平日のお昼になると、外の方から子供たちの楽しそうな声が聞こえてくることがある。お店の前を近所の保育園のお昼の散歩で通るみたいなのだ。基本的に保育園の子はコーヒーに興味を示すことなんてないので、特別深い関わりがあるわけでもなく眺めてるだけなんやけど、日々のちょっとした癒しにはなっている。もしかしたらあの子らのうちの何人かは、幼少期に定期的に嗅ぎ続けたコーヒーの匂いが忘れられずにこっち側へと足を踏み入れるのだろうか。そういう英才教育みたいやな、コーヒー好きは子供育てるってなったらそういう教え方するんやろか。まあどうやってもコーヒーって苦いし、子供のうちに興味もてるもんじゃないか。
今でこそ癒しにできてるけど、そっちの仕事してたときは癒しでもなんでもなかった。コーヒー店のブログなんであんまり詳細には語らないけど、あの歳ぐらいの子供はとにかく理不尽なのだ。わけわからんことするのに合わせなきゃいけない。一人が泣いたら何故か連鎖的に泣き出すし。ウチは嫌いにはならんかったけど、少なくとも好きではなくなってたと思う。人並に子供は好きなんやけど、仕事にするっていうのはそいうことなのかな。
そのへんのこと考えたから、葵にはできるだけ面倒なことをせずに楽しんでもらいたいなって思っている。葵のコーヒーに対する情熱は人並なんてもんじゃないんやろうけど、それでも少しでもその楽しさをキープしてほしいのだ。それでウチが背負い込みすぎて葵を心配させてたら世話ないんやけどな。どうも葵に心配されてたみたいで、ちょっと前に葵と話して、最近は頑張りすぎないようにしている。これでいいのかは自分でもよくわからないけど、最近ちょっとずつ色んなことが楽しくなってきたんで、多分大丈夫だろう。それはそれとして葵の手助けするのは好きやし、お菓子作るのだってわりと好きなのだ。特にここ最近は新メニュー考えてなくて自分のなかで何かがたまってきてる気がするんで、ここらで一つ増やしてやろうと思っている。実はひっそりと焼き菓子もどきに手を加えていたりするんですけど、気づきました？
それとこの前入った豆、ウチは牛乳いれても苦手やったんやけど、焙煎して日が経つにつれて好みの味になっていった。苦味が強くなっていって他が目立たなくなったんじゃないかと葵は言っていた。これが劣化しちゃってて本来の楽しみ方とはかけ離れたものかもしれないのだけど、個人的にはこれがベストである。葵は何でもいいからおいしくコーヒー飲んでもらいたい人間なので、少なくとも我が家ではこれが正解だ。