コトノコーヒー 姉の呟き   作:みえふぁ

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助かってはいるけれど

前から思ってたことではあるんやけど、ウチとアホは店でやることがだいたい同じである。テーブル拭いて接客してお客さんとしゃべくっとるだけ。コーヒー関係を葵にぶん投げちゃってるから、違いはせいぜいお菓子作れるかどうかぐらいだ。それだって、簡単なものならやり方さえ教えりゃあいつも作れるようになるやろうし。まあそれでも、例えばウチも手が空いてるときは在庫の管理とかしてるわけで、その間に自分の代わりをしてくれる人間がいるってのはだいぶ楽になったりする。お店閉めてからの後片付けもちゃっちゃと終わるし、少しづつ時間に余裕ができてきた感じだ。これで仕事中に余計なことをしなけりゃなおのこといい。

 

楽やし助かってるんやけど、なんかこう、バイトちゃんのときほどのありがたみはない。お店の忙しい忙しくないもあるやろうし、こいつが今ここにいる理由なんかも考えればまあ当然っちゃ当然なんやけど。そう、言わなくても勝手に察してやってくれるのは助かるけど、バイトちゃんに存在したかわいげはないのだ。「言わんでもやってくれる便利なやつやな~」って具合である。なるほど、新人バイトちゃんに先輩面しながら仕事を教えるっていうのも、モチベーションアップにつながっていたのだろう。たぶんこいつがおらんくなったところで寂しさは一つもなく、便利な道具がどっかいっちゃったぐらいにしか感じないだろう。ていうか今までだって勝手に店手伝ってたわけやから、そら何の特別感もなくて当たり前か。

 

それと、ほっとくといらんことをしだす。店の音楽勝手に変えたり、置物でタワー作って遊んだり。まあ時間帯によっては暇なときは暇なんでしゃーないかと思わんでもないし、タワーについてはウチも途中から一緒にやってたわけやけど(あとで一緒に葵に怒られた)仕事中とは思えないくらいには自由なやつだ。店の中に置いといたところで余計なことしかせんなと思って店の前掃除しとけと追い出してみれば、ウェルカムボードを好き放題描き加えていた。入荷した豆とかはそのままに、文字の隙間に絵を詰め込んだ感じである。レイアウトも何もあったもんじゃない。私だってもうちょっと丁寧に描く。しかも一部、ウチがすでに描いてあった絵を消してその上から描いてたもんやから、葵に連行されるまで店の前でしばらくギャーギャー言い合ってた。何がヘタクソじゃ、お前も大差ないやろうが。

 

仕事の量自体は減って時間に余裕もできたはずなのに、ここ最近のほうがよっぽど疲れている。やっぱ袋詰めにしといたほうがいいんじゃないだろうか、こいつ。


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