ぷよぷよテトリス2 ~ シュルッツの冒険者達   作:アヤ・ノア

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ぷよクエも9年続けたものですね。
そんなわけでぷよテト2二次創作小説はこれで最終回です。
最後まで読んでくださってありがとうございました。


エピローグ

 アルル達は、ついにスクエアスから闇の力を払う事に成功した。

 ラフィーナの睡眠、エスの石化、アリアの魅了はとっくに解除されていた。

 

よっしゃーーーい!!

ボク達の勝ちだね……!

ぐっぐぐぐー!!

「み、皆さん、凄いですぅ……凄すぎます!!」

 勝利宣言をするりんごとアルルを褒めるマール。

 人間が神に近しい存在に勝てるなんて、という驚きの声もあった。

「これもまた……人の可能性というものです」

「人の可能性……ですか。よぉく分かりました」

 アリアは杖をしまって、マールにそう言った。

 人は神には遠く及ばないが、可能性は神を上回るとされている。

 人との間に生まれた異世界の神が、無限に成長を続けるように。

 

「スクエアス!! 大丈夫ですか!」

 りんごは倒れているスクエアスに駆け寄る。

「……ああ」

 スクエアスは怪我を負っていなかった。

 アルル達は本当に、スクエアスにとりついた闇の力のみを払えたのだ。

「みんな、ありがとう……」

 スクエアスはりんごの顔を見えて笑みを浮かべる。

 すると、スクエアスは気を失った。

「ス、スクエアス!?」

「大丈夫ですよぉ。ただ、力を使い果たして寝ているだけ……」

 時空の意志はそんなにやわじゃありませんよ、とマールは付け足した。

 そして、マールはアルル達の前に立つ。

「スクエアスに代わって、お礼を言わせてください。皆さん、ありがとうございました!」

 世界とスクエアス、両方を救ったアルル達に対し、マールは最大限の感謝を述べた。

 勝負を見守る者、世界を見守る者として。

「よかったーぁ!」

「ええ……」

「これも私達のおかげですわ、おーっほっほっほ!」

「それほどでもないさ、うひゃひゃひゃひゃひゃ!」

「あっはっはっはっは!」

 ラフィーナとクルークが高らかに笑い、エスも珍しく大きく笑っている。

「それじゃあ、みんな、これから……」

 アミティがマールに手を伸ばした瞬間、空間が音を立てて大きく揺れ出す。

 この空間が消滅しようとする証だ。

「ああ……世界が元に戻ろうとしていますねぇ……」

「あんまりゆっくりしている時間はなさそうだよ、みんな。さあ、二つの世界は分かたれる」

「えっ!!」

 二つの世界――アルカディアと箱の世界が分かたれる。

 それは、ティやマール達との別れを示す証だ。

「なんで、なんで、なんで……」

「元々、この寝てる子が無理矢理力を集めて世界を混ぜようとしてただけだから、

 それが終われば元通りって話だよね」

 異変の元凶はスクエアスと闇の力なので、彼が戦意喪失した時、世界は元に戻る。

 それが、エコロがアミティに打ち明けた現実だ。

「そういう事だ」

「そ、そんな……早すぎるよ~~~!」

 そして、アミティを含む皆の姿は、闇の空間から消えた。

 

 アルル達はプリンプタウンに戻って来た。

 だが、アミティはまだ、別れという現実を受け入れられずにいた。

「やだやだやだ……。

 まだまだティやエスやマール、スクエアス、みんなとしたい事、たくさんあるのに!

 いっぱい、いっぱいあるのに!

 これでお別れで世界も分かれて会えなくなって、

 しかも、みんなの事、はっきり覚えていられないかもなんて、そんなのやだよ……」

 今のアミティは、スクエアスのように駄々をこねていた。

 テト号乗組員や時空の意志と別れたくないあまりに自分がスクエアスと同類となった事を、

 アミティは全く自覚していなかった。

「アミティ……」

「ぐぐぐぅ……」

「アミティさん……」

 アルルとアリアもアミティに不安を抱いていた。

 そんなにティ達と一緒にいたいのか、と。

 

「アミティ、あんた、さっきからそればっかりね」

「うーん、今日のアミティー、なんかヘン」

 そんな彼女の前に、エスとシグが現れる。

 二人はジト目でアミティを見ていた。

「エス! それに……シグ!

 だって、あたし、まだ、エスとお散歩したり、歌ったり、一緒にお弁当食べたり、

 何もしてないのに……エスは寂しくないの?」

「寂しいわよ」

「そっか……って、え? ちゃんと寂しがってくれてるの?」

 エスの返答を、アミティは意外だと思っていた。

 何故なら、エスはいつも我儘ばかり言って、おまけに毒舌なので、

 いなくなってもいい、とアミティは思っていたからだ。

「当たり前でしょ。友達になったんだから」

「エスもそんな事、言うんだなぁ」

「ぐっぐぐ!」

「あの子、悪い子じゃない、わかって、アミティー」

 エスは悪い人物ではなく、根は子供っぽくて寂しがり屋だった。

 彼女もまた、アミティ達との別れを寂しく思っていたのだ。

 エスは恥ずかしくなったのか、そっぽを向いた後、もう一度振り返る。

「ふん、どうせ細かい事なんか忘れちゃうなら、最後くらい素直になってあげるわよ」

「ううう~~~……」

「確かに、アミティさんは別れという現実を認めたくないんですよね。

 でも、出会いがあれば、別れもあるもの」

 アリアはエスの背後に立って、小声で「エスさん、お願いしますね」と言った。

 アミティを元気づけるため、エスから直接アミティに何か言ってもらってほしいのだ。

 エスは頷くと、アミティの前に立ってこう言った。

「アミティ!」

「な、何っ!?」

「笑いなさいよ」

「だって、悲し……」

「じゃあ、会わない方がよかったわけ?」

「えっ?」

「こんなお別れするくらいなら、最初からエス達に会わない方がよかった?

 あの青い髪の子も言ってたわよ。出会いがあれば、別れもあるって」

 エスはアリアの言葉をもう一度アミティに伝えた。

 たとえ記憶が消えたとしても、

 また会いたいという気持ちがあれば、ティ達にもう一度会う事ができる。

 もし仮に、何かが暴走したとしても、その時はもう一度止めればいい、と。

「そ、そんなわけないよっ!

 みんなで冒険するのもハラハラドキドキ楽しかったし、嬉しい事も素敵な事もたくさんあった!

 あたし、エス達に会えてよかった!」

「でしょ。『別れが悲しい』じゃなく『会えてよかった』が正解よ」

「あっ! そっか……そっかぁ!」

 エスに説得されたアミティは、ようやく元気を取り戻した。

 悲しさよりも嬉しさの方が、良い記憶になる。

 それを、アミティは忘れかけていたが、エスとアリアの協力で思い出した。

「エス、ありがとう! もうもうもう大好きっ! あ、もちろん、恋人という意味じゃないよ!

 あたし、女の子なんだからね!」

「やっと笑顔になったわね。手がかかるんだから!」

 エスも満面の笑みを浮かべて、アミティに手を差し伸べた。

 そして、アミティもエスの手を握った。

「エスの言った事、ボクも大好きだな。ねっ、カーくん!」

「ぐっぐぐー!」

「そして、同じ事をキミ達にも思うよ。マール! スクエアス!」

 アルルはマールとスクエアスの名を呼ぶ。

「ありがとうございます、アルル、皆さん」

「……ありがとう」

 マールは安堵の笑みを浮かべ、スクエアスは口元に手を当てている。

「スクエアスのやり方はびっくりだったけど、キミ達がいなければ、

 みんなともキミ達とも会えなかったし……二人とたくさんした勝負、楽しかったよ!」

「ところで、これからまた、二人きりの場所に帰るのですか?」

「そうですねぇ……基本的にはそうしますがぁ、

 準備ができたら二人で色々な世界を見に行ってみようって話しています♪」

「そうなんだ!」

 マールとスクエアスは、これから様々な世界を見に行こうとしていた。

 それにはサタンとエコロ、それにエックスや他の異次元の旅人も協力するとかなんとか。

「私達、勉強不足みたいですから」

「俺はみんなに変えてもらった。

 その恩を返せる時が来たら、もしかしたらまた、姿を現すかもしれない。

 時間はかかると思う。そもそもできるかどうか、それでも……」

「できる、の間違いですわよ」

 ラフィーナはビシっとスクエアスを指差す。

 どこかの海賊団の船長が言ったように、言い切る方が絶対の自信を表すためだ。

「そうだよ、キミならできる。だから、ボクはその時を待ってるさ。

 せいぜい、ボクに追い抜かれないようにね。うひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!」

「ああ……」

 スクエアスに対しても、クルークは嫌味な態度を取っていた。

 だが、クルークの人間味のある部分に、スクエアスは惹かれていた。

 そうしているうちに、世界が光に包まれていく。

「はあ……そろそろみたいですね」

「……りんご」

「ピピピー……」

 この光が世界に満ちた時、世界は元通りになり、アルル達は日常を取り戻す。

 同時に、ティやその仲間達、マール、スクエアスとの別れも意味する。

「なんか……あっという間だったな」

「そうですね、ティ」

 実際のところ、りんご達が冒険した日数は一週間に満たなかった。

 確かに、これはあっという間の出来事だった。

 しかし、りんご達が感じた時間はそれ以上に長い。

 この冒険の思い出は、ずっと心の中に残るだろう。

 たとえ、皆が記憶を失ったとしても。

 

「……あの!」

「あ、ごめん、そっちから」

「いえ、すみません、そちらから……」

「ピピー……?」

「……大丈夫です。強い思いは世界を超えられる。

 この先、ずっと会えなくても、上手く思い出す事ができなくなっても、心が覚えててくれる」

「……りんご」

「そうですよね? ティ」

「ああ、その通りだ!」

 そう言って、りんごはティに手を伸ばした。

 ティも、同じくりんごに手を伸ばした。

「全部、全部、その通りだ……。今回の事がそれを証明している。だから、大丈夫なんだ!」

 ティとりんごの握手は、とても熱かった。

 この世界に咲いた花が、実をつけたように。

 

「ふふっ、それじゃあ」

「別れの言葉は何にする?」

「なんだか、同じ事考えてる気がします」

「おれもだ。それじゃ、いっせーのーせで言おうか」

「はい、そうしましょう!」

 りんごとティは、お互いに手を伸ばす。

 二人は、満面の笑みを浮かべていた。

 

「りんご」

「ティ」

「「きみ(君)を、忘れないよ!」」

 

 そして、世界は光に包まれた――

 

 アルカディアと箱の世界が混ざる異変が起きてから今日でちょうど、一週間が経過した。

 プリンプ各地に落ちていたぷよぷよやテトリミノは綺麗さっぱりなくなっていた。

 まるで、それらが元からなかったかのように。

 

「後始末ができなかったのが」

「残念だったね~」

「そうですね……」

 アコール先生、ルゥ先生、ローザッテはその現実に少しだけ嘆いていた。

 とはいえ、自分達も活躍はできたので、それ以上、文句は言わなかった。

 何しろ、間接的だが世界を救ったのだから。

 

 アリア、レイリー、ジルヴァは、久しぶりにシュルッツに戻って来た。

「この町は、懐かしいですね」

「ああ……」

 すっかりプリンプタウンに馴染んだ三人だが、故郷に帰りたいという気持ちも強かった。

 今はもう、シュルッツに冒険者はほとんどいない、というか冒険者はこの三人のみだった。

 魔導学校も廃校になり跡地に遊園地が建っている。

 それはそれで楽しいのだが、ぷよ勝負もしたいという気持ちもあった。

「どうするのだ、アリア」

「ここでしばらく英気を養ってから、またプリンプタウンに行きたいと思います」

「ああ……その方が、いいさ」

 今頃、アルル、ルルー、シェゾは色々と喧嘩しているだろう。

 今頃、アミティ、ラフィーナ、シグは学校で仲良くしているだろう。

 今頃、りんご、まぐろ、りすくませんぱいは実験に巻き込まれているだろう。

 アリア達はそんな事を思い出しながら、シュルッツで休息をとるのだった。

 

 そして、英気を養ったアリア達はプリンプタウン、ふれあい広場にやってきた。

 そこには、アルル、アミティ、りんごがいて、皆、ぷよ勝負の準備をしているようだ。

「皆さん、もういたんですか」

「えっへへ、やっぱり平和になったらまずはこれをしようかなー、って」

「アルルさん、結構好戦的なんですね……」

「昔は結構巻き込まれてたんだけどね~」

 ぽりぽりと頭を掻くアルル。

「あの子達……今頃、元気にしてるかな?」

「アミティ……あの子って、誰ですか?」

「え? うーん、分かんない!」

 魔導世界やプリンプ、そしてチキュウの面子は、今回の出来事に関する記憶が消えていた。

 だが、完全に忘れ去ったわけではない。

 きっと、今でも心の中で、テト号乗組員、

 それにマールやスクエアスの事を、ずっと覚えているのだろう。

 今も、この時も、そしてこれからの時も。

 

「「いっきまーす!」」

「お相手いたします!」

「私でいいのですか?」

 そして、四人のぷよぷよ勝負が始まった。

 

 二つの世界が再び繋がったのは、幼い赤子が暴れたためだった。

 そして、赤子を生み出したのは、神に等しい存在でもあった。

 この存在により起こった出来事こそ、この世界の奇跡と言えるだろう。

 

 これは、いつかの時代、どこかの世界で起きた、二度目の奇跡の物語である。

 

 ぷよぷよテトリス2 ~ シュルッツの冒険者達

 The End




二次創作を書く人はいるけど、完結できた人はほとんどいないんだな、と、
書いていく中で思ってしまいました。
やっぱり、私って、才能があるんでしょうかね?

そんなわけでハーメルンでもこんな感じで、pixivで連載していたものを書こうと思います。

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