ふりむいてくれアムロ   作:初心者にはマシンガンがおすすめだよ!

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 ガルマの一人称が僕になってるのは、昔はそうだったっぽいからそうしてます。








 「では、これが?」

 「ええ、ジオニック重工の大型作業用クレーン、ザクです。」

 

 

 私の目の前に悠然と立つ巨大な人型金属塊。

 

 その頭は、ひょっとこか、絵にかいたタコのような、いや、防毒マスクの方が近いか。

 特徴的な頭に付いた、特徴的なモノアイカメラに反射して、私の顔が映るそれは、あの有名なモビルスーツの前身、ザクⅠや、旧ザクと呼ばれていたそれだった。

 

 

 「クレーン?」

 「はは、今はEDFにある、ギガンティックアンローダーバルガに倣ってつけられているだけで、やれることは遥かに多いですから、クレーンというのは不適切かもしれませんね。」

 

 

 彫りの深い厳つい顔の社員が、教えてくれる。

 

 政府主導で作られた、大型の人型建設作業用クレーンである、ギガンティックアンローダーに比べて、20m以上も小さいザクは、小型化、軽量化により、バルガより遥かに高い運動性能と、特に手に力を入れた、人を模したマニピュレーターによる細かい作業が可能なロボットだ。

 

 これらは、バルガを遥かに凌ぐ快適軽快な動きから、モビルスーツと呼ばれ、大小様々な企業が何社か技術共有を行って開発されており、ジオニックの物は特に量産性に重きを置いたものであるらしい。

 

 

 そう、私は今、あの世界にもあったジオニック社、ここではジオニック重工というらしいが、その工場の一つに訪れていた。

 この世界では、どういう因果かは知らないが、私の父、ジオン・ダイクンがこの会社を牛耳っている。

 

 ちなみに父は多忙の身で、ジオニック以外にも手広くやっているせいか、あまり私や妹と顔を合わせることが無い。

 欲しい物をねだれば、ある程度用意してくれたり、高価なものは常識を教えた上で用意してくれるから、悪い父親だとは思わないが。

 

 いや、買い与えまくってる辺りは良い父親ではないのか?

 まぁ、今のところは妹も素直に育っている事だから、良しとしよう。

 

 母については、シャアの母は原作では側室、愛人の立場だったはずだが、この世界では私の母、アストライア・ダイクン一人が父の妻である。

 

 母も、現在は父について回っており、直接顔を合わせることは無いが、父とは違ってビデオ通話をかけてくることが多く、妹が楽しそうに話しているのをよく見る。

 

 私は、別に今世の両親が嫌いというわけではないが、何となく接し方が分からず、若干距離を置きがちになっている。

 照れ屋な思春期男子の気難しい感じとして受け取ってくれないかと期待しているが、要は逃げているだけだな。

 

 

 ジオニックの社員の話を少し他の事を考えながら聴いていると、退屈していると思われたのか話題を変えて来た。

 

 

 「どうです?この本物には載せられませんが、シミュレーターもありますし、試してみますか?」

 「一応、私は部外者の立場に近いと思うのですが、構わないので?」

 

 「ジオンさんのご子息、というだけでも十分ですけどね、開発から聞いてますよ。ジオンさんから渡された、キャスバルさんの発想が、ザクの開発の大きな助けになったと。就職先はジオニックに来てくれないかなんて事も言ってましたから、これは私たちの総意ですよ。」

 

 「発想……??」

 「ええ、このザクという名前も、そこから取ったのだとか。」

 

 

 まったくもって身に覚えが無い、と一瞬思ったが、思い出した。

 

 まさかあの親父、私が子供の頃、暇すぎて仕方なかった時に書いたザクやゲルググの設定資料集みたいな落書きを、大人の仕事場に持ち出したのではないだろうか。

 

 …………そうか、1年前くらいに急にいつもより大きな上がり幅で、毎月私に与えられる小遣いがアップしたのは、そのせいか!!

 

 その日はちょうど妹の誕生日で、妹の小遣いも同時に増えていたので、あまり気にしていなかった。

 

 

 そんなに大したことは書いていないはずだが、何年も前で記憶が無い。

 あったりなかったりするL字シールドだったり、特徴的な丸い肩の装甲は無いにせよ、よくもまぁそのまんまなザクが出て来たと思ったが、それは必然だったのだろう。

 

 手で目を覆ってしまうほどの羞恥心がこみ上げるが、自由に使えるお金も増えて、ついでに人の役に立ったのだと、自分を納得させて、ジオニックの社員に案内をお願いした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 『どうです?シミュレーターでもコクピットは本物と同じ規格だから、本物の雰囲気が味わえると思いますよ。』

 「おお……すごいですね、感動しています。」

 

 

 サイズは倍以上だが、戦場のきずなんとかみたいな、周りが覆われたコクピットに入ると、作中や、ネットで流れて来た設定資料集で見たような、あのコクピットがそこにあった。

 

 あまり知らないが、飛行機などのコクピットもこんな感じなのだろうか。

 

 

 シートに腰掛けると、周りにある様々なモニターや機械類に、近年覚える事の無かった興奮を覚えるが、同時に自動車くらいしか乗ったことがない私には、空間の広さが少しだけ落ち着かない。

 

 正面の大きなモニターに映る市街地の映像は、ビルなどはよく見るとのっぺりしているものがあるが気にならない程度で、リアルな空気感を感じる映像と視点の高さが、高揚感を生み出す。

 

 これが、モビルスーツの、あの主人公たちが見て来た光景なのだと思うと、胸が熱くなる。

 もちろんこれは、二重の意味で別物、偽物だが。

 

 

 『これはシミュレーターなので、レバーとかを無理に動かさなければ失敗しても構わないですからね。とはいっても、簡単に壊れるようなものは無いですけど。一応資料は渡してありますが、口頭で操作説明を改めてしますか?』

 「いや、ある程度の動きはプログラムされて、細かい作業はあまり必要ないんですよね?よければ色々試させて頂きたいのですが。」

 

 『構いませんよ。近くで別の作業をしていますので、何か聞きたいことがあれば言ってください。通話のオンオフは分かりますか?』

 「大丈夫です、ありがとうございます。」

 

 『では、各電源を入れたらテストミッションが始まるようになっているので、楽しんでください。』

 

 

 

 プツッ、と通話が切れたので、私からも装置のスイッチを切っておく。

 

 今はメインモニターの電源だけが入っているので、他の動力部やサブカメラのスイッチを入れて、起動させていく。

 

 ぐいんぐいん、と徐々に振動と共に機械が動き出す音がして、いろんなランプやスイッチが光りだす。

 サブモニターなども立ち上がり、短い時間、『ALL GREEN』の文字が光った。

 

 

 しばらくすると、メインモニターの右端に、図と文字が浮かび上がる。

 内容は、『ビルの解体後資材の運搬』。

 

 ターゲットマーカーを頼りに、私のシミュレーションは始まった。

 

 

 しかし……今も平然と市街地を歩いているが、本当にこんな運用を行うのだろうか。

 お偉いさんのやることは分からないが、バルガが作られたんだから、需要はあるんだろうなと、今はシミュレーションを楽しんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「キャスバルさん!詳細はまた送りますが、バイト代はしっかり出るので、またテストパイロットをしにいらしてください!」

 「ええ、学校や家庭の都合がつけば、お願いします。」

 

 「上司に掛け合ってジオンさんにもこちらからお願いしておくので!是非にも!」

 「ハハハ……では、失礼します。」

 

 

 シミュレーター、そしてジオニック社を後にして、迎えの自動車で帰路に着く。

 

 半分くらいはマニュアルを見ながらの操作だったが、後半はまさに手足のような感覚で動かせるほどになり、社員たちを驚かせるような結果が出てしまった。

 

 これもこの曰く付きの身体の成せる技なのだろうか、他の事でも優秀なこのボディは、やはりシャアである事を強く思わせた。

 

 普通にゲームを遊ぶように操作が楽しかったこともあるし、バイト代も出るらしいので、テストパイロットを続けても良いと思う。

 

 コネがあってよかった。

 帰ったら両親に相談しよう。

 

 

 少しばかり疲れた脳を癒すように、窓の外で流れる景色を見ていると、運転手をしている男が話しかけて来た。

 

 

 「ザクのシミュレーターは楽しめましたかな?」

 「ん?あぁ、なかなか……というと、知っているのか?ランバ。」

 

 

 運転手は、ランバ・ラルという。

 どこかで聴いたような名前だろう?

 

 年齢は20代後半といくらか若いが、最近生やし始めた口ひげを含めて、その面影は十分にある。

 ちなみに彼の父は、私の父の右腕的存在だ。

 

 ランバは、両親が家に居ない私や妹の、使用人のようなものだ。

 本当はちゃんとした使用人は別にいるのだが、一番多く私たちに関わって、世話を焼いてくれているのはランバだな。

 

 

 「先日、父ジンバに叩き込まれましてな……。シミュレーターで、転倒時の衝撃などのテストをさせられましたぞ。操縦そのものは楽しいものでしたが、あの衝撃は中々堪えました。」

 「そうか、私の時は転倒などはしなかったから、楽しいだけだったな。」

 

 

 ランバは、車のシート越しにみても体格が良い事が分かるから、そういう点でも選ばれたのかもしれない。

 恐らく、身内で使い勝手が良さそうだから呼ばれただけのような気もするが。

 

 しかし、確かに言われてみれば、いくらか抑えられている歩行の揺れなどは感じたが、他のモビルスーツで転ぶようなことは無かった。

 

 モビルスーツが生まれてしまった以上、恐らく私がアレに乗って、大人しく作業をするか、戦うかは分からないが、何かをするのは確実だろうし、そういった不測の事態に備えるのは、悪くない話だろう。

 

 

 「最近は身体も鍛えておられるようですし、一度試されるとよろしいですぞ。もしかしたら本物に乗る事になるやもしれませんからな。」

 「次やれるようであればそうする。」

 

 

 ランバの後押しもあり、私はテストパイロットのバイトをもぎ取らねばならぬと決意を固めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「おはよう、シャア。」

 「ガルマ?今日は早いんだな。」

 

 

 無事、テストパイロットのバイトの許可が降りた翌日。

 

 あんまり家に居座っては、家事の邪魔になるかと、自分と妹の弁当をささっと作って朝早めに学校へ行く私に、いつもは私よりかなり遅れて出てくるガルマが話しかけて来た。

 

 相変わらずの甘いマスクで、いつもの癖で前髪を指に巻き付けて弄っている。

 ザビ家特有の切れ長の目だが、柔らかい表情がそれと上手い具合にマッチして、貴公子感を上げている。

 

 ガルマは元の作品でも一貫してそのような扱いだと思うが、それに比べて私は変な仮面でニヤついたり、グラサン呼ばわりされたり、散々だと思う。

 

 普段はそれらを避けている……といっても仮面はあるはずもないから、避けているのはグラサンだけだが、一度面白がって試しにグラサンをかけたら、それをたまたま見ていた妹が気に入ったせいで、たまにつけされられて出かけることがある。

 

 恐らく、私はその内、空手経験のあるヤバい奴にパンチされる運命を辿るのだろう。

 

 

 「知らないのか?シャア。」

 「なんだ、勿体ぶらずに言ってくれ。」

 

 

 少しだけ、ニヤニヤというような雰囲気で笑うガルマ。

 恐らく、生徒会だのなんだのの関係で、先に情報を手に入れたから、私に自慢したくて早く出てきたのだろう。

 

 得意気にしている顔は、間違いなくイケメンではあるのだが、この時ばかりは少し殴りたくなった。

 

 

 「フフ、今日はなんと転校生が来るらしいぞ。」

 「ほう?初耳だな。」

 

 

 得意気に話すガルマの訳を知って、納得する。

 

 社会に出れば人の所属の出入りなどは、日常茶飯事だろうが、学生生徒からすれば、一大事なのは間違いあるまい。

 

 見てみれば、この話が聴こえた他のクラスメイトも少しばかり浮足立っているようだった。

 

 

 「アナハイム・エレクトロニクスの開発部長の息子と聞いていたが、ジオニックの君は知らないのか?」

 「何、そうなのか?……いや、私自身は積極的にジオニックに関わっている訳では無いからな。」

 「ふむ、そうなのか。まぁ、アナハイムとジオニックには、アレの共同開発の件もあるんだ、意外と気が合うかもしれんな。」

 

 

 小声で耳元で、更に、今はまだ機密であるモビルスーツの事を濁してそういうガルマ。

 

 ガルマは、政治家のデギン・ザビの息子で、モビルスーツの開発は、バルガの時と同様に、政府の手が入っているから、伝え聞いているのだろう。

 

 モビルスーツの話そのものは、一般にも知られている話ではあるが、まだ本格的な公開はされていない事もあり、政治家の息子らしく、一応言葉を選んでいるに違いない。

 私も、精神年齢的に息子か、甥のように見ていたガルマの成長を嬉しく思う。

 

 

 「その噂の転校生はもう来ているのか?」

 「それっぽい車は見たのだけどね、詳しく見る前に僕が姉上にさらわれてしまって。」

 「じゃあ仕方ないな、今日のイベントの一つとして楽しみにしておくことにしよう。」

 

 

 そういって私は、他の本に偽装した、モビルスーツについての資料を読み始めた。

 

 ……中身に目ざとく気付いて、隣で覗き込むように見だしたガルマが少し暑苦しくてうざったかったのは秘密だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そしてその日、私は出会ってしまった。

 

 

 「初めまして、父の仕事の都合で転校してきました、アムロ・レイです。趣味は……機械いじりです、よろしくお願いします。」

 

 

 拍手だの、よろしくー!だの言っているクラスメイトを後目に、私は茫然とアムロと名乗った茶髪天然パーマの素朴な少年を見つめてしまう。

 

 アナハイムの開発部長の息子と聞いて、この可能性を考えておくべきだった。

 

 2席ほど横に離れたガルマが、少しだけ身を乗り出して、茫然とする私を怪訝な表情で見ているのが視界の端に見えるが、反応している余裕は無かった。

 

 

 私は、予想はしていたが、今ではないだろうと思っていた、シャア・アズナブルの因縁のライバルとの遭遇を前に、彼の背後に白い悪魔の姿が見えた気がした。








 原作アムロとシャアは全然同い年じゃないですけど、シャアに合わせました。

 今のところ、姿が出てないシャアとアムロの関係者は、今後出すか出さないかについては、全く決めてないです。
 最後まで出てこなかったら蟻にもぐもぐされたりサンダー!したり、糸に巻かれたってことです。基本特に描写はしません。
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