コトノコーヒー 姉の呟き   作:みえふぁ

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内装って難しいね

ブログを見てくれたお客さんから砂糖盛りをオーダーされたので持っていったら、それを見ていた葵が顔を真っ赤にして怒っていた。そのお客さんは葵をからかうつもりでやったみたいやけど、まさかホントに注文されるとはウチも思ってなかった。

 

そしてこのお客さん、いつかに書いた高校生2人組の片割れである。それも落ち着いた感じの子じゃなくて金髪ギターの方が、お一人でだ。「ブログ読んでますよ」と言ってくれたので、ウチが初対面のときビビってたのもバレているらしい。

 

注文されたウィホイップカフェオレを持っていくときに「今日はまたどうしたんです?」と尋ねると「あの子が今日来れないって言ってたから、たまには一人でと思って。音楽が気に入ってるから、ここ」と言う。音楽というのは、店内を流れている曲のことだ。ウチの店では喫茶店に合う曲というのがよく分からなくて、母がピックアップした昔のよく知らない歌やら洋楽やらを流している。一度「懐かしい曲だね、知ってるの?」とお客さんに聞かれたこともあるが、もちろん知らない。ただ「知らないけど雰囲気を作ってくれる歌は、音楽に集中しすぎずに、いい感じにコーヒーを楽しめる」と葵が言っていたので、そう言うものなのだろう。確かに出先で知ってる曲が流れていたときの興奮は、喫茶店には求めていない。

 

ただ当然コーヒーを飲む場所で流れているものな以上、少なくともギターケースを背負った高校生が好むような曲じゃないんちゃう?と思ったが、所詮素人考えってやつなんかな。その子は店内に人が増えてきたあたりで席を立って「ブログ、いつも楽しみにしてます」と言って去っていった。楽しみにされているようなので、これからも気合い入れていきます。

 

ちなみにこの店内で流れてる曲、ウチは耳に残ってしまったので結構歌えます。聞こえてくるのに合わせて仕事中に口ずさんでいたりします、そんな茜ちゃんの姿が見れたらあなたはその日ずっと幸運に恵まれることでしょう。葵もたまにやってるのでそっちを見れたらすぐに投資でもするといいと思う。

 

店の内装とかは結構テキトーで、妹の「落ち着いたお店にしたい」という方針をもとに、何が優れているのか誰が描いたかも知らない絵や、飾りが控えめで安っぽすぎない程度に綺麗な、その実やっすい振り子時計、雰囲気作りのための土が入っただけの麻袋なんかがある。基本これらを選ぶ時に妹はいなくて、私と母が選んだものを妹に見せて「これはナシ、これは採用」といった風に決めていった。麻袋は却下されかけたが、私と母の必死の説得でなんとか通した。ちなみに必死になった理由は、特にない。強いて言うならお店で見つけたときに「この袋とかめっちゃそれっぽいやん!」とテンション爆上がりしたくらいだ。あと思いのほか重くて店に入れるのに苦労した。

 

そんな適当具合なので、それを気に入って通ってくれるお客さんがいるというのは予想外だった。これは安易に内装やら曲やらを変えるわけにはいかない。こういうのってどっかに頼んだらやってくれたりするんやろうか。

 

そして、メニューにチーズケーキが加わりました!「ブログ見ました」と言うと、気持ち大きめに切ってお出しします!よかったらどうぞ!

 


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