前に書かせてもらった焙煎機を直してくれた大学生のお兄さん、都会の方からこっちに来て下宿してるらしいんやけど、ちょっと前に実家に帰る機会があったらしい。んで、このお兄さんがうちでいつも飲んでくコーヒーがあって、それと同じやつを飲もうとしたらしい。そしたらうちで売ってるやつの３倍ぐらいしたから驚いた、という話を聞いた。そのあと「このお店はすごいですね」とほめてもらったりして。カウンター越しにウチとお兄さんで話してたんやけど、ちょっと奥にいた葵のほうをチラッと見たらうつむきながらニマニマしてたんで、聞き耳立ててたんやと思う。あの子が喜びそうな内容だったんで、ウチも話聞きながら（直接言ってあげればいいのにな～）と思ってた。
この手の話はほかのお客さんからも聞いたりするし、なんなら葵本人がお客さんに言ってたりする。特に遠方からのお客さんに驚かれることが多くて、そこを指摘されたときの葵の笑顔はなかなかいいものです。あ、ウチもブログで書いたことある気もするな。このへんの差ができる仕組みはウチもようわかってない。都会が恐ろしいのか、もしかしたらうちがズルしとるのかもしれない。
葵が仕入れる豆の基準として「いい子かどうか」っていうのはやっぱり大きいんやけど、それと同じぐらい、値段のことも気にかけていたりするのだ。もちろん、ただ安物を仕入れたいってわけじゃなくて、「この値段でこんなにおいしいコーヒーが飲めていいんですか！？」みたいなのを目指している感じである。書いてて思ったけど、だからすごい豆が半額ぐらいになってたとき、あんなに必死やったんやな。葵は「ただおいしいコーヒーが飲みたいだけなら、お金を払えばいくらでも飲める」みたいなことを常々言ってる。でも昔は言ってなかったから、たぶんお店側の立場に立ってから考えたことなんじゃなかろうか。ウチらがお店を始めたのなんてちょっと前やけど、コーヒーに特別詳しくないウチでさえも高くなっとんなーとは感じるぐらいやから、葵なんかもっとやろうし。まあまあ年齢重ねてる感じのお客さんと一緒に「最近はコーヒーが高いねえ」って嘆いてるのを見たときは、お前何歳やねんと思った。
去年よりは値上がりしたけどほかに比べれば知れとるかな、ぐらいのいい感じな豆があって、飲みやすさもあって一定の人気があったんやけど、それの売り上げが今年は若干悪かった。ワケを聞いてみれば、どうもそれぞれ、この価格を超えたものには手を出さないって決めてるラインがあるらしくって。その基準は1000円やったり1500円やったり2000円やったりまちまちなんやけど、確かにその豆は値上がりしてギリギリ2000円を超してしまっていたのだ。考えたこともなかった。家電とかでよく見るウン万９８００円的なものやろか、数字の印象っていうのはなかなか侮れないものである。
でもだからって、コーヒー屋が「1980円」みたいな値段表示しとんのもなあ。と思って葵に聞いてみたら、それはそれで全然アリとのこと。せやん、この子飲んでもらうことしか考えてないやん、そらいっぱい飲んでもらえるならそうなるわな。