ぷよぷよテトリス2 ~ シュルッツの冒険者達 作:アヤ・ノア
アリア、レイリー、ジルヴァ、ラグナスの四人は、
行方不明になった生徒を助けるため、ラクティ街道に向かった。
さかな王子とオトモはばたんきゅ~しているため、今なら生徒を助けられる。
速やかに、誰にも気付かれずに行動する。
まるで、魔法の指輪を破棄しに行く小人とその仲間達のようだった。
「ここを真っ直ぐ通って行けば、ミル海岸に着くはずです」
アリアと風の精霊エアの案内で、四人はラクティ街道を迷わずに進む。
舗装されているため歩きにくかったが、魔物とはほとんど出会わなかった。
「アリア、キミのおかげで生徒探しは上手くいきそうだ」
「どういたしまして、ラグナスさん。……あっ!」
アリアがラグナスに笑みを浮かべると、すぐに笑みが消えて驚いた。
「何があったのだ?」
「歌声が聞こえてきます! 耳を塞いで!」
アリアは三人に耳を塞ぐ事を指示した。
三人は困惑しながらも耳を塞いだが、自分の方までは手が回らなかった。
「あぁ、頭が、痛い……!」
結果、アリアは歌声を聞いてしまい、集中力が切れてしまう。
その歌を歌っていたのは……。
「は~ら~ほ~ろ~ひ~れ~は~れ~♪」
「ぷよっ!」
「ぷよ!」
「ぷよぷよ~!」
ナーエの森でアリア達と出会ったハーピーだった。
彼女を冒険者の魔の手から守るように、三体の凶暴化したぷよが立ち塞がっている。
「わたしを忘れないで~♪ 森であなた達と会ったでしょう~?」
「あ、そういえば……」
アリア達は生徒を助けるためにナーエの森に入った時、ハーピーと遭遇した事を思い出した。
彼女からは一旦逃げたのだが、今、再会してしまったというわけだ。
「これ以上歌わないでください、頭が痛いです」
「でも~♪ 歌うのが生きがいですから~♪ やめるわけにはいきません~♪」
「あぁぁぁ、頭が痛い……!」
ハーピーのあまりの音痴さに、アリアは限界を迎えようとしていた。
彼女の苦しんでいる姿を見たジルヴァは、弓に矢を番えてハーピーに放った。
「きゃっ!」
翼に矢が命中し、ハーピーは叫ぶ。
ジルヴァは鋭い目で彼女を睨みつけた。
「……俺の仲間を苦しめる奴は容赦しねぇぞ」
「ジ、ジルヴァ? あ、痛みが引いてきました」
「今のうちに、ハーピーとぷよを倒すぞ!」
「ああ!」
ラグナスは剣、レイリーは小剣を抜いて、凶暴化したぷよとハーピーに勝負を挑んだ。
「うわっ!」
「ひゃっ!」
ラグナスとレイリーは凶暴化したぷよの体当たりをかわす。
「何を歌おうかしら~♪」
「うぅぅっ!」
ハーピーは音痴な歌声でアリアをさらに苦しめる。
「アリアから離れろ! ライトスラッシュ!」
「アイソレーション!」
ラグナスとレイリーはぷよに突っ込み斬りつける。
「エ……エアカッター!」
「ホーリーアローレイン!」
「ぷよよよ~」
アリアは苦しみながらも風の精霊エアを召喚し、風の刃を発生させて何とかぷよを倒す。
ジルヴァは光の矢を広範囲に放ち、残ったぷよを撃退してハーピーだけにした。
「はらら~♪ ぷよぷよさんがばたんきゅ~♪ だったらこっちもばたんきゅ~させます~♪」
ハーピーは歌声でアリアを攻撃していく。
アリアの肌が青くなっていった。
「頭が……割れそう……」
このままではアリアはばたんきゅ~してしまう。
早めに決着を付けなければならない。
「ホーリーアロー!」
「やめてください~♪」
ラグナスは光の矢を放ってハーピーを撃つ。
ハーピーは歌って反撃するが、ラグナスは何とか抵抗する。
「いい加減にするのだぁ! バタフライ!!」
「やめてください~♪ ハロイトヘホニハ~……」
レイリーは舞うようにハーピーを切り刻む。
彼女の怒りは小剣の威力を増幅させ、ハーピーを一発で倒す事ができた。
大ダメージだったが、ギリギリ殺さず、何とかばたんきゅ~に留めた。
「今度はこっちの頭がガンガンします~♪」
「私の頭をガンガンさせたお返しです」
アリアはハーピーに杖を向ける。
あまりに音痴だったので、アリアはハーピーを許さないのだ。
「ちょっと待て、アリア!
確かにハーピーは音痴な歌を歌ってたけど、悪気があってやったわけじゃない!」
ハーピーにとどめを刺そうとしたアリアを、ラグナスが慌てて止める。
「そうですか?」
「それに……さっきのハーピーは、何かに操られていたらしいんだ」
「どうしてそれが分かるんですか?」
「とても微量だったが、戦ってた時のハーピーから不穏なオーラを感じ取ったからだ」
「!!」
不穏なオーラと聞いて、アリアは驚き、確信する。
これは、勝負病にかかった者のオーラだと。
「もしかして、ハーピーさんは勝負病にかかったんですか!?」
「多分な」
「うぅ~……」
アリアとラグナスがそんな話をしていると、ばたんきゅ~していたハーピーが目を覚ました。
ハーピーは空に浮かんだあと、きょろきょろと当たりを見渡し、驚く。
「きゃ~♪ 何という事でしょう~♪ あなた達がここにいるなんて~♪」
「気が付いたか、ハーピー。何があったんだ?」
「女の子達に森で無視されて~♪ とぼとぼ飛んでいたら~♪ 光の柱が降ってきました~♪
そこから先は覚えてません~♪」
ハーピーはこれまでの事情を話した。
どうやらハーピーも、さかな王子やオトモと同じ影響を受けていたようだ。
「そうか……」
「はらら~♪ なんだか気分が良くなりました~♪ またリサイタルを開きたいです~♪」
「やめてください、命に関わります」
アリアは顔を青くしながら、ハーピーに言った。
あんな歌を何度も聞けば、文字通りの事になる。
「はらら~♪ 分かりました~♪ それと~♪」
「なんだ?」
「ここから東に行けば、ミル海岸です~♪ それでは、さようなら~♪」
ハーピーは歌いながら、その場を立ち去った。
「はぁ、まったく、五月蠅かったな……。アリアの頭がガンガンしたのも無理はない」
ジルヴァがハーピーについて愚痴を吐く。
「大丈夫だったか、アリア?」
「は、はい、何とか……」
ジルヴァは頭痛に苦しむアリアを起き上がらせる。
短気なところはあるが、優しいところもあるのだ。
「み、皆さん、先に行ってください……。私、ついていきますから……」
「ああ」
アリアを信じているレイリーとジルヴァは、ミル海岸に向かっていった。
ラグナスはアリアをちらっと見た後、頷いて、二人の後を追っていった。
数分後……。
「ふぅ、やっと頭痛が治まりました……」
ようやくアリアの頭痛が引き、ミル海岸に向かう三人の後を追った。
しかし、その途中で、アリアは少女の声を聞いた。
―せっかく楽しい勝負ができると思ったのに、あなた達の邪魔が入るなんて……。
「だ、誰ですか!」
アリアは誰もいない場所に向かって叫ぶ。
だが、声は反応しない。
―でも、あなた達のおかげで、私の計画は順調に進んでますから、結果オーライです。
「計画?」
―それを話すのは、また後でにしましょう。今は、楽しく、正しく、勝負してください。
それを最後に、少女の声はぴたりとやんだ。
アリアの険しい表情が、さらに険しくなる。
「何を企んでいるのかは分かりません。でも、あなたの計画を実現させるわけにはいきません。
必ず、私達が阻止します……!」
アリアは杖を持ちながら、レイリー達を追って、ミル海岸に向かうのだった。
ぷよもきっちり伏線回収しないと見限られますよ?
次回はアルカ遺跡に突入します。