【ここは】クロスオーバー系転生掲示板【何の世界だ?】   作:ファルコン・Σ

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今回はウィザード編です。



希望の開花――指輪の魔法使いと禁忌教典

―――指輪の魔法使い。

陽気な歌声にのせた詠唱を奏で、円舞のような華麗な舞いと共に、輝く白銀の剣を以て、この世に蔓延る絶望を祓う、希望の魔法使い。

 

そんな、御伽噺のようなヒーローが居る世界

 

 

 

 

街中にあるとあるBARの一席。

貸し切りのように他に誰もいないテーブルに指輪をした青年が一人佇んでいた。

その右手には赤いルビーの、左手には橙の琥珀を用いた指輪が嵌められている。

 

「………ふふ、凄いなあ」

 

瞼を閉じながらそう呟く彼の脳裏には―――黄金の剣士が紛い物の不死の怪物を倒す姿が映っている。

そう、彼は転生ライダーの一人……仮面ライダーウィザードである『ハルト・リングラゴン』である。

そんな彼が今此処にいる理由だが、とある人物に呼ばれてのことだ。その待ち合わせをしているのだが、待っている間、暇な時間を同胞である仮面ライダーブレイドの戦いを観戦していた、というわけだ。

 

「おーい、ハルト~」

「んっ……ああ、グレン。久しぶり」

 

そんな彼の前に現れたのは帝国宮廷魔道士団特務分室執行官の制服に袖を通している青年―――グレン・レーダス。

そして彼に続いて入店する白髪に右頬の刻印が特徴的なセラ・シルヴァース。

ハルトの元同僚であった。

 

「今日は二人でデート? イヴが嫉妬するよ~?」

「バッ、おま、そういうこと言うの相変わらずだな!?」

「イヴは忙しいからね。あんまり意地悪な事言っちゃダメだよハルト君」

「勿論、分かってて言ってるから」

 

一年前に起きた「天使の塵事件」において、ハルトはイヴの命令を無視してセラの救援に向かい、本来死ぬ定めだった彼女の死という運命を変えた。

その独断行動の責任を取って彼は執行官を辞任。元からやっていたグレンとイヴの関係に決定的な亀裂が入る事を仲介して阻止し、姿を消した。

なお、これらの行動は全部善意ではあるが、何よりグレンの為だったりするのは隠してある。あとちょっぴり自分の為。

 

「で、呼び出した張本人は何処にいるんだよ?」

「うーん、もう来ると思「ん? 私は此処にいるぞ?」ッ……」

 

そう、ほんの一秒前まで空席だった筈の席から声。煽情的なドレスに身を包んだ金髪の美女、セリカ・アルフォネアであった。

驚きすぎて目を見開き、肩が上がった状態のまま固まっていたハルトはドッドッドッと鳴る心臓を落ち着かせた上で姿勢を整える。

 

「ふう……吃驚させないでくださいよ。それで、どうして俺、俺達を呼んだんですか?」

「うん? ああ、グレン達を呼んだのはただの善意だ。お前の元気な姿を見せてやろうと思ってな」

「いやいや、手紙のやりとりはしてますからわざわざそんなことで忙しい二人を連れ出さなくても」

「私はハルトに直接会えて嬉しいよ? グレン君も最近は暇してたしね?」

「おい俺を巻き込むなッ!」

「何だ? お前は別にハルトの事はどうでもいいと思っていたのか?」

「そういうわけじゃッ……クソがあ!」

「諦めなよグレン。女性二人に勝てるわけないじゃんか」

 

クスクス笑うハルトを恨めし気に睨んでいたグレンだったが、やがてその表情も苦笑に変わる。

 

「ま、なんだ、元気そうで何よりだ」

「お蔭様でね。親友の子を見るまで死なないって」

「はは……待て子ってなんだ子って!!?」

「生まれてくる子が白髪だったらセラ、赤髪だったらイヴかな?」

「だからなんでお前の中では俺が二股掛けてることになってんだよ!?」

「私はグレン君との子だったらいいよ……?」

「乗るな白犬!! つかなんだその満更でもない表情は!?」

「男だったら責任取らなきゃ」

「まだなんもしてねえ!!!」

「まだ? ってことはいずれ二人を手籠めにする予定が」

「あるわきゃねえだろォォォォォォォォォォ!!!!!!!!!!」

 

此処にイヴも居たら割と執行官時代からよくある光景だったりする。

イヴはイヴでグレンを揶揄うことにやたらと生き甲斐(というかストレス発散)を憶えていたので基本的にグレンがツッコミを撒き散らすのがいつもの風景だった。

そんな賑やかな三人をクスクスと笑いながら見守るセリカに対し、一通り満足したハルトが向き直る。

 

「それで、セリカさん。俺を呼んだ本題っていうのはなんでしょう?」

「ああ、ハルト。お前は教師というものに興味は無いか?」

 

………一瞬、世界が固まった。というかハルトが固まった。

 

「ハルト、お前には一ヶ月間、アルザーノ帝国魔術学院の教師をやってもらいたいと思っている」

 

そして、グレンによる反撃の弄りが始まるのであった。

 

 


 

 

【緊急】どうして俺が魔術講師に!?【原作来た】

 

1:アルザーノ魔術講師ウィザード

というわけでどうすればいい?

 

2:スペードの剣@ノーネーム復興中

いやコテハンから既に乗り気じゃないか

 

3:装者全員と友達になる男

やっちまえばいいだろ!

 

4:カブト@ユニオン指揮官

寧ろ何を迷っているのか

 

5:アルザーノ魔術講師ウィザード

いやね。原作ブレイクした時点でやるんだろうなとは思ってたけどいざ講師となったらどうするべきか……

 

6:五代さんみたいになりたいクウガ

まあねえ、いきなりやれと言われても困るかもなあ

 

7:半蔵学園教師ヒビキさん

仕方ない。此処は俺が一肌脱ごうかな

 

8:鎧武が斬る!零

そういや現役の教師居たな

 

9:アルザーノ魔術講師ウィザード

お願いします響鬼ニキ!

 

10:半蔵学園教師ヒビキさん

おう、ビシッと鍛えていくからな?

 

 


 

Sideハルト

 

結局依頼を受け入れて、実際に教師として赴任するまでの一週間。

俺、ハルト・リングラゴンは響鬼ニキから教師として生徒との接し方や話す上でのコツを教わりつつ、今世の人脈をフル活用しまくって魔術理論だのの復習に費やした。

 

イヴからは「教えるのはいいけど、その光景後でじっくり見せてもらおうかしらね」

絶対弄る気だ。絶対そうだ。何故だ。俺はグレンとの仲を押し進めようとしただけなのに。

 

アルベルトからは「今まで手紙で済ませていたのをいきなり押しかけてきて教えを乞うのは人としてどう思う?」

正論ですねごめんなさい。今度飲みに誘うから。というか苦労増えた?

 

バーナードの爺さんには「若き教師とは羨ましいのう。可愛い生徒がおるんじゃろうなあ!」

そりゃいますよ俺は原作知ってるし。というかなんでアンタまで俺の事からかうのさ?

 

クリストフには「貴方ならば正しい形で導けるでしょう。応援していますからね」

いい奴だよ本当に。いやマジで。やっぱ執行官癖が強いよ。……なんかグレンから「お前が言うな!」って怒鳴り声が聞こえた気がするが無視!

 

そんなことをしていたらあっという間にその日になってしまったわけで。

 

「さて、と……」

 

ちなみに、俺は詳しいところまでは朧気ではあるけど、この世界―――「ロクでなし魔術講師と禁忌教典」の物語を知っている。

その上で言わせてもらうと……この時点で既に「ロクでなし魔術講師指輪の魔法使いと禁忌教典」になっちゃってるわけで。

 

その本来のポジションであるグレンはタイトル通りのロクでなし講師として活躍を始めたわけで、最初の印象は散々かつ最低かつ底辺からのスタートだったんだよ。

で、俺はそんな自分から信頼をどぶに捨てるような真似はしたくないしできないしで、そもそもこれからはもう、グレンじゃなくて俺自身の物語になるわけだから、俺のやり方でやらせてもらおう。

 

 

 

 

さてさて、俺が宛がわれたのはやっぱり二組。そりゃそうだよね。此処でクラスが違ったらいよいよ訳が分からなくなる。

ということで改めて入室。談笑していた生徒達が一斉に静まり返る。

ちなみに掲示板では俺のライブ中継が始まっているんだけど、スレ民皆して見守ってる。授業参観の気分なんだけど。教師なのに。皆そんなに暇なの? ブレイドニキのギフトゲームを観戦してた俺が言える事じゃないけどね?

 

「あ~。っと……皆、初めまして。俺は一か月間の臨時講師として今回派遣されたハルト・リングラゴン。好きな食べ物はドーナツだから差し入れしてくれる優しい子は覚えておいてね。よろしく」

 

一先ず自己紹介。響鬼ニキからもOKを貰えた。よし。

 

「じゃあ、個人的なプライベートとかの質問は授業が終わった後に改めて聞くとしようか。今日はとりあえず、俺がちゃんと教師として相応しいかどうかを皆に見定めてもらわなきゃならないね。皆は審査員ってことで」

 

そう言って俺は教科書を……うん、開くことは無い。

とりあえず閉じて教壇の上に置く。そんな俺の態度に少しざわつきが多くなった。

 

「まず授業を始める前に……一つ、皆に質問したいな。君達はこのアルザーノ魔術学園で魔術師になるために勉強をしているわけだけど……皆は魔術師になって何がしたい? うん、そうだね……じゃあウェンディちゃん、君の考えを聞かせてもらおうかな」

「え!? えっと、こほん、そうですわね……、やはり、魔術師として、そして貴族として歴史に名を残せる固有魔術(オリジナル)を生み出すのが目標ですわ」

「うん、立派だと思う。けど、俺の質問の答えにはなってないかな」

 

教室のどよめきが多くなる。その上で俺は会話を続けた。

 

「魔術師っていうのは称号ではあるけど職業ではない。皆は魔術を崇高で偉大なものと考えているだろうけど、反感覚悟で言うね。それは魔術というものを理解していないってことだよ」

「! どういうことですか?」

 

反応したのは猫耳っぽい髪が特長の、システィーナちゃん。

うん、確かにセラの面影はあるね。気が強そうなのはイヴっぽいけども。

 

「気に障る事を言ったのは謝るよ。けどね、魔術っていうのは言ってしまえば極論、『手段』であって『目的』じゃないんだ。さっきの質問を言い換えるなら、君達は将来、魔術をどんな職業に活かしたいかってこと。システィーナちゃんには成し遂げたい夢はある?」

「あ、えっと、私は……その、笑いませんか?」

「笑わないよ」

「メルガリウスの天空城の謎を解きたいんです。祖父への、誓いで」

「うん、立派な夢だね。じゃあシスティーナちゃんは魔導考古学者志望だ」

「はい」

 

今の時点で将来設計がしっかり決まっているなら、この子は将来有望だね。

 

「魔術を使う職業は沢山ある。愛国心があってこの国を守りたいなら宮廷魔導士を目指せばいいし、魔術の真理を追究することに人生を費やしたいなら魔導研究者かな。そういった「意味」が分からないままで魔術に憧れるのは正直おススメしないかな」

「どうしてそこまで言い切れるんですか?」

「ギイブル君だったか。そこにはリスクがあるからだよ。宮廷魔導士なら魔術を悪用する犯罪者を相手に命を懸けた交戦をしなきゃいけないし、魔導研究者なら実験中の事故で死ぬかもしれない。システィーナちゃんが目指している魔導考古学者は調査中に遺跡でのトラップとか災害に巻き込まれて……なんてこともあり得るだろうね」

 

俺の言った事例は実際に事故・事件として報道される事が多い。

それに目を逸らして魔術の価値を求めていたんだろうけど、申し訳ないが此処で目を覚ましてもらわないとね。

 

「言っておくけど、魔術の価値とか至高とかそういうのを聞いているわけじゃない。俺はあくまでも君達の将来に魔術をどう関わらせていくのかを説いている。それを踏まえて言わせてもらうと。この教科書の内容には正直何の意味も無い。例えば……」

 

俺はチョークを手に、黒板に文章、というより魔術の詠唱文を書いていく。

 

「俺は正直に言うと発動の方に才能が無くてね。最高でも二節詠唱が限界なんだけど、今回は分かりやすく、安定する三節詠唱を例に出そう」

 

書いた文章は《雷精よ・紫電の衝撃以て・撃ち倒せ》

 

「これは皆にとってもお馴染み、ショック・ボルトの詠唱だ。今更かよって顔する人が多いけど、じゃあ一節に短縮するにはどうすればいい?」

「そんなもの基礎中の基礎ですよ。《雷精の紫電よ》です」

「うん正解。じゃあさらに質問、()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

二発目の俺の質問に皆が一斉に動きと言葉を止める。

 

「うーん、やっぱりね。この教科書はあくまで英単語帳みたいなものでしかない。今必要になるのは言うならば国語力だよ。さっき言ったように重要なのは意味だ。ショック・ボルトという魔術は「電撃で相手を痺れさせる」という効果。その様を詞のように描いたのがこの詠唱。文章が意味を持つんじゃない。意味に文章が付けられたんだ。理論で言ってしまえば雷の精霊が本当に毎回ショック・ボルトを撃つ人の手助けをしてるわけない」

 

そう言いながら俺はグレン"先生"に倣い、右手を側面に向ける。

 

「魔術は理論で説明できる。崇めるのはいいけどそれだけだと到達できない地点がある。それを越えるためには現実として意味を考えないといけない。それが出来れば………《ビリッと・痺れろ》」

 

ドンッ! と右手からショック・ボルトが放たれる。

ざわつく教室を余所に俺は一つの指輪、ウィザードリングを取り出した。

 

「この指輪は、太古の遺跡や鍾乳洞で採れる、魔力を潤沢に込めた魔宝石を削って加工して作られた術式を内包した指輪だ。だけどこの魔宝石っていうのは加工するまではどんな術式も無い。これは指輪商のおっちゃんのイマジネーションと発想が「どんな魔術になるか」っていう形で定着して完成する」

 

指輪を填め直し、腰の掌型のバックルに添える。

 

『ドレスアップ・プリーズ』

 

「こんな感じで、ね」

 

俺の体を魔方陣が通過すると、白いワイシャツだった俺の服がピシッと決まったコートになる。見たこともない魔術に皆が興味津々だ。

 

「今日は改めて君達に「魔術に込められた意味」を教えようと思う。勿論質問は何時でも受け付けているから、気軽に聞いてくるように」

 

 

 

 

「よう、お疲れ」

「ん? ……なんだ、来てたんだグレン」

 

屋上で黄昏ていると仕事用の服ではない、ラフな来賓者用の格好をしているグレンに声を掛けられた。

何で此処に来てるのかは気になるけど大体予想はつく。

 

「イヴから?」

「まーな。お前がちゃんとやってっか見てこいってよ」

「で、その様を報告しろって?」

「そういうことだ」

 

ニヤリと笑うグレンに苦笑を返す形で応じる。

やっぱりこういう掛け合いは心地いい。グレンも本当に、昔と比べたら大分明るくなったみたいだし……。

 

「誰が明るくなっただよバーカ」

「あれ、何で心読めたの」

「口に出てたぞ」

「うわまじか」

 

あはは、と笑う俺につられて笑うグレン。

そんな彼は俺の指輪―――ウィザードリングを見つめた後に呟く。

 

「ハルト。お前やっぱり先生の方が向いてっぞ」

「んー? どうだろうね。案外グレンの方が向いてるんじゃない? 魔術への理解とか」

「アホ言え。俺はそんなめんどくせえことやりたかねえよ。ただ……お前の在り方はそっちの方が輝いてみえるぜ。指輪の魔法使い様」

「………そうかな」

 

空を見上げる俺。

グレンの語る。そして俺が背負う希望という言葉の重さを噛み締めるように、親友の言葉を何度も咀嚼して飲み込んだ。

 

「ハルト?」

「! ……ああごめん。ボーっとしてた。なんだ?」

「いんや? お前にお客さんだぜ」

 

我に返った俺がグレンの示す方を見ると、二人の女子生徒―――システィーナちゃんとルミアちゃんが居た。

 

「失礼します、先生」

「ん、システィーナちゃんとルミアちゃんか。どうしたの?」

「実は白魔術の件で質問したくて……少しお時間頂けないでしょうか?」

「うん、勿論いいよ」

「本当ですか!? すみません放課後なのに」

「いいよいいよ。俺は一ヵ月しかいないからね。いるうちに色々聞いておこうっという姿勢は嫌いじゃないよ。じゃあグレン、俺は……」

「おう、しっかり面倒をみてやんな。じゃあな。頑張れよ”先生”」

 

ぶっきらぼうに手を振りながら立ち去っていくグレンをキョトンとした表情で見送るシスティーナが俺の方に向いて質問する。

というかアイツ部外者なのにどうやって入ったんだろう?

 

「あの、今の方は……?」

「ん、俺の親友だよ。おせっかい焼きで捻くれてるけど、誰より純粋なね。さて、じゃあその前にちょっと小腹を満たそうか」

 

 

 

 

Side:三人称

 

「あらハルトく~ん!」

「よ、店長」

 

やたらとショッキングピンクなワゴンカーにオネエ風な店長。仮面ライダーウィザードでお馴染みのドーナツ屋「はんぐり~」である。

「なんでこの世界に!!?」とはスレ民達の総意であった。今更ではあるが。

 

「ねね、今日の新作食べてかない? 今日は~」

「いつものチョコリング」

 

ガクッ、とずっこける店長さん。

プレーンシュガーではなくチョコリングしか食べないハルトであった。

 

「んもう、やっぱりそうよねえ……」

「ちなみに新作は?」

「どうせ食べないんでしょっ。今日のは新春トリプルベリードーナツよぉ」

「ふーん。じゃあそれも二つ」

「え!? 食べてくれるの!?」

「ああ、この二人がね」

 

ガクッ、と再びずっこけた店長さん。上げて落とされた気分であった。

 

「あはは……えっと、先生、そんなお気遣いなく……」

「いいよ。甘いもの食べないと頭も魔力も回らないからね。授業終わった後で疲れてるだろうしね」

「ってハルト君! 貴方先生になったの? いやぁだもう言ってよ~。お祝いで特別なドーナツ作ったのにぃ」

「チョコリングしか食べないから結構です」

 

なにはともあれドーナツを買ってから放課後魔術講義となった。ちなみに席は店長が気前よく提供してくれた。

 

「いただきます。はむ……うん、美味しいです!」

「ホントだ! 苺とラズベリーと、ブルーベリーな甘酸っぱさが凄い丁度良くて……」

「ありがと♪ 毎回自信作なのだけどハルト君いっつもチョコリングで買ってくれないのよねえ」

 

店長の恨みがましい目線を意に介さずチョコリングを食べるハルトであった。

最愛の人の思い出の味が何かに勝るわけがないのである。

 

「それで、質問って?」

「えっと、実は法陣の授業に最近ついていけてなくて……これなんですけど……」

「ん、ああ。大体は合ってるかな。ただ此処に気を付けてね。欠けてると水銀が足りなくなるし、そもそも事故の危険もあるからね」

「わ、ホントだ気付かなかった……ありがとうございます!」

「今のうちに分からない所は聞いちゃっていいよ。時間が許す限りでね」

「あ、でしたら私もいいですか? 今日の授業で……」

 

ルミアとシスティーナの質問に丁寧に返していくハルト。

その光景を見て「立派にやってるのね~」と後方保護者面をしている店長。

なんとも微笑ましい光景だった。

そうして数十分後……。

 

「うん、こんな感じかな? 他に質問はある?」

「あ、えっと……先生の事で聞きたい事があるんですけど」

「ん? 俺にか? 別にいいけど、なんで?」

「先生は……”指輪の魔法使い”のこと知ってますか?」

 

ピクッ、と一瞬手が止まる。

 

「確かに、俺は指輪しているけどね。どうして?」

「三年くらい昔……私、悪い魔術師に捕まって殺されそうになったことがあるんです。その時……助けてくれたのが指輪の魔法使いなんです」

「……そっか、それで?」

「? それで、というのは」

「いや、その指輪の魔法使いの事を聞いてどうしたいのかなって」

「どう、って……えっと、あまり大したことではないですが、お礼を言いたくて」

「私も……ルミアと今こうして親友として暮らしていられるのも、その人のお陰ですから」

「そっか………まあ、そうだね。何時かお礼は言えるんじゃないかな?」

 

少しだけ他人事っぽく言いつつ、空を見上げる。

そんな態度に首をかしげる二人を他所に、夕暮れの空に思い出を見る。

 

「(――――――暦。俺は、誰かの希望になれてるかな?)」

 

 

 

 

~~~~~~~

 

 

 

 

―――まだ、今は、救えない僕を、許して

 

 

「波瑠斗………、貴方は………」

 

「駄目だ、暦! 逝くな!!!」

 

 

―――真夜中、一人の部屋で、理由もなく、涙が零れた。

 

 

「……貴方は……希望に、なれる……誰かの、夢を、守れる……そんな、人だから……」

 

「何を、そんなこと……!!! 俺は、君の命すら、救えない……!!」

 

 

―――未来を変えたいけれど、何をどうすればいいの?

 

 

「私なら、十分貰ったよ………貴方に、生きることの、希望を………貴方と一緒に居た時間……何よりも、楽しかった……」

 

 

―――愛されているからこそ、悲しませたくないと、これ以上。

 

 

「暦……暦ぃ……!!!」

 

 

―――一人じゃ生きれなく、君を探すけど。

あの日の、君は僕より傷だらけで

 

 

「だから………私にくれたように、生き方に悩んでいる、誰かの………希望を、守って、あげて………優しい、貴方になら………できる、から………」

 

 

―――それでも笑う涙に濡れた頬に、

 

 

「分かった、から、暦も、お願いだから、生きて………!!!」

 

 

―――暮れ往く街の風が、通り過ぎた。

 

 

「………ありが、とう………―――」

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~

 

 

 

 

 

 

………帰路を歩きながらグレンは一度、学園の方を振り返る。

 

 

―――幼い頃はヒーローに夢見てた。

弱い人々を守りたい。なんてね

 

 

物語の主人公のような正義の魔法使いに憧れていた。

 

 

最初の一人目は誇らしかった。

二人目の時は、何か違うと思った。

三人目で自覚した。

ああ、向いてないなって。

 

 

―――僕の心に弱さは住み着いてた。

大人になる度、弱さが強くなる。

 

 

俺は、正義の味方にはなれないんだろう。

だけど、その夢は、そこにあった。

 

 

『俺が皆の希望だ』

 

 

誰かの涙を、絶望を、希望に変える魔法使い。

お前が居るなら、俺の夢はそこに生き続ける。

お前が俺の夢を証明してくれるなら、俺は進み続ける。

 

 

―――言い訳ばかりしている、僕だけど、

今か、今かと、この胸は震えてる。

本当の姿が僕にはある筈さ。

 

 

だから、セラのことも、イヴのことも、もう後は俺に任せてくれ。

お前は俺の希望だから。皆にとっての希望にもなれるだろ?

だからお前は、もっとたくさんの人を救える場所に居る方がいいさ。

 

 

―――幕が降りて、それぞれの未来へ。

 

 

頑張れよ、新米教師さん。

 

 

 




ハルト・リングラゴン
前世で恋人、暦を病によって失っている過去を持つ。
病弱な暦の為に美味しい食べ物や面白おかしなお話をして元気づけていたが結果的に救えなかったという後悔する彼に暦は「貴方と居られた日々が何よりも希望だった」「もっとたくさんの人の希望になって」という言葉に救われた。
前世ではそんな彼女の願いを叶える為、マジシャンとして活動。
そういった経緯から転生特典に「仮面ライダーウィザード」が選ばれた。
飄々としているが友人は非常に多い。
ルミアは暦に似ているらしい。


グレン・レーダス
正義の魔法使いという夢を叶える事は挫折しかけたが、ハルトの存在そのものが自分の夢が絵空事にならない「希望」となっている。
だからこそ、ハルトの在り方が歪まされないように自分は闇を祓う為に宮廷魔導士としての活動に専念するつもりでいる。
故に捻じ曲がった正義を掲げるジャティスに対してはセラの仇ではないにも関わらず原作以上の憎悪を向けている。
そのジャティスはハルトに執心中。


セラ・シルヴァース
ハルトが自分の境遇をグレンに負わせない為に尽力し、生存させた。
今も宮廷魔導士としてグレンと共に活動中。彼との関係はハルトのみならず、執行官全員の揶揄いの対象となっている。


イヴ・イグナイト
天使の塵事件にてハルトがイグナイト家の事情をグレンに伝え、その説得に向かわせたことを契機に呪縛から少し解放され、気が楽になっている。
グレンとセラとの三角関係はハルトが仕向けたもの。


変身シーンが無いなりにウィザードとしての在り方を原作を用いて表現しました。
後半にしようした歌詞は「W」。
ウィザードじゃないんかい、と突っ込まれそうですがロクアカにもハルトにも合っていたので此方です
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