コトノコーヒー 姉の呟き   作:みえふぁ

86 / 169
ホントにあればいいのになあ

今日はめっちゃ暑かったですね。朝起きたときは「まだ早い時間やのに暖かいな~」ってぐらいやったのにお昼からどんどん暑くなってきた。今日一日だけで明日にはまた過ごしやすくなるみたいなんですけど、まあなかなかのもんだった。この時期は人によってアイスかホットか分かれるところで、まあまだ七割ぐらいの人はホットなのが基本なんやけど、今日はさすがにアイスばっかりだった。それでもホット頼んでらっしゃるお客さんはいましたけどね。ああいう人らはどんな時期でもホット一択なんやろなあ。その感覚はウチにはわからないけど、ストイックな感じはちょっと憧れてしまう。

 

思ってたより暑かったんで途中の休憩で裏に引っ込んで別の薄手のに着替えたりしてたら、お昼過ぎに常連さんのちっちゃい子がやってきた。で、いつも通りカウンター席に座るなり「外にエアコンがあったらいいのにねえ」と言ってた。なるほど、外にエアコン。なんとも子供らしい柔軟な発想という感じである。けど普段大人っぽいこの子が言ったもんやから、それを聞いたウチは一瞬真に受けて意味を理解できずにフリーズしてしまった。その子もはっとしてちょっと恥ずかしそうにアイスコーヒーを注文していた。いっつも大人びてるのに、たまーにこうやって絶対大人じゃ出てこやんようなことを言ったりするのだ。捉えどころのないような不思議な人が年相応の言動をして恥ずかしがるっていうのは、何だかこの子が身近な存在になったみたいでちょっと嬉しい。まあそれはそれとして、横の壁の方を見てみればこの子の描いたすんごい絵があるんですけどね。

 

アイスコーヒーといえば、ウチはコーヒーと氷の比率とかはあんまり気にしない人間だ。なんなら普通にホットとして淹れたコーヒーに氷を入れて冷やしてもいいレベルである。けど葵はそうもいかんらしくって、だいたい半々ぐらいで作ってるはずだ。あ、これは家で自分たちで飲む用のを作るときの話であって、お店で出す分はちゃんと分析して決めてるはずです、たぶん。暑い時期に葵が自分の分をホットで淹れるって聞いて「じゃあウチは勝手に氷足すでちょい少な目で淹れといて」ってお願いすると、信じられないみたいな目で見てくる。それで、葵のとは別に器具を用意してウチの分のアイスコーヒーをちゃんと淹れてくれるのだ。いや、その手間かけさせるのが申し訳ないから別にええよって言ってるのに。少なくとも葵にとっては、手間以上にウチが適当なアイスコーヒー飲んでることが耐えられないようでした。結局最初から別で淹れてくれってお願いする方がお互いにとってええんやろな。私としてもそれで申し訳なさを感じないわけでもないんで、洗い物を代わりにやっておく。普段は淹れてもらっておきながらやらないのかって?やりますとも、半分ぐらいは…。ほら、あの子が飲んでほしくて淹れてるわけやし…。今度からもうちょっと洗う回数増やします。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。