ぷよぷよテトリス2 ~ シュルッツの冒険者達 作:アヤ・ノア
戦闘シーンは、できるだけ派手に描写してみました。
「ティ! どうなったの?」
「勝ったんだよね?」
「ボク達、やっとマールを倒したんだよ!」
「ぐぐぐーぐぐ!」
「……」
マールが作った幻影世界から戻って来たアルル達。
幻影世界が消えた事で、マールは倒れたはずだが、何故かこの世界は元に戻っていなかった。
気付いているのは、ティとアリアだけだった。
「みんな! 来てくれたのか。それが……ちょっと、この子の様子が……」
「ピーピピ……」
ティはマールの様子がおかしい事を皆に伝える。
「あの……私……私……それでもやっぱり、勝負がやめられない。これが『楽しい』んですよぉ」
黒と金のオーラを纏ったマールは、楽しさを求めて勝負をしようとしている。
勝負病にかけた者が逆に勝負病にかかるという、自業自得のような状態になっていた。
「まだ駄目ですか……」
「……どうしよう」
どうすればマールを正気に戻せるか考えるりんごとアミティ。
一方、アリアは杖を持って、精神を集中していた。
「どうしたの、アリア? あ、話しかけちゃダメ?」
「……」
アリアにはアルルの声が全く聞こえていなかった。
ただし、操られているわけではなく、集中しすぎているだけである。
アリアの周りにはたくさんの精霊がいて、レイリーにはその姿がはっきりと見えていた。
「……今、アリアは精霊の力を使って、マールを元に戻そうとしているのだ。
あのオーラが、マールを操っているのだ」
レイリーは小声でアルルに状況を話した。
アリアはマールにとりついているオーラを、彼女から引きはがそうとしているのだ。
「そっか。じゃあ、アレを……」
アルルがそう呟いた瞬間、アリアの周囲から虹色の光が放たれる。
虹色の光が杖にまとわりつくと、光のレーザーがマールを貫いた。
すると、マールにとりついたオーラが抜け出て、
猿の頭、虎の体、蛇の尾をした異形の獣になった。
「こ、これって……鵺!?」
「はぁ、はぁ……」
怪物になった影に、りんごは恐怖する。
アリアは力を使い切ってへたり込んでしまい、マールも気を失って棒立ちになった。
「お疲れ様です、アリア」
「後はあたし達がやるよ!」
アルル、アミティ、りんご、ティは、マールを操る影に戦いを挑んだ。
「サイクロワール!」
アミティは呪文を唱えて、風の刃で影を切り刻む。
「サイン!」
「スピニング!」
影に向けてりんごが放った電撃が飛び痺れさせる。
続けてティが加速力を上げた円月輪を投げつける。
「うっ……あぁぁぁっ!」
影にとりつかれたマールは、さらに苦しむ。
「大丈夫だよ、マール。ボク達は絶対に、キミを助けるからね!
ダイアキュート、ア・アイスストーム!」
アルルは増幅呪文を唱えて、強烈な氷の嵐を巻き起こす。
氷の嵐は影を取り込み切り刻んで寒さを襲わせた。
「きゃっ!」
影の獣がマールを操って大きく跳躍し、そのまま爆撃のように着地する。
迸る電撃が地を這い、広範囲に広がった。
「シールド!」
「わっと!」
「いたたぁ~!」
アルルは防御魔法で防ぎ、アミティは何とかかわしたが、
戦闘慣れしていないりんごはまともに食らってしまう。
ダメージは抑えられたが、身体が軽く痺れる。
「これ、ちょっと厄介だね……」
「ああ……」
「鵺は病気にするんじゃなかったんですか? こんなに激しい攻撃をするなんて……」
りんごの伝承では、鵺は奇妙な鳴き声を上げて、人々を恐怖から病にしてしまうという。
だが、この影はそれとは逆に、雷を纏った激しい攻撃を繰り出していた。
「まともに食らったら、タダじゃすまなそうだね」
「うん……」
もし影の攻撃が直撃したら、体力があまりないアルル達は一撃でばたんきゅ~するだろう。
アルル、アミティ、りんごは、ぐっと身構えた。
「ロックダウン!」
「ダイアキュート、ダイアキュート、ファ・ファ・ファイヤー!」
ティが光の力で影を拘束した後、アルルは手からたくさんの火炎弾を放つ。
「ブラストビート!」
「コサイン!」
アミティの風で勢いを増したりんごの電撃が鵺型の影に命中。
影は大したダメージを受けなかったが、麻痺によって体当たりの勢いを削いだ。
「よし、この調子だ! ターンオーバー!」
「ブリザード!」
ティが勢いよく円月輪を飛ばして影を切り裂き、アミティが吹雪を起こして影を凍らせる。
「タンジェント!」
「ダイアキュート、ダイアキュート……」
りんごはさらに電撃で追撃し、呪文を詠唱するアルルを援護する。
「ジュ・ジュ・ジュ・ジュ・ジュゲム!!」
アルルが呪文を唱えると、大爆発が発生し、影を勢いよく吹き飛ばした。
距離は相当離れたため、体当たりの勢いは今ほど強くないはずだ。
「ヒョー、ヒョー、ヒョー」
「な、何?」
影は天に向かって不気味な雄たけびを上げる。
すると、天がそれに呼応するかのように、黒雲が現れ、アルル達に雷光が降り注いだ。
「まずい、あれをまともに食らったら……!」
この攻撃をまともに食らえば、確実にアルル達は全滅してしまう。
しかも、アルルとアミティには防御魔法を使う魔力が残っていない。
もう、勝てないのか……と思った、その時だった。
「マール、正気に戻れ!!」
「ティ!!」
「ピピー!!」
なんと、ティがマールに突っ込んでいき、マールの攻撃を代わりに全て受けたのだ。
「きみにとっての楽しさは、おれには分からない。
だけど、みんなを苦しめて、
きみ自身を苦しめる……そんな勝負なんて、楽しいとは言えない!!」
「そんな事はありません! 今、私は楽しいんです!
楽しくて楽しくて楽しくて楽しくて……全部、楽しいんですよ!!」
「『楽しい』を連呼するきみが、本当の『楽しい』を知るわけがない!!」
「あなたには全然分かりませんよ!!」
「ああ……おれにも分からない……だから……」
「こうするしかないんですか!?」
ティとマールは互いに自分の思いを叫ぶ。
楽しさを伝えようとするマール、本当の楽しさを教えようとするティ。
理論も理屈もなく、思いだけがぶつかっていた。
「Tスピンバースト!!」
「ヘブンリースフィア!!」
二人の思いはぶつかり続け、それは、ついに最終奥義となった。
ティとマールの最終奥義がぶつかり、影が起こした以上の大爆発が起きる。
そして、大爆発が治まると、黒い影は消えた。
「な、何とか勝ててよかった……」
「あ、ああ……」
アルル達はボロボロになりながらも、マールにとりついた影を完全に消滅させた。
すると、煙の中からマールが姿を現す。
その姿は今までと違い、編んだ金髪に青い瞳、白と水色と黄色の服に白い雲と、
神聖な雰囲気を醸し出していた。
マールを操っていた影が消えた事によって、彼女は正気と姿を取り戻したのだ。
「はぁ、はぁ……」
「お、驚いたな。それが、きみの、本来の、姿か」
「ピピピピー!」
四人の中で特にボロボロになったティも、元に戻ったマールの姿を真っ直ぐに見据える。
「あ……ありがとうございました。本当に、本当に……!」
正気に戻ったマールは、影と戦ったアルル達に礼を言う。
りんごはマールに手を伸ばし、笑顔でこう言った。
「そんな貴女にこの言葉を送りましょう。結果良ければ全て良し!」
「それを言うなら終わり良ければ総て良し、ですよ」
「そうとも言う!」
アリアはりんごに真顔でそう言った。
「あなたはあの先生達の言う通り、別の存在の影響を受けていましたね。
本当なら謝らせたいところですが、あなたはまだ調子が悪いのでね、とりあえずは許しますよ」
「ありがとうございます……!」
アリアとしてはマールに罪を償わせたかったが、まだこの調子では目的を達成できないと判断。
調子を取り戻してから、改めて罪を償わせる事にするのだった。
「それにしても、なんで時空のバグになっちゃったの?」
アミティは重要な事をマールに問いただした。
時空のバグ、と呼ばれてはいたものの、本当に彼女が時空のバグかどうかは分からなかった。
だから、アミティは真相を知りたかったのだ。
しかし、マールはアミティの質問に対し、首を横に振っていた。
「いいえ……私は時空のバグではありません」
「え?」
「私は……」
マールが自分の正体を、アミティ達に話そうとした時だった。
「何をしているんだ、マール」
「あっ……!」
マールの背後から、青年の声が聞こえてきた。
「どこからともなく謎の声が! だ、だ、誰ですか!?」
「……」
アリアには、この声の正体が何となくだが分かっていた。
アコール先生とローザッテが言った事を思い出す。
『マールさんは確かに世界を混乱させた加害者ですが、被害者でもあるのです』
『楽しさを象徴するマールさんの後ろには、正しさを象徴する何者かがいます』
「マールさんを操り、世界を混乱に陥れた、『正しさ』を象徴する、あなたは……!」
次回は真の黒幕が現れます。
不定期、ですが早めの更新を心がけます。