コトノコーヒー 姉の呟き   作:みえふぁ

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最初から車でよかったのでは

前の休日に、葵がちょっとパソコンの何やらを買い替えたいとかで、家電屋さんまで車を出してほしいと言ってきた。何も考えず頷く直前に、このほとんど運動もしない妹を外にだすいい機会やということに気がついた。我ながらいい気づきである。どうせその日は他にやることもない日だったんで、せっかくなら歩いて行こうかと提案した。もちろん、葵はめっちゃ渋った。そりゃそうだ、なにせ徒歩となれば家から一時間はかかる。しかし葵は免許を持っていないので、ほとんど選択権なんてないようなものだ。でまあ結局歩いていくことになったんやけど、外出てみたらやたら風が強くて早くも後悔し始めたことを書いておく。あとパソコンも何かとデリケートっぽいし、変なノリに付き合わせずに普通に車で送ってやればよかったなと今書いてて思った。

 

道の途中で、子供のころにやった「ここからあの電柱まで先についた方が勝ちなよーいドン!」をやってみたんやけど、まるで乗ってくれなかった。まるで我関せずといった感じでしらーっとしてた。唐突にかけっこの始まりを告げられて「待ってよおねーちゃん!」と後ろから追いかけてきてくれた葵はもういないのだろうか。ちょっとは童心に帰ろうぜと葵に言おうとしたところで、周りに普通に人がいたことに気がついた。めっちゃ見られてた。なるほど、そら我関せずな態度もとりたくなるわけである。そんで、おそらく顔を真っ赤にしてるであろうウチが恥ずかしさに耐えきれなくなって葵のもとに戻ろうとしたら、葵も同じだけウチから離れたのだ。いや、顔そっくりやのに他人のフリすんのは無理があると思うけど。もうどうとでもなれと思ってそのままダッシュで葵の方に向かったら、葵も走って逃げだした。ここに、成人女性二人が平日の昼間に住宅街を走り回る事案の完成である。追いかけっこしてるうちに家電屋さんから離れてたし散々やったけど楽しかったからよし。葵は店に着くまで文句たれてたんでよくはなさそうやったけど。

 

目的のものを無事買って、帰り道。さっきのあれを見た人がいるかもしれないと、葵が同じ道で帰るのを嫌がったんで、ちょっと遠回りで帰ることにした。そしたらその途中で、葵がスンスン鼻をならして「コーヒーの匂いがする」と言い出したのだ。確かに集中してみれば、なんとなくそんな感じがする。葵に警察犬的な感じで匂いの元まで導いてもらおうと考え付いたウチの隣で、葵は冷静にスマホを取り出して位置を確認していた。ロマンのない妹である。あ、そのお店のコーヒーはおいしかったです。葵がなんの豆なのか聞いてた。

 

普通に結構な距離歩いた上に途中意味もなく走り回ったおかげで、ウチらの体力は尽きてた。家に帰ってそのままだらだら過ごして休日終了。葵もその買ったもので何かしたかったらしいけどへとへとでそれどころじゃなかった。まあ疲れたけどいい日だった。願わくばあの追いかけっこを見てた人が来店しませんように。

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