この前書いた葵がすごい剣幕になって仕入れた豆、本日到着しました。普段なら今日の営業が終わってから準備をして明日から売り出すわけなんやけど、葵ができるだけ早くお店に出したいって言うんで、お昼からの販売となった。休日のお昼でお客さんも多いしやめとけば？って思ったけど口には出さず、表を葵に任せてウチは裏に引っ込み、大急ぎで準備を終えて戻ってきてみれば、慣れやん大勢のお客さんの相手をしてくたびれた葵の姿が。疲れ切った顔をしながらも「ありがとう」と笑ってたんで良かったと思う。
そんで、本当なら「この豆今から買えますよー！！」とか大声で告知したいところなんやけど、残念ながらうちは喫茶店である。けど葵は言いたそうにうずうずしてるし、恥ずかしがりやなあの子が大声宣伝するってことはないにしても、それぞれのテーブルにわざわざ寄ってって「こんなの入ったんですけど、どうですか？」とか聞いて回りかねない。いや、冗談みたいに聞こえるかもしれませんけど、ホンマにやると思う。どうしようかと悩んだ末に、そのへんの紙の裏に書いてレジの横にでも張り付けりゃいいか、ということになった。ただ、肝心の手頃な紙というのが見当たらなくて、もうこれしかないってことで、商社さんから送られてきた届いた豆の種類やら量やらが書かれた紙の裏にマジックで書いてあったのだ。こいつをレジの手前のカウンターにセロハンテープで張り付ければ準備完了である。
しかし、張り付けてる途中で使われてる紙の正体に気づいた葵に、何をやっているのかと怒られてしまったのだ。「何って、宣伝やけど」とすっとぼけてみれば余計に怒られて、紙ははがされ、奥に持っていかれてしまった。そのあとも何であの紙を使ったのかとか、ウチだって葵が変なこと始めやんようにって思ってやったんですーとかくだらんやりとりが続いた。当然、カウンターのほうは騒がしくなるわけで、それに興味をもった馴染みのお客さんが事情を聞きにきたりでどんどん盛り上がっていき、最終的にこんなやかましいならもうええやろと開き直ったウチが声を上げて宣伝し終了となった。初めからこうしときゃよかったな。当店内において謎の話題性をもったその豆はえらい勢いで売れて、三、四日は大丈夫って予想やったけど、明日のお昼にはなくなってそうである。そのうち届く追加分はあるけど、今すぐ飲みたいって人は明日の早いうちにどうぞ。サンプルも飲んでないもんやから、そんときはウチもまだどんな味か知らなかったりする。葵はカウンターの奥で淹れて、ちゃっかり自分だけ飲んでました。
ちなみにさっきその例の紙を、豆とかお金の管理とかで本来の用途として使ってるときに、横から見てた葵に変な顔をされた。マジックやったから裏から透けて見えとったしな。そのあとそのコーヒーを飲ませてもらった。酸味も強すぎず飲みやすかったです。みなさんも適当な紙の裏を使うときは、ちゃんと紙を選んで使いましょう。じゃないとウチみたいに、こわーい妹にコーヒーをブラックで飲むことを強要されたりするかもしれません。