妹がコーヒーにはまり始めてしばらくしてから、私はこの子がカフェイン中毒というやつになってしまったんじゃないかと心配したことがある。それまでコーヒー好きという人種に会ったことがなかったし、エナジードリンクが手放せなくなっていたアホが身近にいたというのもあった。あいつは他人の部屋の冷蔵庫にエナドリ勝手に入れてくわ匂いするのが嫌やから飲むとき窓あけろ言うてるのに開けやんわでホントひどかった。まあとにかく心配になって、次会ったときに聞いてみようと思い、そんで葵に会ったときに淹れてくれたのが、カフェインレスのコーヒーであった。完全にいらん心配だった。
そんときに葵から聞いた話で、ついさっき聞いたことでもあるんやけど、カフェイン入ってない豆にもいろいろあったらしく。昔は、薬やらなんやらで味が落ちるからそれなら豆もそんな上等なもん使わんくてえっか、ということでそんなおいしいもんじゃなかったらしい。ただいつからか、ちゃんとおいしい豆に味を落とさない技術を使っておいしいデカフェのコーヒーを作り始めたそうだ。うちで仕入れたことがあるのは一種類だけやけど、特別味が悪いようには感じなかった。お客さんにも好評で一定の需要がありそうやったから定期的に仕入れてるものでもある。そんなデカフェの豆が、商社さんのリストに載っていた。葵も飲んだことのないやつらしいんで、サンプルで様子を見て決めようと思っています。葵の中ではもうほとんど買う方に傾いてるみたいやったけど。特徴のあるコーヒーを好む葵やけど、おいしいカフェインの入ってないコーヒーっていうのも、特徴のあるいい子に入るみたいだ。
そういや前に、定番で仕入れてた豆が一時期値上がりしたことがあって、似たような豆で安めのものも一緒に仕入れたことがあった。一応お手ごろさもウリにしてるわけやから何かしなきゃなあと思ってのことである。けど、初めの内は安さもあってそこそこ売れたんやけど、次第にあんまり人気がなくなっていた。特にその定番の豆を楽しみにお店に来てくれてたような常連さんはわかりやすくって、一回安い方を買っていって、次来たときには元の豆に戻ってるってことがあった。その場で試しに注文して飲んで、一度も買わなかった人もいたぐらいである。やっぱり多少高くてもおいしいもん飲みたくなるんですかねえ。こういう人たちがいるなら、おいしいデカフェを作ってやろうぜって話も出てきそうだ。
そんときの元からある方と安い方の値段の差はだいたい500円ぐらいやったんやけど、コーヒー一杯ごとの値段で計算したらそんな大した差はないから不思議だ。いや、そういうことの積み重ねで大きく変わるもんなんでしょうけどね。節約とは無縁の人生送ってきたからなあ。そろそろ何故か売り上げが下がる時期が近づいてきてるんで、そのへんのこと考えとかないと…。