コトノコーヒー 姉の呟き   作:みえふぁ

76 / 169
あの子のお気に入り

やっと終わったぜ。今回の豆もうほとんど捌き切りました。あとちょっと残ってたりする豆もあるけど、まあ今までの忙しさと比べれば大したことじゃない。いや、のんびりやってる喫茶店のたまにある忙しい時期ってだけで、もっともっと大変なお仕事なんて世の中いっぱいあるんやろうけど。しかしこうして終わってみると、人が一人増えるだけでこんな変わるかというぐらいには楽になった。バイトちゃんには感謝である。

 

まだ学校も休みらしくて、ウチらとしても大歓迎なんでしばらくはお店にいてくれるそうだ。真面目な話、普段のお店ならウチと葵で回せるから人手が必要なわけやないんやけどな。せっかく今一緒に働けてるのに、すぐ店員とお客さんの関係に戻るのも何かなあっていうのもあるし、バイトちゃんも楽しそうやし、葵がめちゃくちゃに気に入ってるし。

 

仕事中も色んなところで見え見えやったから知っとるお客さんは知っとると思いますけど、バイトちゃんに対する葵の溺愛ぶりはそれはもうすごい。今日は忙しさも落ち着いてたから余計にすごかった。他のお客さんはもちろんウチにもあんな喋らんわってぐらい色々教えてた。あれじゃバイトちゃんの忙しさ自体は変わってなさそうである。

 

あ、今日はお店が終わったあと一緒にサンプルの試飲もしました。あんだけの忙しさの中、葵がどうやってか見つけてきたやつである。ウチもちゃんと覚えてないけど多分適当に許可出したんやと思う。帰りの支度を始めてたバイトちゃんに「サンプルあるけど飲んでくー?」って聞いたらえらい勢いで食いついてきた。なんでも憧れの「ブログで見たやつ」らしく、葵の豆の説明聞きながら楽しそうに奥へ戻って行った。あんな喜ぶんなら普段から声かけようかと考えたけど、流石にこればっかりはお店側の人間じゃないとあかんかな、と思って口には出さなかった。たぶん言ってたら葵に怒られてた流れである。最近このへんの葵に怒られる塩梅も分かってきたところだ。

 

でサンプルの感想なんやけど、超フルーティな酸味って感じ。残念ながらウチは一番苦手なタイプまである。葵が先に一口飲んで「これはお姉ちゃん苦手だと思う」と言ってくれた。バイトちゃんも隣でウンウン頷いてた。最近この子にも味の好みを把握されてきたように感じる。まあこの手のコーヒーはだいたい牛乳入れればウチが苦手な部分が消えておいしく飲めるし実際それでいけた。それと、その後で葵がちょっと薄めに淹れてくれたんやけど、こっちはお菓子があればまあおいしく飲めるぐらいになっていた。酸味が苦手やよーって人は薄めに淹れることもオススメしておきます。豆も節約できるしね。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。