この時期になったら仕入れとる豆がありまして、いつも楽しみにしてくれてるお客さんも多いんで「またこの時期かー」と思いながら商社さんから送られてきたリストを見てみれば、その豆がだいぶと値上がりしていた。だいたいいつもの五割増しぐらいである。その上商社さんの方でもそんなに量を確保できてないみたいなんで、今回仕入れられる量はちょっと少なくなりそうです。なんでも、コーヒー生産してる現地の方で人手不足が発生してるらしくて、豆の品種やら良し悪しやらを見分ける人が少なくなる。そうすると送られてくる豆の質が前より下がってる、ってことが起きるそうだ。去年と同じものを注文したのになんか別のが混ざってるとか、そういう感じのが。それで色んな商社が仕入れに慎重になってるせいで、どこも例年ほどの量を確保できていないんだとか。それに気候がよろしくないのも重なって、値段は上がるは量は少ないわってことになってる。
いやー、おっかない話である。炒って売りに出すだけの喫茶店側としては「あらあら大変やなあ。お客さんも楽しみにしてくれとるんやけどなあ、しゃーないか」ぐらいで済むけど、たぶん現地の方はどえらいことになってるんだろう。これで農園がつぶれて来年から仕入れられやんくなるってことはないみたいやけど、それでも大打撃ではあるやろうし。うちで言えば、葵がおらんくなって、私が必死に見定めて仕入れようとするけどあんまり売れやんくなって、そのうえ天気も悪いのか。最悪やな。まあ葵がおらんくなったらコーヒーに凝った喫茶店を続ける意味はなくなるんやけど、それだとこんな不便な場所にわざわざ来てくれるお客さんも激減するわけで、閉店待ったなしである。ウチもお店に必要な人間なのかもしれないけど、やっぱ根っこに葵がおらんとどうしようもないな。
ていうかマジな話、葵がお店に出れやんってなったらどうしようか。最近ちょっと焙煎関係のことは教えてもらってできるようになったけど、おいしい淹れ方なんかはまるでわからないままである。うーん、喫茶の方からコーヒーが消えちゃうのか。葵が風邪で数日寝込んじゃった、ぐらいならそれでギリギリ回せるかもしれやん。仕入れの方はウチだって多少慣れてるし、それでも迷うようならそれぐらいは聞いてもいいだろう。けど三か月入院とかになったら、さすがに入院中の妹に聞きに行くのは気が引けるし、そもそも普段二人で回してるもんを一人で三か月もキープできない。そんときは潔く臨時休業やな。
逆にウチが動けやんくなったら…うん、不安やな。久しぶりに店に戻ってみれば仕入れまくって捌ききれなかった豆の袋が山積みに、みたいな光景が余裕で想像できてしまう。こっちの場合もお休みやな。もししばらくお店が開いてないようなことがあったら、あの姉妹のどっちかになんかあったんやなと思っていてください。