コトノコーヒー 姉の呟き   作:みえふぁ

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もし問題だったとしても、改める気はありませんが

例のアホの友人が今日もやってきた。店に入るなり当然のようにカウンター席に座り「オススメを」などどキメ顔でほざく。妙に様になっていてムカついたのでカウンター越しにおしぼりを放り投げ、一応注文通りオススメの用意を葵にお願いした。

 

この前「近所に来たときによく寄ってくれる」とか書いたと思うけど、あれはウチのお慈悲でぼかした表現をしただけで、実際のところは「近くのパチンコに行って勝つと、帰りについでに寄ってくる」である。酒はよく飲むパチンコ通いのクズだが、タバコだけは無理だというのだからよくわからないやつだ。そこまで堕ちたなら三拍子そろえろやつまらん。ちなみに、今までここで紹介させてもらったお客さんからは許可をもらってるけど、こいつからはもらっていない。必要もないやろという判断である。

 

こいつに出したコーヒーは、酒用の樽で発酵させた豆だそうだ。なんか葵が語ってたのを話半分に聞いてたからふわっとしか覚えてないけど、たしかそうだったはず。ウィスキーのとかワインのとか、発酵させる樽にも種類があるらしく、このとき出したのはラム酒の匂いがついたやつだ。こいつがラム酒好きであるという話は聞いたことはないが、まあ酒好きなら好きなんちゃうかなあ、くらいの気持ちで選んだ。酒どうこうは分からなかったみたいやけど、アホはこのコーヒーをえらく気に入って、珍しく豆も買ってルンルン気分で帰っていった。まあ実際特徴的な味がして美味しいのは確かである、好きな人は好きだと思うので、試したことのない人は一度どうぞ。

 

さて、前に墓参りに行くといったけど、そのために近所の花屋に歩いて買いにいった。この辺りにはだいたい家兼お店から同じくらい離れた距離に二つ花屋があるんやけど、ぼーっと歩いてたら思てた方と違う花屋についてしまった。特に花屋にこだわりがあるわけじゃないけど、休みで暇だったし、日ごろの運動不足の誤魔化しも兼ねて当初予定していた花屋まで歩くことにした。まったく、周りに誰もいないと思って歌いながら歩いてたら気づいてないだけで実はいた、というときほど恥ずかしいものはないなあと実感する。まさにそんな状況になってしまったのだ。周りを確認してる以上、基本そこにはその人とウチの二人しかいないのがほとんどなわけで。こういうとき、「気にしてませんよー」という風に歌い続ける人と黙る人に分かれるらしいけど、ウチは断然黙ってしまう方である。妹にもどっちか聞いたら、そもそも外で歌いながら歩かないと返された、盲点である。

 

まあそんなわけでちょっと小走り気味にその場を離脱しようとしたら、その出くわした人というのが例の高校生の常連さんだった。ギターではなく、大人しそうな方だ。向こうも気づいたみたいで、ウチもさっきのことを忘れてお互い挨拶をする。この子はコーヒーが好きそうだったので、葵じゃなくてウチで悪いなあと思いながらちょっと話をして「うちの妹とも仲良くしてやってくださいね」と言って別れた。葵は基本人見知りだが、同じコーヒー好きだとわかると、カウンター越しにウチ以上に話しかけ始める。ウチはなんか見たことない感じの人がいたら我慢できずに話しかける。なんなら許可をもぎとってブログに載せる。喫茶店といえばプライベートな時間、空間をご提供する場所なイメージがあるが、コトノコーヒーに限ってはプライバシーはガン無視していく。ここまで書いてて思うけど、なんで常連さんがいるんか不思議やな。

 

コトノコーヒーさんで平穏無事でいたいのなら、ごく平凡な恰好をし、コーヒーに興味を示さないこと、みたいな噂ができちゃうかも。いや、もうできてたりするんですかね…?


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