コトノコーヒー 姉の呟き   作:みえふぁ

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支えてあげるつもりはあまりない

昨日の夕方ごろに新しい豆が届いたので、仕事終わってから三人で飲んだ。とりあえず一口目の感想は自分の好みだなあというぐらい。ただ、値段のわりにはちょっと物足りないかな?と感じたし、売りに出す価格をもう2、300円下げてもいいんじゃないか?とか考えたけど、二口目以降で印象ががらっと変わった。きちんと深みがあって、このコーヒー特有の味なんかもする。こうなってくると、なるほどあの値段で納得というものである。私の好みのコーヒーは何というか、スマートだけど頼りない感じのものが多いのだけれど、このコーヒーはしっかり構えつつ自分好みの味をしていた。葵ちゃん曰く「誰でも飲みやすい味」らしいので、普段もう少し低めの値段帯の豆を買っている人も、ちょっと奮発して手を出してみてはいかがだろうか。

 

さあさあ、ここまで読んで違和感を覚えた人はどのくらいだろうか。その違和感の正体にまで気づけた人がいたのだとしたら、貴方はよくこの店に通っていて、よっぽどこのブログを読み込んでいるに違いない。まあ私も似せて書こうとしているわけではないので、バレる人にはバレちゃうと思う。今度やるときはまるっきり似せてやってもいいな。

 

たぶん先輩にあたるであろう件のバイトちゃんは名前を出しているようだけど、きっと私の場合は「アホ」という名前の方がより皆さんに馴染みがあると思うので、そちらで名乗らせてもらう。現在こちらに居候中の人間である。茜にはさっき酒を飲ませたうえ、しこたまくすぐってきてやったのでしばらく動けないはずだ。そうして部屋の物色を始めようかというタイミングでPCを見つけたので、親切で優しい友人たる私は代わりにブログを更新してあげているというわけである。パスワードは意外と安直ではなかったけど、あれがどれだけ頭をひねったところで限界が知れているし、思考回路自体はどうせ私と同じなので突破は楽勝だった。動画サイトの再生履歴とかも後で漁るつもりだ。

 

働いてみて思ったが、この店はなんとも複雑なバランスで経営が成り立っているらしい。言っちゃあれだが結構杜撰だと思う。葵ちゃんは特に見通しもなくポンポン豆を仕入れているし、茜もそれを制御して導こうとはしているけど、最初の頃はともかく、最近は妹に甘くなっていると思う。しかし客に愛され商社に愛され、あとだいぶ運にも愛されているようだ。私ももしかしたらその歪なバランスを支える一つになってしまっているのかもしれないし、これを読んでいるあなたもその一人なのかもしれない。何だか恐ろしい話だなあ。でも多分、全員が好き放題やった結果だと思うので、お客さんも好きに買えばいいんじゃなかろうか。私も好きにするつもりである。

 

あそうだ、明日の昼に気が向いたらヴァイオリンの演奏します。


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