ぷよぷよテトリス2 ~ シュルッツの冒険者達 作:アヤ・ノア
スクエアス……見ていて、哀れになりますね……。
その頃、時空の果てでは……。
「まったく、艦長はどこに行っちゃったのよ! せっかく迷宮を攻略したのに!」
「落チ着クンダ、エス」
「はぁ~い、ごめんなさぁ~い!」
ティがいつまで経っても帰ってこない事に腹を立てたエスを宥めるゼット。
パパの前では、エスは変わり身するようだ。
「二人とも、どうしたんだい?」
「元気ないよー?」
「全然ないよー?」
アイ、ジェイ、エルもテト号から降りたようで、エスとゼットに合流する。
「艦長がいきなりいなくなっちゃったの!」
「何? それは本当か?」
「ピンチだね」
「そうだね」
エスは慌ててアイ、ジェイ、エルに事情を伝える。
せっかく迷宮を攻略して、スクエアスのところに行けるはずだったのに、
連絡もなしに消えてしまった。
きっとティはピンチになっているかも、とエスは危惧していた。
「ジェイ! エル! ピンチなら、あんた達の力で何とかしなさいよ!」
この双子は、手を繋ぐと不思議な力で未来をある程度予知する事ができる。
双子の力を使えば、ティに迫る危機を感じ取れると思ったのだ。
「使おうかな」
「やめとこっかな」
「……」
エスの背後からメラメラと炎が浮かび上がる。
仲間の危機を救わない乗組員など、乗組員として認めたくないのだろう。
ジェイとエルは震えて、すぐに手を繋いだ。
「……」
「……」
ジェイとエルは精神を集中している。
ティがどこにいるのかを、心で感じ取るためだ。
エス、アイ、ゼットが見守っていると、ジェイとエルがびくん、と反応した。
「艦長は、空の彼方にいる!」
「男の人に倒されちゃうみたい!」
「……男の人?」
その特徴が誰なのかエスには分からなかったが、とにかく、ティがピンチなのは変わりない。
「アイ、エスを艦長のところに連れてって」
「……ぼくの力でも異空間に行けるかどうかは分からないけど……やってみるよ」
アイは大急ぎで小型異空間転送装置を作り始めた。
そして、エスにそれを渡して説明する。
「即席で作ったから一方通行、決着がつくまではここに戻る事はできない。
それでもきみは、使うのかい?」
「当然よ! 艦長がピンチならエスが助けないと!」
もちろん、エスに迷いはなかった。
エスは我儘で毒舌だが、その実、寂しがり屋でもある。
パパだけでなく、乗組員がいなくなってしまう事をエスは誰よりも恐れているのだ。
「そんなに行きたいなら、どうぞ」
「よーし! 艦長、待ってなさい!」
エスがそう言うと、彼女の姿は時空の果てから消えた。
「エス、パパだけが好きだと思っていたけれど」
「「ジェイとエルも大事なんだね」」
その頃、りんご達はというと……。
「うーん……ずっと、何かが足りないんだよなぁ。モヤモヤするっていうか」
りんごは、一人で何かをぶつぶつ呟いていた。
スクエアスは本当に悪人なのか、りんごは疑問を抱いていた。
「正しい」にこだわり続けるスクエアス。
自分が生み出した存在なのに、裏切られたマール。
その二人を繋ぐものを知りたくてたまらなかった。
「りんご! 落ち着いている場合か! 来るぞ!」
「ビービー!」
「あー……うん……」
ティとオーがりんごに叫ぶが、何故かりんごはぼーっとしていた。
「上の空か!」
「にゃっ!」
ティの一言でようやく我に返ったりんご。
「ご、ごめん、ティ。突っ込みさせて」
「……りんご、何を考えているんだ?」
「えーと……ここに来て、そもそも論で申し訳ないけど、マール」
「はい!? なんでしょうかぁ!」
「スクエアスはなんであんなにも『正しい』事やマールに執着してるのかな」
りんごはマールを呼んで、スクエアスについて聞こうとする。
マールがスクエアスを生んだのだから、彼を知っているかもしれないと思って聞いたのだ。
「そ、そんなの分かりませ……」
「スクエアスに近しいマールにしか分からない。
色んな世界を見下ろしてきた存在にしては、スクエアスって思考が一直線すぎる気がする。
私の勘が正しければ……マール……スクエアスって……」
スクエアスは生まれたばかりの赤子だから、単純な行動を取るのは当たり前だろう。
りんごはそう推測したのだ。
「なるほど。それは……」
「言うな!!」
「スクエアス!?」
マールがりんごに何かを話そうとした瞬間、スクエアスが彼女を制止する。
まるで、ムキになった子供のように。
「それはマールと俺の問題だ! どうせお前達は消えてなくなる。余計な事をするな!」
スクエアスは再び「あの時」の姿になり、巨大な粘体生物・ウーズを召喚する。
彼の姉的なマールは、スクエアスを憐れんでいた。
「お前の相手はこいつで十分だ!」
「なるほど、取り急ぎ勝負です! ……この魔物は、気持ち悪いけど」
「勝ちましたよ」
実際のところ、勝負はあっけなく決着がついた。
ウーズは雷属性に耐性を持っていたが動きは遅く、体力も普通よりちょっと高い程度だった。
さらに、りんごはなるべく距離を取っていたので、攻撃をそれほど食らわずに済んだからだ。
「こんな事は何の問題でもない。この膨大な力は尽きる事はない。最終的に俺が勝てばいい。
それが『正しい』」
「う~……」
何が何でも正しい事を貫きたいスクエアス。
意固地になるスクエアスを説得するのは難しいので結局は力ずくで止めるしかないようだ。
「バトンタッチだ、りんご」
「ティ!」
「なんとなく、りんごのしたい事が分かった。引き継ぐよ」
「……任せます!」
「ピピピピーピ!」
りんごとティの手が共に触れた後、ティはすぐにマールとスクエアスを追いかけた。
「マール、教えてくれ」
「……? おい、お前の相手はこの俺だ。もう、雑魚を呼んでばかりで疲れるからな」
追い詰められたスクエアスは、とうとう直接勝負を仕掛けるようだ。
「はい……」
「『楽しい』と『正しい』がきみ達の守るべき事」
「ピピピーピ、ピピピピ!」
「それをスクエアスに教えたのは、スクエアスを作り出したきみなんだろう」
「そ、その通りです」
生まれたばかりのスクエアスは、まだ何も知らなかった。
そのため、マールはスクエアスを彼らしくするために教育した。
楽しい事が何なのか、正しい事が何なのかを、マールなりに、スクエアスに教えたのだ。
「それが今、何の関係がある!」
再びムキになるスクエアス。
見た目より精神年齢がとても幼い事が分かる。
「マール、何故だ?」
「へっ?」
「何故『楽しい』と『正しい』を守るべきものにしたんだ」
マールとスクエアスが司るものが何故それなのか。
ティはそれをマールに聞こうとしていたのだ。
マールはこほん、と息をつくと、ゆっくりとティに話した。
「それはぁ……あなた達の世界に必要な、勝負の基本だと思ったからです」
「マール……?」
「ピーピ……?」
「ずーっとずっと、あなた達を見ていて、
勝負には『正しい』ルールが必要で、それでいて『楽しい』。こうじゃなくてはいけません♪
私、ずっとそれに憧れていたんですっ! 正しさと楽しさを分かち合える友達に!」
プリンプタウンと箱の世界では、普段はぷよ勝負やテトリス勝負で揉め事を解決する。
魔導世界やアルカディアでは実際に魔物と戦うが、
ある事がきっかけで、直接勝負せず、形式的な戦いで解決するようになったのだ。
勝負の楽しさ、死者を出さないルール……マールはそれを、守るべきものと認識したのだ。
「そして、スクエアスはそれを拒否した」
「ピピーピピ」
「ふう……不透明だった話がやっと見えてきたな」
「ピッピ、ピピピ!」
スクエアスがマールの憧れを拒否した事で、
箱の世界やプリンプタウンには魔物が溢れ出るようになり、実際に怪我もしてしまった。
これが、世界で起こった異変の真相なのだ。
「おい、もう一度警告してやる。よそ見をするな」
「ああ、悪かった」
「いくぞ!!」
ティとスクエアスの一騎打ちが始まった。
「スピニング!」
ティは円月輪を飛ばしてスクエアスを切り裂く。
スクエアスは闇を操り、ティを惑わす。
「くっ、攻撃が届かないな!」
ティの円月輪はあらぬ方向に飛んでいく。
「テトラゴン」
ティの地面から闇の刃が現れる。
何とかかわしたが、闇の刃が掠ってしまった。
「ロックダウン! ターンオーバー!」
上下から勢いよくスクエアスを押し潰し、円月輪を勢いよくスクエアスに叩きつける。
その威力はかなりのもので、スクエアスを瀕死に追い込んだ。
「くっ……ソリッドメソッド!」
「そ、そんな!」
スクエアスの身体を闇が包むと、傷が癒えていく。
あと一歩のところまで追い詰めたのに、回復魔法で全てを水の泡にしてしまった。
「さあ、覚悟しろ! シンクボックス!」
「うあーっ!」
呪いの波動がティを包み、体力を削る。
「ソリッドキューブ!」
スクエアスは巨大な真空の爪で、ティを切り裂く。
ティは回復魔法を使おうとするが、スクエアスの強大な力で詠唱が中断される。
「……いい加減に消えろ……」
「嫌だっ! おれはきみを止めるまで、絶対に消えないっ!
きみのような子供には、負けない!!」
「誰が子供だ、誰が!!」
「そうムキになるのが、子供の証だ!」
攻撃を食らい続けているにも関わらず、ティは決して諦めなかった。
スクエアスは生まれたばかりでまだ幼く、力の使い方を知らず、
信念を貫くための心の強さも持ち合わせていない。
だからティは、それとは逆に、信念を貫くための心の強さで、スクエアスに勝負を挑んだのだ。
たとえ力で勝てなくても、心で勝てばいい。
それが、ティの考えだった。
「……ダークネスブリック」
スクエアスが手から闇の波動を放つと、ティは箱の中に捕らえられ、四つの闇の柱に貫かれた。
それでもティは、決して弱気な顔を見せず、スクエアスを鋭い目で睨み続けた。
そして箱が爆発し、ティは戦闘不能になった。
「みんな……スクエアスを止めてくれ……」
「ダメーーーーーーーーーー!!」
ティが意識を失いそうになったその時、エスがいきなりティの前に落ちてきた。
「エ……ス!?」
「ピ……!?」
「くそ、またイレギュラーか!」
再びイレギュラーが現れたスクエアスは困惑する。
「艦長を消させはしないわよ! テト号乗組員は、誰一人欠けさせないんだから!
ほら艦長、逃げるわよ!」
「あ、ああ……」
エスはティの手を引っ張り、オーも後を追った。
時として、強大な敵から一目散に逃げなくてはならない局面もある。
それは決して恥ではなく、何が何でも生き延び、最後には必ず勝利を掴むという証だ。
「逃げたくらいで俺から逃れたと思うなよ。
お前達のような正しくない存在は、必ず消し去ってやるのだからな」
スクエアスは去っていくティ、オー、エスを睨みつけた。
まるで、虫を追いかけようとして逃げられてしまった子供のように。
最後の文章は某アニメの某キャラの行動を私並みに評価しました。
次回はスクエアスとの戦いです。