコーヒーのことになると厳しくなるときがある。昔コーヒーの器具をなんか買うってなったときに私と母親が、当時見ていたドラマに影響されてオシャレっぽいケトルが良いんじゃないかと言ってたら、ケトルよりミルを買うべきだ、味が全然違うと主張したのが妹だ。私たちは「えー」みたいな感じだったけど妹の方は一歩も譲らず、結局両方買うことになった。ここらへんはウチと葵のコーヒーに対する認識の違いが現れてる。オシャレな飲み物か、美味しい飲み物か。
ここまで書いて意外に思われるかもしれないが、私はコーヒーの味の違いが結構分かる。最近は仕事にもなったから味と品種名も一致させられるようにもなった、どんなもんや。
ただ欠点というか、ミルクなりフレッシュなりを入れないとロクに飲むこともできない。そのままブラックで飲むと刺激が強すぎるように感じる。でも牛乳なり何なりを入れてしまえば味の判断もつくし、そのコーヒーの特徴を挙げれば葵の言うのとほとんど一致する。まあウチのぼんやりとした感想を葵がはっきりとした言葉に変換して、ただ「そう!それ!!」と声を上げているだけなんやけど。何だろうと分かるもんは分かるのだ。
最近はコーヒーの匂いが充満してる店内にずっといるせいかコーヒーを飲みたいと思う機会が減ったけど(葵は毎日少なくとも1杯は飲んでいる)、飲む時は必ずミルクを入れる。ちなみにフレッシュよりミルク派だ。
まあ要するに、コーヒーの楽しみ方は人それぞれというわけだ。葵なんかコーヒーに合う手頃なお菓子が見つからなかったとき、小皿に砂糖を盛ってそれをちびちび舐めながら飲んでたことがある。ならもう砂糖を入れてしまえよと思うんやけど「砂糖を入れると何か大事なものがコーヒーから消える」らしい。これはウチもちょっと分かる。ただ母は砂糖ドバドバ派だった。純粋なブラック派、絶対ミルク投入派、砂糖ドバドバ派が入り交じった家庭だ。あと父はなんでも良い派だ、というか緑茶派だし、母も紅茶派である。
話が逸れに逸れたけど、お客さんには好きなように飲んでもらいたい。紅茶や緑茶はさすがに無いけど、言ってもらえれば小皿に砂糖を盛ってお出しするくらいはしますから。