ぷよぷよテトリス2 ~ シュルッツの冒険者達 作:アヤ・ノア
何が楽しいのか、何が正しいのか、今の世の中にぶつけたいものです。
「ジェイとエルが予知して、アイがここに届けてくれたのよ」
「なるほど、納得」
アルル、アミティ、りんご、アリア、ティ、オー、エスは、スクエアスから一旦退却した。
既に空間は茶色に染まっており、中央には四角い物体が浮かんでおり、
ワームホールのようなものも浮かんでいた。
ちなみに、七人は既に回復魔法で傷が癒えている。
「スクエアスが幼いって、つまり……?」
「小さな子供だって事だね」
「ぐーぐー……」
ティから事情を聴いたアミティは、ようやくスクエアスの行動の理由を理解する。
スクエアスは赤子だったので、正しさを押し付けようとしていたのだ。
「ええっ!? だって、だって、スクエアスはあんなに怖そうなお兄さんだよ!?」
アミティが驚くのも無理はなかった。
見た目と実年齢が一致しないのはサタンなどもそうだったが、
見た目より実年齢が低いのは初めて見たからだ。
「それはきっと、外見だけなんだよ」
「マールさん……スクエアスさんは初めから、ずっとあの姿なのでは?」
「……はい、その通りですぅ」
「考え方が一直線すぎるのも、マールに異様に執着するのも、つまりはそういう事だったんです」
アリアがスクエアスの細かい事をマールに聞く。
スクエアスが大人なのはあくまで見た目だけで、内面は生まれたばかりの赤子そのものだ。
「なーんだ。君、ただいじけてただけじゃないか」
「いじけ……?
違う、俺はただ、世界とマールを元に戻して、今まで通り『正しい』世界を二人で……」
「いや、だからそれが『今まで通りじゃなきゃやだ』っていじけてたって事なんだけど」
虚言癖のあるエコロが珍しく正論を言った。
世界は日々変わるものであり、スクエアスはそれを認める事ができないだけ。
それをエコロはスクエアスに指摘したのだ。
「ハーッハッハッハ!
それだけでこれだけの大騒動をよく起こせたものだ。その点は評価してやろう」
サタンはしょうもない理由で異変を起こすため、スクエアスの行動をある程度認めていた。
「ふ、二人とも、その辺にしといてあげようよ」
エックスがサタンとエコロに突っ込みを入れる。
この二人と違って、エックスはトラブルメーカーではないからだ。
「な……ちょっと待て……!」
「そっかぁ……。ごめんね、スクエアス。
私、目の前の事に精一杯で、あなたが本当は生まれたばかりだって忘れていました」
マールはスクエアスを止められなかった事を謝る。
スクエアスが赤子である事を、仕事をするあまりに忘れてしまった事も。
「う……うるさい、うるさい!! それでも俺はマールより強い! この通りだ!」
「スクエアス……」
しかし、スクエアスは認めたくなかった。
何が何でも、マールに自分の正しさを認めさせようとしていたのだ。
「アニュラス!」
「テトラゴン!」
「なんて戦い方……」
マールとスクエアスの戦いは激しかった。
世界を見守ってきた存在であるために、それは戦場とも思える光景だった。
スクエアスが押しているように見えるが、
実際のところ、マールは力を奪われたとはいえスクエアスと互角に戦っていた。
伊達に時空の意志ではない、という事の証明だ。
「パステルサークル!」
「ソリッドキューブ!」
マールとスクエアスの魔法がぶつかり合う。
空間を揺るがすほどの衝撃で、二人は吹き飛ぶ。
「凄い戦いだね……」
「でも……なんだか、マールに力がないよ……」
アミティの震える言葉に振り向くアルルとりんご。
ラフィーナとクルークも、ごくりと唾を飲む。
「どういう事?」
「ぐぐぐ?」
「分からない……でも、スクエアスはやっぱり……」
「シャイニーバブル!」
「テトラゴン!」
マールが水と光の上級魔法を放つが、スクエアスが闇の初級魔法で打ち消す。
次にスクエアスが放たれる魔法にマールは気付き、急いで呪文を詠唱する。
「ダークネスブリック!!」
「パステルサークル!!」
箱が現れる瞬間、マールは光の環で箱を消し去る。
「しま……」
「コスモスレクタングル!!」
だが、先程の魔法はフェイントだったようだ。
スクエアスはワープでマールに近付き、ゼロ距離で大魔法を彼女に食らわせる。
マールは物凄い勢いで地面へと叩きつけられた。
「はあっ……はあっ……ど、どうだ! 見たか!」
ばたんきゅ~したマールを見て、勝ったと思い込んだスクエアス。
だが、ティは冷静に事を指摘した。
「……気が付かなかったか、スクエアス。マールは手加減をしていた」
「ピピピピピ!」
「……」
自分が生み出したスクエアスを、マールは消したくなかった。
寂しくて作った存在を自ら消す事は、当然、マールはしたくなかった。
だから、マールはわざと手を抜いてやったのだ。
「なんでだよ、マール」
「話を聞いてもらうため……スクエアス、落ち着いてよぉく聞いてください」
ばたんきゅ~から復活したマールは、真剣な表情でスクエアスの前に立った。
「ここで皆さんを力ずくで消したって、何一つなかった事になんかできません。
世界は変化していく。
あなたの考える『正しい』世界なんか、どこにもあり得ないんですよぉ!」
マールは創造主として、正しさにこだわるスクエアスを止めようとしていた。
世界は常に変わるのだから、スクエアスが抱く正しさなどありはしないと。
「あり得ない……?」
「はい。スクエアスが目指す世界はどこにもありません」
「そんなはずは……」
「私はあなたのしている事、怖がって否定するんじゃなく、
もっと、ちゃんと考えを伝えればよかったんですね……」
ただ力ずくで止めるのではなく、子供のあやし方も学ぶ必要があったと反省するマール。
すると、スクエアスは頭を抱えて混乱した。
「マール……それじゃあ、何だったんだ。世界の『正しい』ってどこにあるんだ。
あの時、君が俺に教えた事は何だったんだ!」
「納得してはもらえないかもしれませんが、今の私なりのメッセージを伝えます。
行きますよぉ、スクエアス」
「えっ」
「楽しくて正しい勝負です!」
マールはスクエアスに、今度こそ楽しさと正しさを教え込むために、彼に再戦を挑んだ。
「ラウンドダンス!」
「テトラゴン!」
先程と打って変わって、今度はマールがスクエアスを押していた。
スクエアスは強大な力を持っていたが、
マールのスクエアスを止めたいという気持ちがスクエアスの力を上回っていた。
「凄い……あれが、マールの力なの?」
「ぐーぐー?」
アルル達は二人の戦いを見守っている。
スクエアスは宙に浮いて、バリアを張った。
このバリアはどんな上級魔法も防ぐものだが……。
「アニュラス!」
「っ!?」
初級魔法には効果がなかったようだ。
バリアが緩み、その隙にマールは呪文を詠唱、強力な攻撃魔法でバリアは崩れ去る。
「私が頑張らなきゃ……私が、スクエアスを、助けなきゃ……!」
マールはスクエアスの攻撃をかわしながら、スクエアスに攻撃を仕掛けようとしている。
強力な魔法を使わせる暇など、与えるわけにはいかなかった。
「パステルサークル!!」
光の環がスクエアスを捕らえる。
今のうちに、スクエアスをばたんきゅ~させるとマールは決断し、呪文を唱える。
「ヘブンリースフィア!!」
「あああああああっ!? な……何故だ……マー……ル……」
マール最大の魔法がスクエアスに炸裂し、スクエアスは、ばたんきゅ~した。
「分かりましたか、スクエアス?」
「何を……」
「お互い正しいルールで、楽しく勝負!
私が伝えたかったのは、守ってほしかったのは、それだけ!」
それが、マールがスクエアスに教えたかった事だった。
楽しいも正しいも互いに排除するものではなく、共存し合ってこその勝負である。
どちらかに偏る事は、マールは望んでいないのだ。
「スクエアス! まだ、私達を消したいですか?」
「もし、マールと話して気持ちが変わったのなら、おれ達は嬉しいよ」
「あんたの望みなんてエスには分からないけど、世界を元通りにしてくれるわよね」
もう少しでスクエアスが改心してくれると思うと、りんご、ティ、エスは思わず安心する。
スクエアスは彼らの言葉に、困惑していた。
「なんで……」
「え?」
「何故、まだ俺に話しかけるんだ。お前達を消そうとしたのに、酷い事を言ったのに」
「分かります……びっくりですよね。でも、それがこの人達なんです。一部を除いてですけどね」
自分は許されない罪を犯したのに、許してくれるなんて、と驚くスクエアス。
そんな彼らの気持ちに、スクエアスは応えないわけにはいかなかった。
ちなみに一部というのはアリアやレイリーなどだ。
「みんな、迷惑をかけてすまない。ごめんなさい」
スクエアスは、とびきり素直に、皆に謝罪した。
彼は良い意味でも悪い意味でも、子供だったのだ。
やっぱり、スクエアスって子供なんですね、と私は思いました。
次回はスクエアスと和解しますが……。