ふりむいてくれアムロ 作:初心者にはマシンガンがおすすめだよ!
「どうしたんだシャア、様子が変だぞ。」
「いや、何でもない……。」
HR後の一時限目が終わった後の休み時間で、数人のクラスメイトに囲まれるアムロを見ながらそういう私の姿は、何でもないで片付けることは出来ないだろう。
現にガルマが私を見る目は、心配している様子がありありと分かる。
表情が分かりやすいガルマだと、なおさらだった。
「知り合いなのか?その様子だと、あまり良い関係ではなさそうだが……。」
「いや、初対面さ、見たことはあるが。」
「MS関係か?」
「いや……いや、まぁ、そういう事にしておいてくれ。」
煮え切らない私の返答に、納得のいっていないような表情を返したガルマが、何か力になれる事があれば何でも言ってくれ、と言いながら、次の授業の準備のために自席に戻った。
シャアじゃないが、本当に良い友人だと思う。
いや、シャアなんだけども。
クラスメイトの質問に対して、しどろもどろになっているアムロを見る。
よく見ると、質問しているクラスメイトは機械工学の類に興味がある連中が集まっているように見える。
ジオニックに関わる者も居る。
あまり慣れていないのか、最初はややひきつった表情で対応していたアムロだが、何かを話すうちに、少しだけ表情を引き締めて、会話をしているようだった。
この学校は、小中高大一貫の超マンモス校の上、それに伴って色んな意味でかなりランクも高めの学校なため、学力も、規模も、施設のレベルも高い。
高等部から、学びたい分野でクラスが分かれるが、中等部まではそうではない。
興味が無かったからジオニック関係者以外はあまり調べていないが、アナハイムの関係者もクラスに数人はいるはずだし、私が把握してないあの中の何人かは、そうなのかもしれないな。
じっと見ていると、ふとジオニックの関係の一人が、私の方を向いて何かを言うと、アムロを含めた全員がこちらを向く。
アムロとも目が合い、少しぎょっとしたが、軽く手を振って対応した。
アムロが居る可能性は十分にあると思っていたが、もう少し後だと思っていたので、これからどうなるか分からない。
ましてや、クラスメイトとして、友誼を結べる立場になるとは思いもよらなかった。
EDF……地球防衛軍とかいう謎の全世界規模組織がある世界だ、何が起こるのか分からないが、ひょっとしなくても私はそこに巻き込まれることになるのだろうとは思っていた。
だからこそ、武術を習ったりだとか、軍人に混ざって訓練を体験させてもらったりだとか、私にはあまり漏れないようになっているが、EDFの兵器開発もしていたりする、ジオニックに父を通して関われるようにもしている。
元々のアムロとシャアの関係は、基本的には敵の立場だと思う。
仲良く出来ている時期もあったが、彼らの最期は意見の相違による諍いの結果、もろとも……のような感じだった気がする。
何かしらのきっかけで、私はアムロと敵対して、この身を破滅させる事になってしまうのだろうか。
とはいえ、私はザビ家に恨みはないし、両親も妹も存命なわけだから、最悪アムロは忘れてどこかへ行けばいいだけだ。
今は少なくともジオニックに関わる場所へ就職予定だが、そうでなくともやっていける能力はある。
いつの間にか教室に入ってきた教師の声で、私はいったん考えるのをやめた。
特にアムロとの接触はないまま数日が過ぎて、今は日曜日。
アムロ側は、私が気になるのか、ちょくちょく視線を向けて来ているようで、こちらもあまり授業に集中出来なかったが、学校にいる間、お互い話しかける事もなく、さらに放課後の私は、さっさと学校を出て、ジオニック社へ行っていたので、機会は無かった。
テストパイロットのバイトだが、最近は、ザクの動きのパターンを増やす事に協力しており、流石に人間同様の俊敏さとは言えないが、無駄に格闘技のような動きが出来るようになっている。
モビルスーツは、2つのレバー、2つのペダルをメインで姿勢制御や移動を行い、レバーのボタンや、操作パネルのボタンと、その組み合わせなどで、ある程度決まった動きをする、セミオートで操作するようになっている。
元々は、歩いたりだとか、掴んで持ち上げるだとか、手に持ったものを振り下ろすだとか、そんなような基本的な最低限のプログラムしかなかったが、私の協力や、開発陣の悪ノリで、様々なパターンが組まれていった。
『じゃあ、今度はこのエリアで……ルールはこちらにして始めましょう。』
「はい、お手柔らかにお願いします。」
『くそぅ、余裕ですねぇ。今回は私が勝ちますから、こちらこそお願いしますよ、キャスバルさん!』
そして今は、シミュレーターを繋げて、ザク同士、1対1でバトルを行っている。
私の相手は、開発者兼テストパイロットで、私より先にテストパイロットであった人間がほとんどだが、今のところ、モビルスーツに教育されていない動きを反射的に使おうとしてしまった時以外、私は負けていない。
私がパターンを増やすたびに、そういったミスも減っている。
滑らかな動きでエネルギー効率や、姿勢の安定性が向上したり、作業効率も上がっているため、ザク同士で殴り合っていても、特に咎められることはないどころか、むしろ推奨され、武器の使用まで許可が出た。
高熱の刃で資材を溶断する手斧、ヒートホークは勿論、急造なのか3Dモデルが安っぽいのが目立つが、バズーカやマシンガンなどの銃器が用意されて、最早元の目的が分からない。
一応、銃器について口止めされたので、そういったのも、EDFがらみなんだろうか。
EDFには既に兵器として、二足歩行兵器コンバットフレームが存在するが、ザクよりいくらか小さいそれは、武装の積載量は多いが、機動性は基本的にモビルスーツの方が上だと思う。
私はコンバットフレームについては、実際には歩いている所しか見たことがないが、数年前の他国の戦争の映像を見る限りは、その認識で問題ないだろう。
「惜しかったんだけどなー!私も格闘技とか、もっとやっておくべきでしたよ。」
「エンジニアなのに、短期間でこれだけ食らいついてこれるようになっただけ恐ろしいと思いますが。」
「ハハハ、キャスバルさんが帰った後にも、自主練を欠かさないようにしていますのでね。」
個人的には、もはやただのゲーム感覚で行っているシミュレーターは、連続で50分、休憩は最低10分と決まっている。
なので、休憩しながら他のテストパイロットと雑談や、モーションパターンについて話し合っていると、最初にザクについて案内をしてくれたジオニック社員が部屋に入ってきた。
「お、居た。キャスバルさんに是非会いたいとおっしゃっている方がいらっしゃるんですが、お時間頂けませんか?」
「私に……?分かりました。」
誰だろうか。
私とて、ジオン・ダイクンという世界有数の権力者のボンボンであることは自覚しているから、ここでも、学校でも、それ関係ですり寄ってくる者が居ない訳では無いが、そこまで畏まった風に言われることは無い。
少なくとも世間的には、私は少しだけ出来がいい子供の範疇に収まるレベルだろうと思っている
予想がつかないまま、私は社員に着いて行った。
開発部の、少し小さめの来客用会議室へ案内され、中へ入ると、見慣れてきた顔と、見知った顔がそこにあった。
「(アムロ・レイ……?)」
「キャスバルさん!?」
こちらを見て、驚くアムロへ、軽く会釈をする。
私を呼び出したのは、このアムロ……ではなく、恐らく隣にいるテム・レイ……アムロ・レイの父親と思しき人物だろう。
テム・レイと思しき人物は、お互いに驚いていた私とアムロに、少し驚いていたようだったが、納得した表情で頷いた。
「初めまして、キャスバル・ダイクンさんですな?私は、アナハイムの開発部長をしている、テム・レイと申します。こちらは息子のアムロですが、どうやらお知り合いのようで。アムロ、もしかして同じクラスか?」
「うん、そうだよ父さん。実はまだ話したことはないけど……。」
アムロの後半の言葉は聞き取れなかったが、やはり、この少し頬がこけた眼鏡の男性は、テム・レイだった。
アムロとは、髪色や目つきは似ていないが、雰囲気は親子を思わせる雰囲気ではある。
「初めまして、キャスバル・ダイクンです。ジオニックでは、アルバイトとしてテストパイロットをしています。私に会いたいとお聞きして来ましたが……」
「おお、そうです!実は、私は今、モビルスーツのOS関連の開発を主に進めておりましてな。もちろんジオニックさんとも技術交流を行っております。そこで先日、ジオニックさんから素晴らしいモーションデータを頂き、そこでキャスバルさんを知りましてな。」
「ほう、恐縮です。」
テム・レイというと、かの有名なガンダムの開発者として有名だろう。
この世界でもガンダムを作っているのかは知らないが、彼の言葉から考えるに、ザクには無いガンダムの特徴ともいえる、高性能な学習機能が付いたOSに関わっている可能性は高まる。
その関係で、私を知ったのは分かるが、モビルスーツ開発に強い執着を見せていた、あのテム・レイであるというならば、私と会いたいというほどの理由を浮かべる事が出来なかった。
「実は、御社の量産性重視のザクとは違い、当社では少数生産のハイスペックなモビルスーツを開発しておりまして。ガンダムと言うのですが、そちらに使うOSのデータ取りに、有望なパイロットのキャスバルさんに、是非協力して頂きたい。」
「私ですか?」
「あぁいえ、ガンダムに乗るのは、息子のアムロです。ガンダムには高性能な学習機能が搭載されておりまして、熟練のパイロットの方に相手をして頂いて、データ取りが出来ればと。アムロは私に似ず才能があるのか、アナハイムでは相手が限られましてな。」
テム・レイが、アナハイムが開発していたのは、やはりガンダムだった。
曰く、ガンダムのOSは、常にデータが蓄積、更にリアルタイムで最適な動きを計算、提案出来るような学習装置がついているらしく、その作業データを洗練させる手伝いをするということらしい。
建設作業などのモビルスーツ同士の協力作業の他、私が普段やっているような戦闘のシミュレーションもする予定らしく、ゴテゴテした装置がついたシミュレーターがあるのを確認した。
ジオニック側からは許可が既に出ていて、私の意思次第だという。
「熟練と言えるほど日を重ねている訳ではありませんが、お力になれるのであれば、是非。アムロさん、よろしく頼みます。」
「あ、はい。お願いします。」
ジオニックとアナハイムのシミュレーターの調整の兼ね合いなどもあり、実際の作業は後日
になるということで、今日は顔合わせだけで終わった。
私としても、朝からジオニックに来て、そろそろ9時間ほど経過する為、帰宅しなければならない。
モビルスーツを操るのが楽しくて、気づいたら休憩もほどほどに何時間も経過している事が多い。
同じテストパイロットたちは、長くても一日4時間程までしか乗らず、口をそろえて私に、若さのおかげだというが、恐らくそれだけではないのだろうなとも思う。
しかし、敵対という訳では無いが、あの白い悪魔と戦うことになるとは。
シャアに生まれたという事で、ジオン系のモビルスーツばかり書き残して、ガンダムは少しだけ頭だけを落書きしたという程度だった記憶があるので、ガンダムの名前や形は、私が何か関係している訳では無いと思う。
それでもいま現在、かの白い悪魔であるガンダムと変わらない特徴が出ている事を考えると、私があれと戦うのは必然の運命なのかもしれない。
モビルスーツの頭部だけで逃げ回ったり、腕と足をもがれたり、脱出ポッドのまま隕石に埋められるようなことが無いと良いな、と思いながら、その日は家に帰った。
アムロとの演習が始まって約2週間。
『そこっ!』
「甘い!」
『何!?うわぁっ!』
敵機を覆い隠すように視界を塞ぐシールドごと撃ち抜いて来たビームを、スライディングで回避しながら開けた視界でマシンガンを撃つ。
ばら撒かれたマシンガンの弾は、いくつかがビームライフルを持つ手に当たり、衝撃でライフルが手から離れるのが見えた。
即座に立ち上がる勢いそのまま、ヒートホークを下から振り上げるが、頭部のバルカンで軌道を逸らされ、ビームサーベルの光が横から飛んできて、マシンガンが真ん中から真っ二つに斬り裂かれる。
アムロとの戦いは、今日で10日目だ。
最初の5日間ほどは私にも余裕があったが、アムロの成長率と、モビルスーツの性能差もあり、この短期間でひやりとさせられる場面が増えた。
残ったマシンガンの半身を投げつけ、その隙にガンダムを蹴りつけて距離を離したが、その一瞬の間に、肩のL字のシールドが斬り飛ばされた。
ビームサーベルの火力は、ヒートホークとは比べ物にならない。
プラズマコアと言うジェネレーターから供給されたエネルギーそのもので出来た刀身は、長さは限られているが、火力、そして長さもヒートホークの比ではない。
勿論生産コストも比ではないし、刀身を出していられるのは10秒で、チャージに30秒以上かかる上、エネルギー残量が減ると威力はヒートホーク以下になる。
とはいえ、慣れてしまえば、斬る瞬間にビームを出せば良いだけ。
今のアムロは、20回以上、必殺の一撃を繰り出してくるキリングマシーンだ。
「ちぃっ!?相変わらず何て火力だ!」
『くっ、ライフルが!』
そのまま落ちたビームライフルを奪って、体勢を崩したガンダムに向かって撃つ。
当てずっぽうだったが、何とか足に直撃したビームは、ガンダムの機動性を奪い、そのままコクピット部分を撃って試合終了。
なんとか、今回は勝利することが出来たが、ここ最近は、5回やって2回ギリギリ勝てる程度で、モビルスーツの性能の差を埋めることが出来なくなっている。
「キャスバルさん、なんでこの性能差で勝てるんですか?」
「運が良かっただけですよ。」
シミュレーターから出て、近くの休憩所で休憩をとる。
ジオニック内で訓練するだけだった時は、数時間ぶっ通しで演習を行っていたが、アムロとの戦いは精神が激しく疲弊するので、何戦か、大体30分もやったら休憩をしている。
「盾だけではなく、右肩を損傷していたらやられていた。もう少し手加減をしてほしいな、アムロ。」
「よく言うよ。ザクⅠでこれなら、ザクⅡになったらどうなるんだ。」
「ガンダムだって装甲と機動性を上げた2号機の開発がされているんだろう。仕方ないとはいえ、今の1号機ですらもザクⅡじゃ若干スペック負けしているらしいのに、これ以上強くなって貰っては困る。」
「どうだか。どの道、ガンダム同士で試した時は、初乗りだったくせに圧勝だったじゃないか。僕は二週間以上乗ってたのに。」
「3日も前の話だろう、それは。」
「まだ3日だよ、キャスバル。」
戦ううちにお互い慣れて来たのか口調の砕けたアムロと、軽口を叩き合う。
濃密な機体の交わし合いが、急激にアムロとの距離を縮めてくれて、嬉しい結果だった。
今こうして捻くれたように話すアムロだが、表情は柔らかく、友人と認めてくれているのだろう。
学校でも、会話することが増えたが、ガルマとは慣れないのか、その時は少ししどろもどろだが。
ガンダム……元の宇宙世紀では、プロトタイプであった今のガンダムは、色こそ白い悪魔であるあのガンダムと同じだが、細部が違うし、性能もザクの1.4倍程度の運動性能のものだ。
これが、資料を見せてもらった時は、白い悪魔そのままの姿だった2号機なると、ザクの1.7倍の性能になるらしい。
ジオニックの新作、ザクⅡも開発が進んでいるが、コンセプト的にどうしてもコストの問題で、そこまでの性能は出ず、現行のザク、ザクⅠの1.3倍程度だ。
ガンダム2号機も、ザクⅡも、私とアムロが張り切りすぎた結果生まれてしまった、予定に無かったハイエンドモデルで、父にあまり開発陣を焚きつけないでくれと、遠回しに言われてしまった。
まぁ、その辺りは、父の経営者としての腕を信頼するとして、私はモビルスーツ捌きに磨きをかける事を止めるつもりはないが。
「いよいよ明日だな。」
「あぁ、まさかバイト上がりが実機に乗る事になるとはな……。」
この短期間で、私はバイトから昇格していた。
学校に所属はしているが、私の立場はジオニックの社員とほぼ変わりないまでになっている。
それが良いか悪いかは分からないが、どうしても実機に私を乗せたかったらしいジオニック開発部の強い要望があり、反対だった父が渋々許可したらしい。
無論、実機に乗る時は、戦闘演習などをしないことを念押しされているし、その手のモーションプログラムは制限がかけられる予定だ。
そして明日は、実際に初めて本物のモビルスーツを操る。
もっとも、これがモビルスーツの初めての稼働テストではなく、私が行う初めて、というだけではあるが。
ザクやガンダムは、既に一般に情報がある程度公開されていて、今度の試験は、外部へ公開する参考資料になる予定だ。
場所はEDFが貸してくれるそうで、どこで行うかは分からないが、どこかの基地で行うのだろう。
「寝坊するなよ、アムロ。」
「し、しないよ、多分。」
元のアムロも、今のアムロも、寝坊ではないにせよ、遅刻の前科があるから、一応念押ししておくことにする。
そしてその日、地獄の門が開く。
楽しいモビルスーツ実験などは無い。
「なんだあのデカい蟻は……!?」
「アリ?あれが何か知っているんですか!?」
「あんな巨大なものは知りませんよ!それよりアムロはまだ着いてないんですか!?」
「何度も電話をかけてはいるんですが、こうなる前に遅刻の連絡が入った以降は…………!?」
「どうしたんですか!?」
「誰だ勝手にガンダムを動かしているのは!?」
「何!?もしや、アムロ……?」
「コンバットフレームは起動に時間がかかる……。だけど、ガンダムなら……!」
阿鼻叫喚の様相。
鋼のような甲殻を持った化け物が、当たり前の顔で暴威を振るう。
私は、生き延びることができるか?
後2話でどうたらとか言ってた気がするのに、適当に書いてたらギリギリでほぼ詐欺みたいになってしまって申し訳ない。
MSの性能とか、キャラクターの口調とかがかなりオリジナルというか雑に書いてますが、そっと流してください。気になったらステルス修正します。
後、シャアと仲良くさせると、どうあがいてもアムロが好青年になっていってしまう不具合。
アムロは内弁慶だからオッケー(自己暗示)、偉い人にはそれがわからんのですよ。