【ここは】クロスオーバー系転生掲示板【何の世界だ?】   作:ファルコン・Σ

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今回はキバ編です。前後編に分けてお送りします
これを読んでくれる友人に「セイバーニキとかオーズニキのような主人公不在って何が不味いの?」と疑問を投げられたのでアンサーとして書きました。


長期シリーズ キバ×ダンまち
白兎の誕生に捧ぐプレリュード・前編


……とある世界を、闇が蝕もうとしている。

 

都市の中で一際高い建物の上から眼下に広がる世界を一人の青年が見下ろしている。

賑わう商店街や酒場、忙しなく働く人々、背中を預け合う仲間と共に冒険に行く準備をする冒険者達……。

一見すると平和で、とても穏やかな世界……。だが、首から下げたトイカメラのレンズ越しに見る、「世界の破壊者」の瞳には、その()()は如実に映っていた……。

 

「……まさかと思ってみてみれば、こんなことになっていたとはな……。アイツには酷な選択を迫られることになるが……」

 

 


 

【鍵付き】とある世界について【相談】

 

1:幻想郷が俺の世界DCD

電王、カブト、それとギンガ。来てほしい

 

2:イマジンコネクトDen-Liner

ディケイドさん? どうしました?

 

3:カブト@ユニオン&重桜指揮官

鍵付きということは余程の事態と見ていいだろうか?

 

4:幻想郷が俺の世界DCD

ああ、そういうことだ。お前らの力を借りたい。

 

5:テイワットに降り立ったギンガ

あのー、つい最近来たばっかりの俺でもいいのでしょうか?

 

6:幻想郷が俺の世界@DCD

ああ、問題無い。寧ろ「ギンガ」の存在が必要になってくる。

 

7:イマジンコネクトDen-Liner

どういうことでしょうか……?

 

8:カブト@ユニオン&重桜指揮官

スレタイから見るに、何処かの世界に異常が起きているという事か?

 

9:幻想郷が俺の世界DCD

ああ、少し「ディケイド」として世界そのものを感じ取る力に違和感があってな。

 

 


 

 

「『(カテナ)』!!!」

 

迷宮都市オラクルにて、迷宮に潜っている青年が一人。

深紅の血のような装甲と、鎖に戒められた鎧――『キバの鎧』を纏う青年。

掲示板の通称キバニキこと、『ワタル・フォルテ』という名の転生者である。

ヘスティア・ファミリアに所属し、ベル・クラネルの代役として……。

 

「よっしゃ! ナイスだぜワタル!」

「ん、ありがとうキバット。今ので最後?」

「みてーだな。よし、ちょっくら魔石回収してくるから待ってろ~」

 

そういって『キバットバット三世』ことキバットがベルトから離れると同時にキバの鎧も剥がれ、ワタルは元の人間態へと戻った。

自分の身体に傷やダメージが無い事を確認していると、後ろから青髪の少女がワタルに声を掛ける。

 

「主様、此方も終わったわ」

「ん、ありがとうフェリ。怪我はない?」

「問題ないわよ。流石にこの程度なら」

 

パーティの一人の狼人、『フェリ・ブルーノート』が得意げに鼻を鳴らし、胸を張る。

その大ボリュームで露出が高めの双丘がゆさっと揺れ、ワタルは思わず顔を逸らす。

 

「ちょっとご主人様? 私の事も心配してほしいのだけど?」

「ッ!? ちょ、ちょっとシーラ!?」

 

するとそこに同じくパーティの一人の海人、『シーラ・アルペジオ』が抱き着いてきて、フェルに匹敵する柔らかな胸がムニュンと腕に押し付けられた。

 

「ッあー! ちょっとシーラ! 離れなさい!」

「いやよ。昨日フェリちゃんはモフモフしてもらったでしょ?」

「あ、あの、どっちでもいいけど離れてほしいかな……?」

「…………」

 

ギャーギャーとワタルを挟んで言い合う二体の眷属に挟まれて困ったような声を出すワタル。

それを見て無言ながら頬を膨らませるのが土人族の小柄な少女『ランシエ』である。

彼女らはアームズモンスター。即ち原典における「ガルル」「バッシャー」「ドッガ」に相当する。

といっても、彼女らは元からこの世界で生きている命であり、アームズモンスターとしての変身能力はキバが持つフエッスルによって与えられたものである。

 

「あまりくっつくと主様に迷惑でしょって言ってるの!」

「とかいいつつ、羨ましいだけなんでしょ? フェリちゃんすぐ顔に出るんだから」

「んなっ! ッ!」

「フェリさん!?」

 

シーラの挑発に乗ってしまったのか、フェリが反対の腕に抱き着いてくる。

それを見て更に動揺したワタルを助けるべく、ランシェがガシッと二人を掴んで引き剥がした。

そしてそのままズルズルと引き摺って行く。

 

「二人共、駄目」

「ちょ、ちょっと~!?」

「く、くび、首しまっちゃう!」

「あいつら最近何時もこうだなあ」

「はは……。まあ、好いてくれているのは素直に嬉しいけどね……」

 

魔石を回収し、足で掴んで戻って来たキバットに、「ビルドニキがこれ見たら発狂しそうだなあ……」と苦笑を返すワタル。

 

実際ビルドこと「保科戦兎」は未だに出会いが無い様子である。いや美少女との出会いはあるにはあるのだが大抵殺し合いか、深く交流する前に事件になってしまうのである。悲しい事に。

更に言うなら鈍感でもなく、助けた相手から好意を抱かれる事すら皆無、つまりそもそもフラグすら立っていないという有様である。彼が何をしたというのか。

 

「………にしても、ワタル。お前変わったな」

「え?」

「ガキの頃はそんなに笑わなかったろ? 話す相手も俺様くらいしかいなかったしな」

「………まあ仕方ないよ。立場が立場だったし」

 

―――この世界には吸血種・ファンガイアが存在する。

そして、その皇たる一族の血を引く者は四人。

ワタルはその中で第二子、長男に当たる。半分血が繋がった姉、同じ両親を持つ妹が居ると聞いているが、二人と出会った事は一度もない。もう一人は存在することしか知らず、兄なのか姉なのか、弟なのか妹なのかも分からないという有様である。

 

この世界でファンガイアは現在空席の「皇」の座を狙った争いが起きており、とてもではないが種族としての統一が見込めるような状況ではない。

争いに興味が無く、その戦いから身を退き、ひっそりと暮らしている者もいるが、多くの野心溢れる者は多くの同胞を殺し、挙句は無関係な他種族からもライフエナジーを食らい、更なる力を得て「皇」の座に近づこうと過激な活動を繰り返す。

 

そんな中で「皇」の血を引いているワタルやその姉妹は存在自体が他のファンガイアに狙われる上に、ワタルは「皇の継承権」たるキバの鎧を保有している為に狙われるのも至極当然であると言える。

彼らの母親―――先代の「皇」はそれを危惧して彼らの存在を隠したのだ。

 

「母さんは、爺さんの無謀な侵略戦争を止めて、ファンガイアの滅びを回避した英雄だけど、元々好戦的で種族絶対主義な者からは酷く恨まれたからね……。それでも強かったから誰も逆らえなかったけど……」

「ああ、レジェンドルガとの戦いで力の半分を失ったからなぁ……。隠遁しなきゃならなくなったんだろうな」

「そうだね……。まあ、仕方のない状況だったと受け止めてるよ。……おっと、そろそろ帰らないと。神様が心配するよ」

 

話を切り上げて迷宮から撤退するワタル。

そんな彼を後ろから見るキバットは―――。

 

「(確かに、他の奴や俺様から見てもワタルの境遇は仕方のない事だったと思えるさ。けどよワタル……。あの時のお前の顔は……それだけじゃなかった筈だ。あんな、「寂しそうな顔」は………)」

 

 

###

 

 

フェリとシーラを引き摺って行ったランシエと合流し、迷宮から出る一行。

すると……。

 

「あ、ワタル」

「あれ、アイズ?」

 

遠征に向かう所だった「ロキ・ファミリア」と偶然遭遇し、普段からトレーニングを共にしている『アイズ・ヴァレンシュタイン』が此方に気付いた。

 

「お疲れ、ダンジョン帰り?」

「うん。そっちはいよいよ遠征?」

「そうだね。だからしばらく会えなくなる。もっと一緒に特訓したかったけど……」

「まあまあ、仕方ないことだからさ。それにこれで終わりってわけじゃないでしょ? だから……無事に帰って来てよ。そしたらまた続きしよう?」

「……うん、わかった。約束するね」

 

後ろのアームズモンスターの視線(というかフェリとシーラ。ランシエは二人をひたすら抑えている)が刺さりながらもアイズと指切りをするワタル。

と、同時にもう一人、

 

「ワタルさん」

「ん? どうしたのレフィーヤ」

 

ロキ・ファミリアで親しい仲(と言いつつ最初は結構突っかかって来られたが)である『レフィーヤ・ウィリディス』から声を掛けられ、そちらに向き直る。

なおアイズは指切りした指を見てポーっと微笑んでいたりする。

 

「遠征。頑張ってね」

「はい! ………それで、えっと……」

「……?」

「わ、私とも約束、してくれますか?」

「ああ、そういうことね。いいよ。はい。無事に帰ってきて、また会うことの約束」

「!」

「あはは、良かったねレフィーヤ!」

 

パアッと顔を輝かせるレフィーヤに背後から感じる二人の視線が更に強くなった気がするが、ワタル自身、無事に帰ってきてほしいというのは本心からの願いである為、しっかりとレフィーヤと指切りの約束をした。

それに嬉しそうな顔をするレフィーヤを『ティオナ・ヒリュテ』が自分の事のように喜ぶ。

 

「ぐううう………私だってご主人と指切りしたいのに……!」

「約束、しないのに、ゆびきり?」

「むうう……って、ゲッ!!」

「あァ? なんだテメェか」

 

そして睨んでいたフェリはロキ・ファミリアの同族、『ベート・ローガ』と目が合うと露骨に態度が顔に出る。

 

「まーた飼い犬のつもりかァ?」

「うっさいわね一匹狼気取り。主様の事を侮蔑しないでくれる?」

「奴のことじゃねェ。テメェに言ってんだよ。尻尾振って媚び諂ってワンワン言ってるのが狼人の面汚しだってんだよ。アマゾネスじゃあるめえし」

「ふん! アンタには分からないわよ! ワタルはプライドが高い私がそうしてもいいってくらい優しくて強い人なんだから!」

「フェリ、やめて」

「頭冷やしなさい」

「あぶっ!?」

 

ばしゃっとシーラに水をぶっかけられずぶ濡れになったフェリ。

だがヒートアップしたままの彼女はそのままシーラに飛び掛かった。

 

「何すんのよシーラッ!」

「熱くなってるのを止めただけよ!」

 

喧嘩する程仲がいいとも言う。

そんな二人をスルーしてランシエがとことことベートの前に出て頭を下げる。

 

「う、フェリが、ごめんなさい」

「……ハッ、テメェが謝ることじゃねェだろ。……アイツの度胸や姿勢は雑魚じゃねえからな。あの飼い犬がその足を引っ張ってるようなら……」

「それは、違う」

 

ベートの言葉に顔をあげたランシエは赤い宝玉のような瞳でじっと見つめる。

普段感情が顔に出ない彼女の真っ直ぐな強い視線にベートは僅かにたじろぐ。

 

「フェリは、ワタルの心を支える為に、必要」

「………チッ、足引っ張る事になんなよ」

「ん、その、つもり」

 

「三人共、そろそろ行くよ」

「あ、うん」

「はい! じゃあ、ワタルさん。また」

「うん。地上で待ってるね。無事を祈ってる」

 

そう語り、ロキ・ファミリアと別れを告げたワタルはキバットや三人の眷属と共に地上へ向かう―――。

 

「というかキバット。ずっと黙ってるけどどうしたの?」

「あ、い、いやなんでもねえ……(……ワタルはロキ・ファミリアの連中とはそこそこの人数と交流があった筈だ。特に団長の小人族や背の高いエルフのねーちゃんはアイズちゃんやベートとの模擬戦で立ち会ってる。なのに……)」

 

 

 

「レフィーヤ、さっきの件だが……」

「はい、ワタルさんと約束してきました。……無事に帰るって。……ふふ、約束破る訳にはいきませんからね! これでより一層気合が入りました!」

「………その、ワタルという少年とは何時知り合ったんだ? 随分親しそうだったが」

「………えっ? い、いやいや、リヴェリア様? アイズさんとの模擬戦も立ち会ってもらったじゃないですか?」

「何? いや、そんなことはしてないと思うが」

 

 

 

「(アイズちゃん、レフィーヤちゃん、ティオナちゃん、ベートの野郎以外が……どうして『ワタルの事を知らない』顔をしてやがんだ……?)」

 

 

 

###

 

 

 

「……………ん?」

「どうしたワタル?」

「いや、迷宮の入口に、誰かが……」

 

ダンジョンから出ようとした時、目の前に立っている青年に気付いたワタル。

その人物は首から掛けたトイカメラを弄っている。

 

「……なんか、怪しいわね?」

「だけど、悪人の匂いはしないわね」

 

すると、向こうもこちらに気付いたのか近づいてくる。警戒する眷属達を尻目にその男はワタルに気安く声を掛けた。

 

「よぉ。初めましてだな。キバ」

「もしかして、ディケイド?」

「ああ、そうだ。俺は『黒神司』、またの名を「通りすがりの仮面ライダー」だ。……なるほどな。流石俺らの中でも勝ち組と言われるだけある。美人揃いじゃねえか」

「からかわないでくださいよ……それで、何か用ですか?」

「ああ、世界の崩壊……それが始まっている」

「! どういうことですか?」

 

ディケイドーー黒神司が原典たる門矢士のように回りくどく、意味深な言い回しをする癖があるのは掲示板でのこれまでの付き合いから知っていたが、そんな彼の一言は無視できず、問い詰める。

 

「お前、ロキ・ファミリアと会ったろ」

「ええ……」

「そのとき、「ミノタウロスと戦った」か?」

「? いえ、ミノタウロスとは遭遇すら………グッ!!?」

「ちょ、主様!?」

 

司の質問に答えた直後、強烈な頭痛が司を襲い、幻覚のような光景がその脳裏に浮かぶ。

『白い青年が傷だらけになりながらミノタウロスと戦い、それを必死に応援するフードの小柄な少女、そしてそれを見守るロキ・ファミリアの面々』……。

 

「貴方、ご主人に何を……!」

「もう一つ質問だ。お前のファミリアは何処だ?」

「そ、それ、は………」

 

―――――思い、出せない。

今朝まで居た筈の自分の居るファミリアが、帰りを待っている神様の名前も、顔も、声も。

いや、それどころか今朝まで自分が居たという事実すら揺らぎ始めている。

……違う、そもそもそれは「自分ではない」。ベル・クラネルが居るべき場所で……。

 

「ワタル、しっかり」

「ッ! はあ……はあ……あ、ありがとう、ランシエ」

「やはり、歪みが始まってるな。おいコウモリ」

「お、おう? って俺はコウモリじゃねえ! キバット様だ!」

「じゃあキバット。何か違和感は無いか?」

「ん? ……ああ、あるぜ。恐らく……一部の人間以外はワタルの事を忘れてしまっている」

「「「えっ!?」」」

「アイズちゃん、レフィーヤちゃん、ティオナちゃん、ベートの野郎……こいつら以外のロキ・ファミリアのメンバーは恐らくな」

「此処じゃ目立つ。落ち着ける場所でゆっくり話そうか」

 

そう言った司が指を鳴らすと上空から特徴的な汽笛が響く。

直後、上空に虹色のゲートが開き、そこから空中に引かれたレールに乗って走ってくる赤と黒と白の列車―――。

 

「な、なにアレ!?」

「で、『デンライナー』……!?」

「乗れ。詳しい話は此処でしてやる。それとこれを持ってろ」

 

キバットを含めた5枚の乗車券を投げ渡した司は彼らを促し、目の前に停車したデンライナーに乗り込む。

困惑していたフェリ達だが頭を抑えるワタルを支えながら後を追い、乗り込むのであった。

 

 

###

 

 

「な、なんなのこの乗り物は……」

「う、凄い……」

「デンライナー、初めて乗ったなあ……」

 

食堂車に案内されたワタル達。そこには4人の人間と4体の異形が居た。

 

「って、モンスター!?」

「あァん!? 誰がモンスターだ魚女!」

「さ、さ、魚女ですってぇ!!!?」

「やめなさいモモタロス!」

「あいでっ!」

 

スパァン! とハリセンがモモタロスに炸裂する。

その下手人は中性的で男の娘と言っても通じるような青年。

他にはコートを着た白人の青年と、某風来坊なウルトラマンのような服装をした青年が客席に座っている。

 

「えっと……掲示板の……?」

「はい、初めましてですね。電王の『リョウ』と言います。一応リアルネームもありますけど、そっちは別に大したものじゃないので……」

「俺は『ロバート・ソルジェスト』。ユニオンと重桜の指揮官をしているマスクドライダー・カブトだ」

「先日から掲示板に入った『アレクセイ』です。テイワットでギンガをやっています。よろしくお願いします先輩」

「ど、どうも初めまして……」

 

此処まで掲示板のメンバーが揃うのは珍しいと感慨のようなものに耽っていたワタルはもう一人の人物を見て動きが止まる。

 

「あれ、メグミ!?」

「ワタルさん! 良かった……!」

 

白い髪が特長の、ワタルと同じファミリアに所属している筈の少女、『メグミ・レジェロ』であった。

仮面ライダーイクサに変身し、ワタルにとっては後輩とも言える存在である。そんな彼女はワタルの胸に顔を埋めるように抱き着いた。

 

「よかった……覚えててくれた……」

「っと……どうしたの?」

「あの……。神様やギルドの人達、『豊穣の女主人』の人達も、私やワタルさん達の事を忘れてて……」

「なっ!?」

「おいイクサ、それだけか? しっかり、正確に言え」

「…………違う……忘れてるのは……私も……思い、出せないの。皆の、顔が……!」

 

司の確認するような追求にメグミは絞り出すように声を吐き出す。

そのあまりの事実にワタルは息が詰まった。

 

「…………司さん、どういうことですか」

「ああ、だがその前に一つ確認だ。キバ。お前が今いるのは「誰の席」だ?」

「ッ、それは………、だって、僕が……あれ……?」

 

分からない。

今自分が居る立場は……? そもそも自分は何のためにヘスティア・ファミリアに入った?

いや、違う。

そもそもこの世界はベル・クラネルの物語で………?

 

「落ち着け。一旦深呼吸しろ」

「ッ、はあー……はあー……あ、ありがとうございます、えっと、ソルジェントさん?」

「ロバートでいい。ほら、お茶だ。飲んで落ち着け」

 

カブトニキことロバートからお茶を受け取ったワタルは一息で飲み干す。

なんとか息を着いたワタルを見た司は改めて確認する。

 

「途中でお前のコテハンが「兎君代理」から突然「紅夜王」に変わったのに違和感を覚えてな。少し調べさせてもらった」

「え…? そういえば、なんで僕は……?」

「記憶から消されてたんだろ。この世界の本当の主人公(ベル・クラネル)の事を。

「ッ!!!?」

 

そうだ、思い出した―――。

 

 


 

 

351:奈落のOOO@エリセン滞在

えっと、ジオウニキ、本来の主人公が居ないと何が不味いんですかね?

 

352:魔王オーマジオウ・トリニティ

不味いと言っても全部が全部危険なわけじゃないんだよ。その危険性は「世界の形」と密接に関わっている。

 

353:アルザーノ魔術講師ウィザード

世界の形、というと?

 

354:魔王オーマジオウ・トリニティ

ディケイドで「〇〇の世界」って言うけどさ。アレってどうして「『仮面ライダー〇〇』の世界」って言うんだと思う?

例えば「グロンギとゲゲルの世界」とか「ミラーワールドの世界」とかじゃなくってなんでわざわざ「クウガの世界」「龍騎の世界」って言うのかな?

 

355:使い魔クウガ

そう言えば、意識してなかったけどなんでだろう……?

 

356:第三世代アークス・キカイ

単純に作品名ってだけでは?

 

357:魔王オーマジオウ・トリニティ

それは「第四の壁」から見てる俺達だから分かる話だよ。

安心院さんでもない限り自分達が住んでる世界が漫画やラノベ、ゲームだなんて知らない訳だから、タイトルだって知りようがない。

それはディケイドのリイマジ世界でもそうだよね。彼らは他所の世界なんか認識してないんだし。

 

358:ラタトスクの炎の剣士@狂三攻略開始

……主人公だから、ですか?

 

359:魔王オーマジオウ・トリニティ

セイバー君正解。

つまりね、その世界は「そのライダーを中心」に回るから成立するんだよ。

龍騎とか鎧武なんか沢山ライダーが出てくるのに物語は主役を中心に回るだろう?

「物語」は即ち「世界」だ。そして「物語」には「主人公」が居る。だから「世界」は「主人公」を中心に回っている。

 

360:奈落のOOO@エリセン滞在

え、じゃあやっぱり俺とかの世界って……

 

361:魔王オーマジオウ・トリニティ

オーズ君達は大丈夫なんだよ。その世界は「ありふれの世界=南雲ハジメの物語」じゃなくて、「ありふれオーズの世界」となっている。

つまり世界そのものの構造、物語が違うから「南雲ハジメ=主人公」というわけじゃない。

 

362:ラタトスクの炎の剣士@狂三攻略開始

じゃあ、俺の場合は憑依はしてしまったけど「五河士道」は存在しているから問題無いってことですかね

 

363:魔王オーマジオウ・トリニティ

そうそう。それはキカイニキも同じだね。安藤って要はプレイヤー次第だからキカイであっても問題無いわけだよ。

 

364:使い魔クウガ

えっと、こっちは大丈夫なのかな?

 

365:魔王オーマジオウ・トリニティ

うん。そっちはオーズ君と同じで「クウガの使い魔の世界」とでも言える世界だからかな?

じゃあ何が問題なのかって言うと、「元々主人公が存在していたのにそれが消された場合」だね。

タイムジャッカーによってライダーの歴史そのものが奪われたりするのとはわけが違う。「世界の形」自体は残っているのにそれを動かすための存在だけが無い。タイムジャッカーによる歴史改変が車そのものが盗まれるのに対して、主人公不在って言うのは動くためのタイヤだけが無いようなものなんだ。

それで放置すればいいんだけど、世界って言うのは常に動き続けなければならない。さっきの車で例えるとエンジンだけは動き続けてる状態。それが続いたら……。

 

366:第三世代アークス・キカイ

壊れていく、ということか……。

 

 


 

 

「おそらく、ベル・クラネルは過去のいずれかのタイミングで殺されている」

「………そんな!?」

「はい、歴史改変が行われたってわけじゃなく、最初から「ベル・クラネル」を狙った殺人事件、或いは事故でしょうか……。これまではキバさんが代理を務めていたから辛うじて保てていました、それも限界が来たということかと……」

「………記憶が消えたりしたのは、それが原因ですか?」

「ああ、まずお前から「元々の主人公」の記憶が失われ、次にその立場を務めていたお前が、本来の歴史とのズレで存在が人々の記憶から消えていってるんだろう」

 

あまりにも衝撃的な事実にワタルは言葉を失う。

ベル・クラネルの不在という事態を補うための自分の行動が更なる事態の悪化を起こしていたというショックは計り知れない。

 

「落ち着け。お前のせいじゃない。そもそも歴史改変じゃないなら、この世界は恐らく、今よりもっと早い段階で……いわゆる「剪定事象*1」によって消されていただろう。少なくともお前のお陰で世界は延命し、俺らが異常に気付けたんだ」

「………そう、でしょうか」

「ああ、だがこのままでは結末は変わらん。そもそも「ベル・クラネルが原作前に死亡する世界線」ならこういう崩壊は起きない。ということは彼の死は物語的に想定されていないイレギュラーということだ。なら彼の運命を変える事で世界は安定を取り戻す。ということだ」

「…………! なるほど……それで電王とカブトなんですね。………あれ? ギンガは?」

 

ジオウは不在(忙しいらしい)とのことで、時間に関するスペシャリスト二人の選抜に納得するワタルだが唯一アレクセイの存在には首をかしげる。

だが当のアレクセイ本人もワタルと同様に首をかしげている。

 

「いや俺も何故呼ばれたのかは分からないんですよ。ディケイドニキには「お前の力が必要だ」って引っ張りだされたんですが……」

「まあ大体のことは行けば分かる。カブト。電王」

「ああ、ハイパーゼクターが次元を超えて確認してきた。座標と時間軸は特定済みだ」

「はい。ベル君が生きている時代に飛びます!」

 

リョウのアナウンスと共にデンライナーは動き出し、時の狭間から出発するデンライナー。

それに揺られながらロバートは司に近づき、追求するかのように尋ねた。

 

「………いいのか。言わなくて」

「何をだ?」

「しらばっくれるな。分かっているんだろう? この歴史を変えれば、彼がどうなるか……」

「………ああ」

「ならば……」

「皆まで言うなカブト。……そうならない為に、俺達がいるんだからな」

 

 

###

 

 

カブトが特定した時間軸に到着したデンライナーからワタルとキバット、司、アレクセイが降りる。

 

「此処はかつて、ベル・クラネルが暮らしていた村だ」

「………向こうで葬式のようなものが行われていますね……」

「今日はベル・クラネルの爺さんが亡くなった翌日だ。此処がアイツにとっての運命の分かれ道になる」

「………! あの、あそこにいるの……」

 

アレクセイが指差した先に居たのは、白い髪に赤い目の人畜無害そうな少年……間違いなくベル・クラネルである。

彼は呆然自失とした表情のまま、とめどなく涙を流し続けていた。

 

「ッ………」

「おい、ワタル?」

 

それを見たワタルは強烈な悲壮感を覚え、胸の前で手を固く握る。

何かを決意するかのような表情を見せた彼はすぐに司に訊ねた。

 

「司さん、この後は……」

「ああ、カブトによればこの後、悲しみのまま森に向かい、そこで……といったところだ」

「分かりました。ではすぐに行きましょう」

「どうしたワタル。やる気でてんな?」

「……うん、少し、いやなことを思い出してね……」

 

 

 

 

その後、その村を後にし、森へ先回りする一行。

身を潜めていると、カブトの情報通りにベル・クラネルがやってくる。

 

「………一人でなんて、危なっかしいな……。唯一の肉親を失って悲しいのかもしれないが……」

「どうしても拭えない程に悲しいときって言うのは、じっとしていると余計に苦しかったりするもんさ。……そら、来たぞ」

 

 

【KIVA】

 

 

 

「みぃつけたぜぇ? ベル・クラネルゥ」

「え……ひっ!!?」

 

「な、アナザーキバ!?」

「な、なるほど……俺を呼んだ理由は分かった。けどどうしてアナザーキバが?」

「歴史を奪うのはタイムジャッカーの役目だ。アナザーライダーそのものにそういう力があるわけじゃない。あのアナザーライダーは……野良転生者だな」

 

転生神殺し大戦で悪徳転生神は滅びたが、あらゆる世界に散らばった転生因子はまだ残っている。

その中で選ばれてしまった邪悪な心を持つ転生者がアナザーライダーの力を得てこの世界にやってきたのだろう。

なんという皮肉だろうか。「キバ」がこの世界の主人公の命を奪っていたとは。

 

「お前を殺して、お前のハーレムを全て奪ってやるぜェ!」

「あ、あ……(何を、言ってるんだこの化物は……!!? に、逃げないと、逃げ……)」

 

腰が抜けつつも必死に逃げようとするベル。

だがふと、その足が止まってしまった。

 

「(……逃げたところで、どうなる? 家には誰もいない。家族ももういない……何処にも……)」

 

この時のベルは酷く心が弱っていた。

故に普段ならば、そして本来ベル・クラネルであれば考えないことであっても思いついてしまうのも無理べからぬことである。

 

「(……なら、いっそ、此処で終わっても……)」

 

 

 

「キバット!!!」

「おう、行くぜワタル!! ガブッ!!」

 

 

だが、それを良しとしない者がいる。

 

 

「変身!!」

 

 

全身を銀に包み、その装甲が弾けるようにして現れた「英雄」がその間に割り込んだ。

 

「えっ……?」

「生きるんだ! 君には、託された命がある!!!」

「お、お前はァ!?」

「その命は、僕が絶対に守るから!!!」

 

―――仮面ライダーキバの、決して引き返せぬ戦いが始まった。

*1
Fateシリーズにおける用語。将来的に発展や進歩が見られないと判断された、現状からこれ以上変動することのない世界が「これ以上存在しても意味がない」と切り捨てられ、抹消される事象




ワタル・フォルテ
キバニキ。世界崩壊の影響でベルの存在が記憶から消えていた。
その為、原作知識も曖昧になっており、リリやヴェルフ、ミノタウロスと言った原作の内容が悉く欠落していた。この辺りが「主人公の代理」の難しい所である。
人畜無害そうな顔というのはベルや紅渡と共通。得意楽器はピアノ。
ベルが仲良くなれた筈の人々と交友できなかったが、アイズやレフィーヤ、ベートとの交流は紛れもない彼自身の行動故のモノで、彼女達の記憶から消えなかったのは「ベルの代理」ではなく、彼自身の縁が紡いだ奇蹟。
彼の転生によってダンまち世界にキバの概念が混ざっており、ファンガイアを相手に戦うことは早くから覚悟を決めていた。
前世をきっかけとするとある問題を抱えている。
ダークキバの持つシールフエッスルから見て他種族をアームズモンスターにする力が追加されている(ガルル達は過去編では一切武器としての力は見せていない為)。


フェリ・ブルーノート
狼人族でキバの眷属。勝気で自信家な性格。
ファンガイアに追い詰められ、乱暴をされかけていた所を、オラリオに向かう為に修行をしていたワタルと遭遇し、彼によって救われた事で眷属になる。
ガルル同様のスピードファイター。動きやすさを重視してアマゾネス並みに露出が高い。
一人だったワタルを幼少期から支えており、またガルルフォームの扱いやすさから彼の一番眷属を自負している。その姿を「飼い犬」と揶揄するベートとの相性は戦場以外では最悪。
また、シーラとはワタルのナンバーワン眷属を取り合う間柄。


シーラ・アルペジオ
魚人や人魚の系譜である海人族。水を操る魔法を持ち、身体能力では劣るが魔法によるサポートはアームズモンスター随一。
普段は大人しく、一途だが怒ると怖いタイプ。ビキニのような服装をしているのでやはり露出度が高い。
希少種であるため、ファンガイアに追われていた所をワタルと出会い、匿ってもらった。その後彼もファンガイアの血を引いている事を知って一度は逃げてしまうが、それでも守ってくれた事をきっかけに彼に謝罪し、尽くす事を決めた。
フェリとは喧嘩ばかりしているが彼女の魔法はフェリのサポートとして非常に相性が良く、戦う際は息ぴったり。


ランシエ
土人族だが小柄で外見上は細身、筋肉も一切ない。だが特異体質であり、パワーは並みの土人族をも上回る。
そのあまりの怪力により異端児扱いされ、洞窟で一人寂しく生きていた所をワタルと出会い、彼の友達となり、その後離れたくないという思いから眷属になった。
三眷属の中では唯一ファンガイアとの因縁を持たない。
大人しく、自己主張はあまりしない末っ子だが一番の常識人でもあり、姉二人の喧嘩を止めようとすることもある。
露出は少ないワンピースのような服を着ているが着やせするタイプで地味に大きい。
戦闘ではそのパワーを存分に活かして戦う。


メグミ・レジェロ
イクサに変身する女性。ワタルに誘われてファミリアに加入した。
名前の由来は麻生恵。
今回殆ど出番はなかった為、詳しい詳細は次回。


黒神司
世界の破壊者ことディケイド。
黒神という性は彼が放浪せざるを得なかった頃、とある世界で家族のように接してくれた大切な人が与えてくれた苗字。
とあるジャンプ漫画の世界と言えば恐らく分かる人はいる。
キバニキの抱えているモノを知っており、それ故にこの戦いの結末を憂いている。


次回に続く―――
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